6 カオリはメシア(救世主)
翌日はいつもとは違って晴れ晴れとした楽な気持ちで仕事ができた。
朝から早速隣の美都子が仕事の話を始めて今日も美しい薔薇の刺繍が目に飛び込んできたのだが、どういうわけかあまり気にせずに仕事に集中できたし、真正面の瑠璃が甘い黒髪を靡かせながら近くに来て光夫の言っている要件にいちいち頷き、その度にニットに浮き出た丸い膨らみが小刻みに揺れてもあまり気にならなかった。
これは多分昨夜のカオリちゃんのおかげだろう。圧倒的な魅力をもつカオリと楽しく話をして、ある意味美女と戯れることができて日頃の欲求不満をある程度発散できたということかもしれない。
いつもと違った視点でプロジェクトチームの美女たちを眺めてみると、なるほどこんなかわい子ちゃんたちとさほど欲望を感じずに一緒に仕事できるのは La vie en rose(バラ色の人生)と言っても過言ではないかもしれない。
せっかく男たちの羨む素晴らしい環境で働いているのだから楽しまなきゃ、と思う光夫であった。
しかしそんな気楽なことを言っていられるのはほんの2〜3日に過ぎなかった。そのくらい3人のレディたちから発せられるセクシービームは強力で、ウルトラセブンがガッツ星人の光線を浴びて動けなくなって十字架にかけられてしまったように、光夫も苦しい状態に陥りつつあった。
そんな時カフェカレンジュラのことを思い出した。またあの店に行き、カオリに会えれば、セブンが太陽エネルギーを胸の吸収板で吸収して復活するように自分もこの苦境を乗り越える力が再び得られるかもしれないと思ったのだ。
そして前回お店に行ってからちょうど一週間になった時、もう一度カフェカレンジュラへ行った。ただまたカオリに会えるのか、カオリが出勤しているのか、出勤しているとして自分の席についてくれるのかという一抹の不安を感じながらではあった。
カオリのような超美人はお客さんから人気があるに決まっている。この前他の客に指名されないでずっと光夫の相手をしてくれたのは奇跡的な偶然と言っていいだろうから。
店に入ると前回と同じようにボーイに示された席に着き、ビールを口にして待っていた。その間行き交う女の子たちやお客と話し込んでいる女の子たちを眺めていると
「いらっしゃい」
という声がして、そこには笑顔のカオリが立っていた。
「来てくれたのね。嬉しいわ。」
「私が来るって信じていた?」
「ええ、信じてたわよ。」