4 セクシー光線
こうして傍目から見るとパラダイスかもしれないが実質的には毎日責め苦にあっているようなものだった。隣からは日に何度も美都子がセクシースペシウム光線を浴びせてくるし、時々正面の瑠璃が波状攻撃といった感じでエメリウム光線を、週に一回は亜紀が強烈なワイドショット(ウルトラセブン)を発してくるのだ。
こんなに毎日セクシー光線を浴び続けたら頭がおかしくなってしまうのではないか、完全に悩殺されて何か問題を起こしてしまうのではないかと思われた。
そんなある日の昼休み、光夫はいつも食堂で一人孤独に食事をするのであり、この時間は女神たちから解放される貴重な時間でもあるのだが、いつものように食事をしてから自分の机に戻ると何か名刺と同じ大きさの一枚のカードが机上にあった。
見ると「カフェ カレンジュラ」と書いてある。ははあ、隣の美都子のが間違って自分の机上に置かれたのだなと思い、美都子に聞いてみると彼女のものではないと言う。
カードの裏側を見ると簡単な地図が書いてある。ここから歩いて20分くらいのところだ。毎日辛い日々を送っているので久しぶりに気晴らしに行ってみようかなと思った。
彼は幼少時からお腹が弱く、コーヒーを飲むときまって調子が悪くなるので tea person すなわち紅茶派である。カフェといってもコーヒーだけではなく紅茶もあるだろうから今日はミルクティーを楽しむことにして、あまり期待しないで行ってみた。
店はすぐに見つかった。店の前に鮮やかなオレンジ色の可愛らしい花が咲き乱れていて「ウエルカム」と言われているような好ましい感じだ。
店に入ると白いブラウスに黒のタイトミニを穿いた若い女性があちこちに座り、それぞれお客さんと思しき男性と話をしている。
カフェにしては変わっているな、と思っているとボーイさんが来てある席に案内された。注文を聞くでも無くボーイは去ってしまい、代わりに白のブラウスに黒のタイトミニの若い女性が現れ、光夫のすぐ隣に座った。
「カオリです。よろしく」
と言って両手を軽く光夫の手に添えた。
「ここってカフェじゃないの?」
「ここはこういうカフェなの。お飲み物は何にします?」
「ミルクティーがいいな。」
「ご冗談でしょ。」
「じゃあ、ビール」
ボーイがビールを持ってきた。カオリのグラスは水だ。客が女の子を気に入ればドリンクを注文してあげるシステムらしい。もちろんドリンク代は客が払うのであり、こういう店では一杯で2000円が相場である。
「じゃ、乾杯」
「ちょっと待って。カオリちゃんのようなスーパー美女にお水で乾杯させるわけにはいかないよ。何飲む?」
「ありがとう。じゃ、白雪姫にしようかしら。」
「もちろんいいよ。ところで白雪姫ってお酒なの?」
「ウオッカの入った雪のようなほんのり白いカクテルよ。ちょっぴり甘くてこれが堪らないのよ。」