お留守番
宅配の荷物を抱えインターホンを鳴らす。指定時間ぴったり。
ピンポーン。
数秒待つも応答がない。嘘だろ…? 2度3度とインターホンを鳴らすも応答なし。
「まじかぁ」がっくしきて、思わず大きなため息が出る。周囲を見渡すも人影はない。
まだほかの配達もたっぷり残っているし、ぐずぐずしていても仕方ない。諦めて不在票を残そうとしたところ、スピーカーからガサガサッと音が聞こえた。
「はーい」
元気な女の子の声。娘さんだろうか。マイクと距離があるのか声が遠い。ひとまず住人が在宅していてよかった。
「宅配便です。A子さんはいますか?」
「すぐそこのコンビニに私のおやつを買いに行ってます!」
嬉しそうな声だ。時刻は確かにおやつの時間である。ああ、なんか俺もお腹空いてきた。
「そっかぁ。お嬢ちゃんが荷物を受け取ることはできるかな?」
「ドアを開けるのはちょっと難しいです」
きっと留守番中は例え相手が知っている人でもドアを開けてはいけないと言いつけられているのだろう。物騒なことが多いこのご時世、防犯意識として当然だ。
「そうだよね、ごめんね。お嬢ちゃんしっかりしてて偉いね」
「きっともう帰ってくると思います」
どうしたものかと思案していると、バタバタと慌ただしい足音が聞こえてくる。
「すみませーん!」
声の方を振り返ると女性がコンビニ袋を手に息を切らしながら走ってきた。
「あ、A子さんですか?」
「はいそうです。時間指定にしてたのに留守にしてしまってごめんなさい」
「いえいえ。無事に荷物をお渡しできてよかったです。そういえば、家にいるのはお嬢ちゃんですか?」
「え? よく女の子ってわかりましたね。もしかしてお兄さんも好きなんですか? それならちょっと待っててください」
そう言うやいなや家に入るとすぐに、お嬢ちゃんを抱っこして出てきた。
「ほら、お兄さんにこんにちわって」
「にゃあ」
元気な鳴き声だった。




