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病気の時は我儘将軍

 不思議だ。

 何が不思議かと言うと、寮に居た時は目覚まし時計で起きれていたんだよ。

 何でかなぁ~?


 寮の個人スペースってロフトベッド分しかないけど、アパートの部屋は4畳半でもそれよりは広いから、目覚まし時計の音の波及が広がり過ぎて音量が下がっているとか?

 う~ん、分からん。


 毎朝、3人の誰かが起こしてくれる。

 ガオは優しく起きるまで揺すってくれて、ナルは最初話し掛けて来るけど、二度寝をすると冷凍庫の氷を一つ首のところにピトっと押し付けてくる。ミソは問答無用でお布団の上から足で思いっきり揺さぶられる。

 3人の性格が出てるよね。


 でも、冬のある日、起きて来なくちゃいけないガオがいつまで経っても起きて来なかった。

 ナルが作ってくれた朝食はガオの分だけテーブルの上に載ったまま。

 ミソもナルも講義があるから先に出ていて、私は今日は午前中講義が無いからアパートに居たんだけど、10時頃になってもガオが起きて来ないので部屋に様子を見に行った。


「ガオ、大丈夫?どうしたの?今日、午前中は臨時休講なの?」

 布団亀は動かず、返事も無い。

 ベッドに近寄ると、熱がある。

 額が可成り熱い。


 冷やしたタオルを額に載せ、兎に角汁物をと言うことで、ナルが用意してくれていたお粥の上澄みをレンゲに載せてガオの口へ。

「お医者さんへ行こう。歩ける?」と聞いても無言で首を横に振るだけ。

 ナルがミソの携帯に連絡を入れたら戻って来てくれるだろうけど、タクシーを使えば私一人でも運べるかも?

 でも、ガオはベッドから起き上がってくれない。

 しょうがないので、お医者さんに往診してもらった。

 良かった。ただの風邪だ。


「風邪ですが、こじらせると色んな病気の元になるので、しっかり養生させて下さい。薬は処方したものを最後まで全部飲んでくださいね。抗生物質が入っていますから」と言うお医者さんの言葉に従って、ガオの看病をした。

 夕方になるとミソもナルも戻って来たけど、ガオは私の服の裾を持ったまま離さない。

 風邪菌をまき散らさないためにも、今回、ガオの看病は私がすることにした。

 まぁ、ガオの病人食はナルが作ってくれたので、私がした事って額に冷たいタオルを載せて、食事をさせて、汗をかいたら着替えを渡す事だけ。

 トイレに連れて行くのも、食事を作るのもナルがしてくれたので、本当の意味での看病はナルがしたとも言える。


 ガオの看病をする私を見て、「ガオはタマにマザコンだな」なんてミソが意味不明な事を言っていたけれど、何となく言いたい事は分かる。


 私たちは全員、そうミソも含めて母親いなかったり、良い母親にめぐまれていない。

 だから母親という存在に憧れとか理想を強く持っているんだ。

 幼い頃に母親に酷い目に合わされていたガオは、もしかしたら私に母性を求めているのかもしれない。


 私だってお母さんには戻って来て欲しい。

 もちろん、妹のミルと一緒に。


 お父さんもガオパパも再婚の話はしょっちゅう入って来る。

 特にお父さんは1回しか結婚していないし、相手とは死別だった。

 離婚歴のあるガオパパより優良物件に見えるのは分かる。

 しかも食堂の持ち主でもあるもの。

 店を畳んだとしても、3軒分の住居を持っている訳で貸家とする事も出来、食うに困らない。

 

 でも2人とも、再婚、再再婚はしなかったな。

 あ、いや、これからはどうか分からないけどね。

 だから、ミル以外に私に妹はいないし、これからも妹や弟は出来ないかもしれない。


 ガオやナルは私にとって弟だし、幼馴染のミソだってそうだ。

 ミソは途中からだけど、母親が食事すら作ってくれないと言う事をパフから聞いたのは知り合って大分してからだった。

 大人たちは薄々気付いていたみたい。

 特にウチのお父さんなんかは。


 だって、子供が毎日菓子パンや即席麺ばかりを買っていたら、当然噂になる。

 その子が自分の子と友達だったら余計に気になっただろう。

 でも、ミソはちょっと不良がかるくらいには意地っ張りだ。

 今やそんな不良要素は無くなっちゃったけどね。

 

 子供の頃から哀れみを持たれる事を心底嫌がった。

 それくらいなら毎日即席麺でも良いって思うタイプだ。


 ミソも風邪をひいたら、ガオみたいに甘えてくるのかな?

 そんな風に思っていたら、ガオの風邪はナルや看病していた私ではなく、ミソに移ってしまった。


 ミソが風邪をひくと、我儘大王になる事が判明した。

「おい!タマ、スープ!あ、プリンも」

「タマ、汗かいた。着替え!」

「タマ、オレンジジュース、もっと美味しいのにしろ」

「お粥はまだ?タマ、ちゃんと冷ませよ。火傷するだろ?」

 その我儘が私限定だと言う事も判明した。

 嬉しくないけどね。


「ミソ、ちゃんと薬飲んでね」

「ふえ~い」

 でも知ってるぞ!飲んでないでしょう。

 しょうがないなぁ。

 オレンジジュースにお薬混ぜて、分からない様にして飲ませないとだね。

 もう、何歳なんだよってことだよ。


 ミソん所は、母親が母親だけに病気の時くらい甘えられる存在は必要だよね?

 だけどねぇ、あんまり我儘を言うとガオがすごい目で睨んでるよ、ミソ君。


「タァ~マ、僕もまた熱っぽい。お粥食べさせて」

 ほらぁ、ガオが拗ねちゃったよ。

 すぐにおでこコツンで熱を測ったけど、ガオ君、お熱ないよね?

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