結婚
結婚式の招待状を幼馴染全員と親戚、そして職場関係の人、サニちゃんやワル先輩などに送った。
ガオ以外からはちゃんと返事が来て、全員参加してくれるとのこと。
ミソの方はお父さんは参加してくれないが、ミソママと弟は参加はしてくれる様だった。
でもガオからは返事すら来なかった。
仕事で忙しいかもしれないけれど、結婚は一生に一度しかないから、是非一時帰国して一緒に祝って欲しかったのに・・・・。
私たちの新居は仕事の関係で首都になる。
でも結婚式は礫里地区で祝ってもらう事にした。
今は仕事の合間を縫って新居探しと、それに続く家具なんかの用意に忙しい。
こういう時、母親がいないと全部自分たちで手探りでやる様になるのだが、ミソは「一緒にやれば良いよ」と言ってくれる。
忙しい仕事の隙間時間を利用して、一緒に買い物に行ってくれたりと、ミソもものすごく協力的だ。
いや、協力的と言うより、彼の持つ幸せな家庭像に合わせた家具や食器の購入に、ミソ自身が力を入れているみたい。
お茶碗一つとっても、夫婦茶碗でないと嫌だと宣う。
食卓はこたつが良いとか、もう一つ一つを挙げていたらキリがないくらい、ミソは幸せ家庭像について拘りがあるみたい。
そこへ行くと私は大雑把なので、「うん、いいよ。ミソがそれがいいなら、それにしよう」と一般的なカップルと彼氏彼女が反対になった感じで、良く店の定員などに笑われる。
結婚式の衣装も長いドレスではなく、白のカワイイワンピースと差し色にピンクの花が一輪だけ混ざった白のブーケだけを用意した。
だって結婚披露宴はウチのお父さんのお店を貸し切ってやるんだもの。
変に派手な物は店にも私にも合わないしね。
「「「おめでとう!!」」」
「お幸せに~」等、優しい声を掛けてもらいつつ、お父さんが作ってくれた美味しい料理で披露宴は着々と進む。
「わぁ、綺麗な花嫁さんねぇ」
「孫にも衣装だ。あははははっ」
ん?誰だ変な事言ってるのは!
「ブーケに一本だけ薄いピンクの花が混じっているのも素敵ねぇ」
「ミソってやっぱり男前だよねぇ」
「タマちゃんはかかあ天下になるんじゃねぇか??」
ウチの食堂の古くからの常連客も招待されていないのに、どんどん集まって来てくれて祝ってくれてるんだけれど、結構遠慮のない感想を大きな声で言うのは止めてくれぇぇ。
「タマがミソとくっつくとは思わなかったよ」
横に赤ちゃんを抱えた金髪妹を引き連れたパフに言われたが、自分の結婚式の時言われた事をそのまま返した感じだよね、パフ君や。
あん時はお腹が大きくなる前に結婚式だけでも挙げておこうと、パフママ、がんばってたものねぇ。
今やパフは瓦工場の若旦那としてデーンと構えてる。
お腹のあたりもデーンと・・・・。
奥さんが料理上手なのかな?
「建築ブームが去ったので、ウチも結構厳しいんだよ」と言いつつも、子供と奥さんと一緒に明るい家庭を築いているみたい。
私たちにとっても結婚の先輩だもんね。
色々と教えて頂戴。
「やっぱり離れるとダメなんだなぁ・・・・」なんてナルは言うけど、なんのこっちゃあ?
耳を引っ張って「何より先にあめでとうでしょう?」と言ってやると、「いたたたたた。・・・・まぁ、おめでとう」なんて渋々祝福してくれた。
「しかしこんなに早く結婚するとは思わなかったよ。ガオがソノマ国でどんな状態になってるか、オレ、怖くて聞けないよ」とも言っていた。
結婚をして、みんなに祝ってもらってとっても嬉しいのだが、この晴れの日にガオが出席してくれないのはとても悲しい。
幼い時からいつも一緒だったからね。
大学卒業と共に別の国に行ってしまったガオとは、あれから一度も会ってない。
今、どんな暮らしをしているのやら・・・・。
「いやぁ、めでたい!ウチの娘が花嫁なんて、時が経つのはなんて早いんだろう・・・・。いやぁ、めでたい」
お父さんはいろんな人が代わる代わるお祝いの酒だとお酌され、顔を赤くしながらもとても嬉しそうだ。
本当なら、そう、妹のミルが生きていたら、もう一回こういうった経験をする機会があったのだけれど、あれから再婚をしなかったお父さんには私しか子供がいない。
まぁ、ナルとガオも息子の様なものなので、息子たちの結婚式は後2回も経験できるのだけれどね。
ガオパパは私たちに「お前たちの結婚生活が幸せになる様に」と綺麗なペアのシャンパングラスをくれた。
「本来ガラスは割れやすいのでこういうお祝い事には使わないんだけれど、これは外国の綺麗なガラスが使われていて、割れてもガラスとしての価値がある。割れると言うことは破局をイメージする人が多いが、割れて破片に代わると数が増えるんだ。つまり子供がたくさん出来て幸せな家庭を築いて欲しい」
そう言って、綺麗な箱に入ったシャンパングラスを手渡してくれたのだ。
「おじさん。もしこのシャンパングラスが割れても、その綺麗な破片でタマの装飾品など、なんらかの形にしてずっと手元に置いておきますね。このシャンパングラスに笑われない様に幸せな家庭を築きます」
ミソがイケメンな顔を真剣な表情にして、いつもより更に凛々しく宣言してくれた。
とっても嬉しい。
ああ、ミソと結婚して良かった。
ミソママは「これで私の母親としての義務は果たしました。あなたたちは私たちを充てにせず、二人でしっかり家庭を築きなさい。今日で私達の関係は終わりです」とめでたい席でもお愛想の一つも言わず、とっとと帰って行った。
ミソの弟は一言も発せず、母親の後ろに隠れていただけで、ウチの店を出て行く母親の後ろをついて出て行った。
本当に彼らとは無関係のまま結婚生活を送る事になるのだろうか?
「良かったな、タマ。姑との確執は、俺たち夫婦には無いから安心しろ」とミソは嘯く。
彼の気持ちを慮ってそっと左手を握ると、ミソも強く握り返してくれる。
何があっても2人で乗り越え様と心に決めた一瞬だった。
「お前はガオと一緒になるものだとばかり思っていたよ」とはワル先輩。
「やっぱり3人の中から選んだのね」とはソニちゃん。
「これでガオはフリーね」とはハナだ。実はハナは招待していなかったんだけれど、偶々実家に戻っていたとかで、勝手に参加していた。
私の中ではソニちゃんが言う様な私が選んだと言う感じではなく、自然とくっついたと思っている。
いつも2人きりで一緒にいて、社会人となって自分たちを取り巻く環境が大きく変わった中、身近に頼れるのはお互いだけだったのだ。
だから私たちが家庭を持つのは自然の成り行きだったと思う。
そして結婚式の夜、私たち二人は今までよりもっと仲良くなった。




