5 白雪姫
初めて会ったばかりなのにすぐにドリンクを注文してあげたくなってしまうくらいカオリは超美人であった。髪型はボブで耳は髪に隠れている。
芸術的なくらい美しい形の丸いふくらみとタイトミニからのぞいている美脚が眩しかった。彼のプロジェクトチームの美人四天王の3人にも負けないくらい、いやそれ以上に美しくしかも上品であった。
「白雪姫が白雪姫というお酒を飲んでいるというわけだね?」
「まあ、お世辞がお上手ね。」
「私はお世辞は言わない主義なんだ。真実しか言わないんだから。」
「ふふふ。面白いお方。」
とても話しやすくて適度に愛嬌もあってとても楽しい。彼女のどこからだろうか、芳しい花の香りが漂い、酔ってしまいそうだ。
彼女は何故か割と最初から彼の仕事、特にプロジェクトチームにただならぬ関心があるようで、色々とその様子を根掘り葉掘り聞いてきた。
彼は現在のプロジェクトチームのことを詳細にわたって話していたが、ふとあることに気がついた。他のお客さんの様子を見るとどの席でも店の女の子が10〜15分くらいすると指名しない限り別の女の子に交代するのに、光夫の席では既に30分以上経っているというのにカオリちゃんがずっといるのだ。
交代しそうになったら指名してもいいのだが、どういうわけか交代にならないので、まだ指名はしていないというのにどうしてだろうとやや訝っている。
もちろん光夫は彼女のことがとても気に入っているので彼女がい続けてくれるのは嬉しいのだが。やがて1時間が経とうとしていたので会計をしてもらった。こういった店は普通自動延長でかなり延長料金を取られてしまうのが相場なので長居は無用なのだ。
帰りがけに
「また来て欲しい?」
とわざと聞くと
「ええ、来てほしいわ。」
「ビジネスだから?」
「違うわ。本当に来てほしいの。今度いつ来てくれるの?」
と甘えたような言い方。
これは演技というかこういった店の女性スタッフさんの社交辞令と思っておこう。
「そうだね、来週の土曜日かな。」
「そんなに待てないわ。」
「仕事で忙しいんでね。でもきっと来るからね。」
確かに仕事も忙しいのだが、夜なら少々無理すれば明日にでも来られるのだが、何しろこういう店は居酒屋と違って高いから、そんなしょっちゅう来るわけにはいかないというのが本音だ。
来週来るのだって出費を考えると少々きついのだが、カオリの魅力には勝てなかったのだ。ひょっとしたらしばらく通ってしまうかもしれない。