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吸血姫は恋がしたい  作者: Morisa1380


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3/3

3.こいつらだーれだ

「きゃあああああ」

と言う誰かの叫び声で目が覚める。


「ううっ」

と唸りながら、ロザリアは起き上がる。


頭痛いなぁとロザリアは思いながら昨日、父に部屋に戻され不貞腐れて入ったベットで吸血衝動を抑えるために腕を噛んだんだったと思い出す。


いつもならば血を処理してから眠りにつくのだが、あまい匂いによって暴走状態になりかけていたロザリアはそこまで意識は回らなかった。


ロザリアが前世の記憶を取り戻したのは初めての吸血衝動は3歳の時だ。

そして、この2年間、ロザリアは周りにこの事を隠し続けていた。


吸血衝動は第一覚醒と呼ばれ早ければ早いほど能力が高いとされている。

第二覚醒では血を操ることができるようになり、第三覚醒では固有能力を得ることができる。

そして、最終覚醒を果たせば、否応なく成人と認められる。


兄の、長男の第一覚醒は10歳、ロザリアの覚醒は3歳。


ロザリアは覚醒した時に気づいたのだ、バレたらやばい、と。

吸血鬼は血筋だとか、長男だとか、直系だとか、といった正当性に興味がない、全くない。

ロザリアの父、第二代国王、彼も初代国王の長男ではなく四男だった。

ロザリアの父が王位を継いだのは、ただただ第一覚醒も第二覚醒も第三覚醒も、どれもが早く来た、と言う理由だけだった。


その話をよく耳にしていたロゼは理解した。

バレてはいけない、と。

幼い頃から、と言っても今も変わらず幼いロゼだが父の仕事をよく見ていた。

その光景を見ながらロゼは思っていたのだ。

めんどくさそー、と。

ロゼは死んでも仕事をしたくなかった。


そう、仕事が嫌なだけだった。


吸血鬼という種族は面倒ごとを避ける傾向にある。

長命種であるが故か、権力というものにあまり固執しない。


初代国王である黒の王は自らの長男が最終覚醒を果たしてすぐに王位を譲り、逃げた。

逃げたのだ。


その次に最終覚醒を果たしたのは三男だったがこれまた長男も三男に王位を譲り、逃げた。

その次は次男に王位を譲った。

そして、ロゼの父が最終覚醒を果たしてすぐに次男も四男に王位を譲った。


譲ったというよりも押し付けた、という方が合っている。

みんな、めんどくさい王位など継ぎたくないのだ。


ロザリアの父は第二代国王だ。

ロザリアの叔父にあたる兄弟たちはみな、王位についたものの王ではない。

ややこしいが、ロザリアの父が最終覚醒を果たすまでの繋ぎの王なのだ。

なので第二代国王はロゼの父ということになっているのだ。

ややこしい‥。


ロザリアは王位を継がずに逃げるつもりだったのだ。


めんどくさがりな吸血鬼が唯一と言っていいほど、重きを置いているのは“強さ”だ。

お互いに戦って最も強いのを決めればいいと思われるかもしれないが固有能力の相性によって勝敗が変わることが多々あるのでそれもできない。

ということで、手っ取り早い強さの基準が覚醒の早さだったのだ。


ロザリアは兄が漆黒を持ち、父と同じ10歳で第一覚醒を果たしていた。

なのでロザリアの王位継承権は第二位だったのだ。


ロザリアの兄が王位を譲るには漆黒を持つ誰かしらが自分よりも早く第一覚醒を果たすか、自らの子が漆黒を持って生まれることだった。


そして、ロザリアは不幸なことに兄よりも早く覚醒したことを理解した。

だからこそ隠してきたのだ。


たった今、2年間の努力は水の泡になってしまったのだが。


「ロザリア様、これは…」

と侍女が聞く。


ロザリアの頭は過去最大に稼働していた。

…が、言い訳は思いつかなかった。


「えっと、えっと」

とロザリアが困ったようにこぼす。


血はロザリアの腕にもベッタリと付着しており、傷こそないもののロザリアの腕から流れたことは火を見るよりも明らかだった。


「と、とりあえず、陛下にご報告を…」

と言い、侍女は下がってしまう


「まっ…」

ロザリアは引き止めようと顔を上げるが、すでに侍女の姿はなかった。




「ロザリア、呼び出された理由はわかるな?」


「…なんのことですか?」

とロザリアはしらを切る。


「ロザリアの専属侍女が言うには第一覚醒を果たしたと聞いたのだが」

と第二代国王ことグレゴールが言う。


「だいいちかくせい?ってなんですか?」

とロザリアは白々しく聞く。


ロザリアはあくまで噂を聞きその存在を理解したので、父や周りの者から直接その存在を教えてもらったことはない。

唯一、ロザリアが父の執務室に来るまでに導いた逃げ道だった。


吸血鬼にはあまり昼夜の概念がない。

ただ、吸血鬼の伴侶は吸血鬼でないことも多くあるため、吸血鬼は伴侶との時間を作るために夜中に会議していたりする。

それ故、ロザリアが呼び出された場に父以外の吸血鬼がいる。


ロザリアは父様だけだったら誤魔化しやすかったのに、と思った。

父だけなら、よくわかんない!っで誤魔化せたのに、と。


ロザリアの父ことグレゴールは末っ子のロザリアに甘かった。

それはそれは甘かった。

髪色や瞳の色こそ始祖譲りなものの端正な顔立ちは母親であるマリアンヌ譲りなのだ。


「なんだグレゴール、お前、覚醒について何も教えてないのか?」

と王様であるはずのロザリアの父に思いっきりタメ口&呼び捨てで呼ぶのは赤い瞳に赤い髪の、誰だこいつ。


赤の始祖の直系であろう男だ。

血の色、と言うよりも炎のような赤色の髪。


「あなただあれ?」

とロザリアは純粋に疑問をぶつける。


「ああ゛?グレゴール、お前、俺のことも教えてないのかよ、俺はイグニス。見ての通り赤の吸血鬼だ」

と親指で自らを指し示しながら言う。


ロザリアは思った。

ああ、考えるより前に体が動くタイプなんだろうなぁ、と。


実際、赤の吸血鬼は吸血鬼の中で最も力を重視する一族だ。

そして何より、頭まで筋肉で出来ている、と言われるタイプの吸血鬼であった。

言わなくてもわかるが、脳筋だった。


「いぐにすっていうのね!かみがほのおみたいね!」


「わははは!そうでだr、でしょう!」

と豪快に笑いながら言うイグニス。


タメ口だったからか青の吸血鬼に睨まれ、途中から丁寧な言葉遣いをする。

赤の吸血鬼は青の吸血鬼が苦手らしかった。


青の吸血鬼は礼儀を重んじる一族でナイトヘルムの宰相をしている。

他に適任の吸血鬼の一族がいなかっただけでもある。

…だってみんな少なからず脳筋だったからだ。


「イグニス、今はそれより、姫様の覚醒についてでしょう?」

と青の吸血鬼の、誰だろね、この人。


「だあれ?」


「ん?ああ、私は青の吸血鬼でこの国の宰相を任せられているグラキエス・アズリエルと申します、以後、お見知り置きを」


「ぐらきえす!よろしくね!」


「はい」


「あなたたちはだあれ?」

とロザリアが言うと一番最初に反応したのは銀の吸血鬼。


「セレニス・アルジェント」

と銀髪の冷たい雰囲気を纏う美女が言う。


次に口を開いたのは金の吸血鬼

「ヘリオス・アウレウスだよ、よろしく、お姫様」

と金髪の男は軽薄そうに言う。


最後に口を開いたのは紫の吸血鬼

「リリアナ・ヴァイオレアよ、よろしくねお姫様」

と色気むんむんで言う。

語彙力落ちるぐらいには美女だ。


「ふぁ」

とロザリア口から変な声が漏れる。


「ロザリア?」

とグレゴールことロザリアの父が呼ぶが返事がない、ただの屍のようだ、じゃなくて。


ロザリアの視点は一点に集中していた、だってデカいんだよ。

出るとこ出てて引っ込むとこが引っ込んでいるモデル体型だからさ、しょうがないよ。


紫の吸血鬼ことリリアナ・ヴァイオレアは妖女と言われるととてもしっくりくるくらいには色気むんむんであった。


「ロザリア?」

と再び父に声をかけられ

「はっ!」

と呼ばれていることに気がつくロザリア。


「ロザリア?大丈夫か?」


「う、うん、だいじょうぶだよ、えっと、なんだっけ?」


「覚醒についてご説明させていただきます、よろしいですね?」

と聞いてくるのはグラキエス。


「う、うん、おねがい」


「覚醒には種類があります、第一覚醒、第二覚醒、第三覚醒、最終覚醒の4つですね。まず第一覚醒というのは吸血衝動の別名で能力の高い吸血鬼であればあるほど早いとされています、そして第二覚醒ではまず、自らの血を操れるようになります、努力すれば他のものの血を扱えるようになりますが相手の方の能力が高いと難しいですね、第三覚醒では固有能力を得ることができます、それぞれ違うため基本的に秘匿することをお勧めしますが、稀に頭の足りないものがひけらかしていることがありますがあまり推奨されることではありません、そして最終覚醒というのは伴侶を得ることですね、それにより力の制限が解かれます」


「うーん?」

とロザリアはよくわからない、というような反応を返す。


ロザリアはグラキエスが入っていることを理解できていた。

わかっているとバレると大変そうだからわからないふりをしているのだ。


というか、グラキエス、普通に途中口が悪い。

怒らせちゃダメなタイプだな、とロザリアは思った。



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