何とも言えない心境の淵に舞い降りたエリザベスと名乗る少女はイギリス人であったのはいうまでもない。ところで私は日本人のようだ。
恋愛学園ファンタジーである。
高麗山の裾野から南へと少し行くと、彼の家はあった。高麗山の
北側ということもあって陽はあまり当たらない。
赤レンガで建築された彼の家は、明治13年に建てられたそうだ。
ところで、彼の名は棟方一郎といい、どこにでもいる17歳の高
校生である。人里を離れたへんぴな場所に建てられた赤レンガの家
で母と共に暮らしている。
一郎の母は、15歳と若く、大きな瞳は純粋無垢というべきだろ
うか、あどけない。そんな年下の母は、魔女らしいのだが定かでは
なく、魔法を使っている彼女を見た者はいない。一郎でさえである。
年下の母とは、一般的に考えると血縁関係でないのでは、と、思
われるかもしれないが、一郎は、魔女らしい母のお腹で身ごもられた
本当の息子である。
一郎の母は、胎児の時代に一郎を身ごもり、なぜか、息子より後
に生まれてきた。しかも2年も遅くである。自然ではないのは勿論で
あるが、ファンタジーではよくある話である。
では、一郎の父は誰なのであろうか、いやそもそも、お腹にいる胎
児が、赤子を身ごもるというのはあり得るのであろうか。現実的には、
不可能である。が、ファンタジーなのであるし、母は魔法使いなので
あるから、可能性もなきにしもあらずである。いや、ある。
一郎の母がいうには、父とは、母の母のお腹で出会ったらしい。つ
まり、一郎の母は、母の母のお腹で父と性行為をしたのだと語るのだ。
だとすると、一郎の父も母の母の……。
簡単に説明すれば、母の母は、双子を宿したということであって、
二卵性双生児と呼ばれるケースでお腹にいた。そんな中で禁断の恋に
落ちた双子、そう、父と母は同じ血の流れる双子にも拘わらず、まし
てや胎児、結婚適齢期にも達してない上に、社会経験というべきか、
太陽さえ見たことのない二人が愛し合ったということである。そして
生まれたのが、一郎だった。
ところで、父は死産だった。母は悲しみに暮れて生まれてくるのが
馬鹿馬鹿しくなったので、一郎が生まれた2年後に嫌々ながらも生ま
れたのだと一郎に漏らしたことがあるようだ。
さぁ、物語を語るとしよう。
太宰を超えたい。