パフの選んだ道
いつも拙作をお読み頂き、誠にありがとうございます。m(_ _)m
いよいよストックが尽きてしまいました。むむむ。
プロットはちゃんと頭の中にあるのですが、書き進めるスピードが間に合わないというもどかしさでいっぱいです。
これからは毎週日曜にアップになりますが、引き続きどうぞよろしくお願いしま~す。
作者の励みになりますので、『良いよ』とかブックマーク、★もお願いしま~す。
今年受験する奴が居る。
そうパフだ。
冬休みもパフに会いたいから4人で礫里地区に短期間だけど戻った。
お父さんもガオパパもとても喜んでくれた。
偶に帰るとご飯のおかずが豪華になるからとっても嬉しい。
これから控えている春休みも、受験前の励ましにみんなで戻る予定だ。
でも、冬休み、パフとはなんかちょっと距離が出来ている感じが拭えなく、それは私だけではなく3人ともが感じたと言うので、実際に距離が出来たんだと思う。
暁空大でなくていい。
でも、首都の大学で勉強して欲しい。
そう思って私たちはパフがどこの大学へ行きたいのかのリサーチする気満々。
でも、春休みが来る前に、パフからミソへ電話があった。
「俺は大学へ行かない。オヤジの工場を継ぐ」
「何で?」
「子供が出来た」
「え?何?」
「子供が出来た」
今度こそお笑い『大人の階段』ではなく、本当の『大人の階段』を登ったらしい。
それも件の金髪少女の妹と。
妹何歳なんだよ?
不順異性交遊の前に犯罪じゃねぇ?それ。
この話を聞いて私たち4人は、金髪少女の親がパフに固執していたんじゃないかと思った。
パフん所は礫里地区の中では比較的裕福だし、姉がいるから娘はいても、息子はパフだけだから財産を受け継ぐのはパフだものね。
毎年、夏休みか冬休みは家族で外国へ遊びに行けるくらいには裕福だから、娘を嫁にとでも思ったのか?
姉で失敗したから、今度は妹?
私たちは会う前から金髪少女の妹に良い感情を持っていなかった。
でも、春休みに会ってみると、何かポワンとした娘で、色んな策略をまわしそうには無い感じ。
私がそう言うと、3人が「お前、甘いぞ。あれは態とポワンとした印象を与えているんだ。腹黒い」とか何とか言って来た。
普通、男子は腹黒女子に気付かずに、女同士なら分かるのが定番じゃん?
なのにウチは私がどんくさいのか、金髪妹の腹黒さに私だけが気づけないみたい。
どっちにしても子供が出来たのならパフが取れる態度はもうほぼ決まっている。
パフは父親に殴られたらしいが、それで赤ちゃんがいなくなる訳ではない。
結婚はもう既定路線だろう。
私たち4人は首都に、パフは所帯持ちになって礫里地区で根を張る。
それともパフは親の援助を受けて、自分は学生、奥さんと子供は実家とかになるのかな?
パフが地元に残って働くのなら物理的に距離が離れているだけじゃなくって、生活様式そのものがとっても離れた感じになる。
これまでも連絡のやり取りは疎遠になっていたけれど、ミソは結構頻繁に連絡を取ってくれていたから、ミソ経由でパフの状況把握は出来てたんだけどね、そのミソさえ、パフが金髪妹と付き合っている事すら知らなかったんだよね。
何か、心が少しパフから離れた感じがする。
嫌いとかじゃないんだよ。
何ていうのか・・・・関心の度合いが下がった?そんな感じかなぁ。
幼馴染なのにこんな事感じて良いんだろうか?
それと同時に自分の生活に手一杯で、今までもパフの事は残りの3人程には考えていなかった事も心の中に重りの様に圧し掛かって来た。
顔を見る機会が少ないとそうなってしまうのもしょうがない部分もあるとは思う。
だから世の中では遠距離恋愛は難しいって言うんだね。
恋愛じゃなく、ただ単に友情があるだけでは更に難しいってことかな?
それにこれからはパフには金髪妹がくっついて来る事になる。
礫里地区に帰省してパフに会う時も、どうしても奥さんは気に掛ける事になるよね。
私たちに会う事で一家団欒を邪魔しているんじゃないかとか、奥さんは私たちに会うのを嫌がっているんじゃないかとか・・・・。
金髪妹が実際にはどんな人なのか私たちは知らないし、学生じゃぁなくなるパフがどんな人間になるのか、これまでと変わらないのか変わるのかも分からないし・・・・。
そんな事をグルグル頭の中で考えていたら、面倒だーーー!って感じになっちゃった。
いいや。今、あれこれ考えたってダメだ。
次、帰省する時に考えよう。
それに私だけで考えなくてもミソたちだっているんだしね。
実家に帰ると客でにぎわう食堂を手伝う。
ガオやナルが手伝う時は一時的に若い女性客も増えるが、やっぱりウチの常連客は近所の噂スズメおばさんたちやセタさんみたいなおじさん連中が多い。
厨房には見習いが2人いて、給仕も2人いる。
お父さんがちょっと店を空けていても、仕込みさえちゃんと出来て入れば店は回る。
「お父さん、ちょっとは休んだら?せっかくお店は見習いに任せてるんだから」
「いや、ナルはこれが好きだから」とせっせと鶏のナッツ炒めを作ったり、私の好きな大学芋なんかを夕飯にと作ってくれる。
本来なら店の厨房にいる時間帯なんだけれど、明日、大学の方に戻るから、今夜は私たちの好きな料理のオンパレードにするそうだ。
「ミソも呼んでやれ」
そう言うお父さんに、「今からオレが呼んでくるよ」とナルが早々に呼びに行った。
もちろん、ミソを呼ぶくらいだから白身魚の餡かけも作っている最中だ。
お父さんの料理は凄く大雑把、でも、手は抜かない。
スピードに乗って切り分けた野菜はちゃんと全部同じ大きさになっているし、最後の盛り付け前には香味野菜等ちょっとした物は必ず入れてくれる。
でも、炒める時は豪快に炒めているし、味付けの時も目分量。
なのに、いつも美味しい物が出来る。
「調味料は量って入れてもいいけど、素材が毎回違うから、素材の状態を見て入れた方が良い」と言うのが口癖だ。
その夜、夕食の時、ガオパパも仕事から戻って全員で食卓を囲む。
ナルはミソの勧誘に成功し、プラス1名だ。
私がパフの事で悩んでいるのを知っているかの様に、お父さんは「いつも料理の時、味付けはその時の素材を見て加減しているって教えたよな」と私の頭を撫でた。
「うん」
「タマ、人間も同じだよ。同じ人でも時や状況によって変わる。人は変わってなんぼだよ。それが成長って言う意味でもある。だから、その時々で調味料の量を変えるんだ。変える事そのものは悪い事じゃないんだよ」
お父さんの言いたい事はなんとなく分かった気がする。
翌日、春休みの残りは未だあるが、私達は予定通り早々に首都に戻った。
だって、私たちは私たちで一大イベントが待っているからね。
バスで国第二の都市まで出て、そこからは電車一本で首都だ。
鉄道車両はコンパートメントタイプではなく、2席ずつ向かい合わせの席が通路を挟んで両側にあるタイプ。
当然私達は4人なので、向かい合わせの席を占領している。
「しかし、パフが本物の『大人の階段』を登っていたとはね。あんたたち先越されちゃったね」
「「「お前もな!」」」と返って来るかと思ったら、「軽々に恋愛はしない方が良いぞ。特に女の子はな」とミソにしみじみ言われ、ガオもナルもそれに頷いていた。
電車を降りる頃になって、ん?あれは男子は好き勝手して良いってこと?って思い当たり、そう言ったら、3人共が笑った。




