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サークル?それともぶ・か・つ?

「漫研、独自でコミック制作もしてま~す」

「ロボット研究会、あなた好みのロボットを作ってみませんか?」

「バスケットボールに君の青春を賭けてみないか?」

「レゲエこそ音楽!楽器の演奏も教えますよ~」

「社交ダンスは優雅且つスポーツでもあります。優雅にダンスを踊ってみたいと思いませんか?」


 正門から中に入り少し歩くと直ぐにサークルやクラブの勧誘がズラッと並んでいる。

「ガオ、お前、大学でもバスケか?」

「う~ん、どんなサークルがあるのか調べてから決め様かな。そういうミソは?」

「そうだな。どんなクラブやサークルがあるか確かめてからでも遅くないな」

「ナルはやっぱりサッカー?」

 ナルはサッカーで留学の声が掛かる程の選手だったから、大学でもサッカーをやるんだろうなぁと思いつつ聞いてみると意外な事に「大学ではスポーツから離れてもいいかなって思ってるんだ」とか言い出した。

 でもね、その希望は叶わないと思うんだ。

 あ、ほら、水色の地に白抜きで『Football club 暁空大学』って描いてあるお揃いのTシャツを着たガタイの良い男子の一団がこっちに向かって来てるよ。


「君が萬髭のナル君かい?」

「え?あ、はい」

「サッカー部へ入るだろう?」

「え?いやぁ・・・・」

 すごく大人っぽい人がそう言ってもナルがうんと言わないので、その横にいた優しそうな顔をした人が「部長、絶対入ってくれますよ。アンダー20にも声が掛かりそうなのに、サッカーをやらずに何をやるんだって事ですよ」と言い出すと、別の人が「来月、緑白大学との定期戦があるから、すぐにも試合に出れるぞ」とナルの肩をバンバン叩いている。

 痛い、痛いって、見てるだけで痛いって。

 少し叩く力を緩めろぉぉぉって言いたい。

 まぁ、ナルは何にも言ってないけどね。

 でも、痛いと思うよ?


 結局ナルはサッカー部から逃れる事は出来なかった。

 本人は最初文化系クラブやサークルがうんぬんかんぬんと抵抗していたけれども、一度クラブ活動が始まると勉学より真剣にサッカーをやっている様だった。


 ミソはラグビーにするか和太鼓にするか最後まで迷ったみたいだけれど、結局は和太鼓にしたみたい。

 そしてガオは私を誘って放送研究会に入った。


 私の学部は社会学部だけれど学科はメディア社会学科なのだ。

 将来的にはアナウンサーとか放送業界で仕事が出来る様にとガオに薦められた学科だ。

 ただ、私はテレビは大好きだけれどテレビ関係の仕事に就きたいかと言われたら返事に困る。

 顔だって美人じゃないし、スタイルだって出る所が出てるわけじゃない。

 あ、ぺったんこでもないよ?

 まぁ、ありていに言えば女性としての魅力を前面に打ち出しているわけではない。


 でも、ガオは「将来、テレビ局とかで働きたくなった時に役に立つし、人脈も増えるから放送研究会に一緒に入ろう」だって。

 美術サークルでも良かったんだけれど、放送業界がどんな所か興味が無いわけじゃないから、ガオの甘言に再び頷いてしまった。


 放送研究会には放送機材の鬼の様な会長が君臨していて、彼はワルって言う名なのだが、精悍な感じの先輩で、スラっと背が高い。

 ガオと大体同じくらいだから、そこら辺の男子より頭半分は突き出ている感じ。

 二重のぱっちり目のガオと比べ、一重の切れ長の目、髪は暗い灰色なのに目が金色。

 暗がりで振り替えられるとそのキラキラする一重の目に真っ先に視線が行く感じで、女子メンバーの人気が凄い。

 そこへガオも入会したものだから、メンバーがキャイキャイお祭り状態となった。


「あんたたちも暁空大学だったのね」と13号館のハナちゃんが同じ会に所属していたのには驚いた。

 そう言うと、「何言ってるの。あんたが入学出来てる方が驚きだよ。あっ、そう言えば一応は萬髭高だったんだよね」と言われ、思いっきり頭を縦に振ると、「まぁ、一つ年下にも関わらず学年一のガオ君がずっと付きっ切りで家庭教師してくれていたんだもんね。社会学部くらいなら入学できてもおかしくないかもね~」なんて皮肉を言われた。


 幼い頃から知った顔が揃っていたので、気を抜いたのだろう。

 ハナちゃんは自分の後ろに先輩方が居るのを忘れてしまった様で、「ハナ、お前性格悪いな」とワル会長い言われ、「ひえっ」とか言いながら逃げ出した。

「タマ、お前、ハナと幼馴染なのか?」とワル会長に聞かれたので、「まぁ、幼馴染と言えない事も無いですけど、小さな頃から近所には住んでいましたね」とガオたちを念頭に答えたら、「ふっ、それを幼馴染って言うんじゃないのか?」と聞かれ、答えに詰まってしまった。


「会長、この子カッコいい男子ばっかり3人も幼馴染が居て、高校、大学とずっと一緒みたいなんですよ」と、私は全然見た事も無い先輩らしい女性が、私やガオたちの事をいっぱい知っていて面食らってしまった。


 いつもモテモテのガオやミソはそういうの慣れてるっぽいけど、私は免疫がない。

 ぞぞっぞぞ!

 背中にサブイボが出た。

 

 私がブルっと体を震わせると、「タァ~マ、大丈夫?」とガオが心配そうに顔を覗き込んだのを見て、またぞろ女子メンバーがキャァキャァ言ってたよ。そして射殺されそうな視線も私に飛んで来た。

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