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お受験地獄?

 中学3年生になった。

 もちろんパフは飛び級テストを受けたよ。


 桜散る・・・・。


 またパフ一人だけ2年生で、私達4人は3年生。

 3年生にもなると高校受験が控えているので勉強をしなくちゃいけないのだ。

 クラブ活動も夏休み前までで終わりなのだけれど、パフはどうするのだろう?


「あ~あ、また俺だけ1学年下かぁ・・・・。あれだけ勉強したのに」

 もうミソも勉強しろとか言わなくなった。

 諦めたとかじゃなく、今回が中学生最後のチャンスだっただけの事。


 でも、私見ちゃったんだよね。

 その日、みんなで団地に着いて一旦解散になった時、ナルがパフを物陰に呼んで、「みんながお前の勉強に協力したんだ。結果がダメだったとしてちゃんとお礼を言える奴になれよ」とパフの肩をポンポンと叩いていたのを。

 それに納得したのか、再度ウチで集まった時、パフはちゃんと「今回はダメだったけど、みんな勉強に付き合ってくれてありがとうな。で、お前らみんなどこの高校を受けるの?」とお礼を言いつつ他人の進路について探りを入れて来た。

 パフはまだ1年間の余裕があるから他人事の様だ。


 家から通える所にある高校は3つだ。

 進学校である萬髭(ばんし)高等学校と、普通科高校ではあるけれどそこまで高レベルではない瑞穂高等学校、そして最後が商業高校だ。

 私はあまり頭が良く無い。

 ガオと作った勉強カードのお陰で赤点を取る事はなくなったけれど、学年順位で言えば下から数えた方が早い。

 だから、私が通えるのは瑞穂か商業高校かなぁ。


 ガオとミソは余裕で萬髭高校に行けると思う。

 ナルは猛勉強したら何とか合格できるラインかな?


「タァ~マはどっちの高校にするの?」

「ん?」

「瑞穂?商業高校?」

 むむむむ。ガオめ。最初っから萬髭高校を省いて聞いてくるあたり、何か許せん!

 でも、どう足掻いても私は萬髭は無理だと思う。


「う~ん、大学には行きたいから瑞穂かなぁ・・・・」

「そう」

「えっ?タマは大学へ行く心算なの?」

 パフめぇえぇぇ。

 自分だって勉強は苦手な癖に、私は大学へ行けないって言いたいのかっ!?

 ルタ様が怒った時の演技に負けないくらい、ものすごく鋭い目つきで睨んでやると、なんか怯んでたよ。ふんっ!


「あ、いや、タマは大学へ行けないって事じゃないよ・・・・」とか言い訳を言っているけど、もう遅いよ!

「いや、だから・・・・タマは勉強が嫌いなんじゃないかなぁって思っただけさ」とまだ言うか!


「むむむ、勉強は嫌い。でも今流行りの『君に囁きたい』の世界って憧れるじゃない?」

 『君に囁きたい』って言うのは、我が国の首都にある大学が舞台になった学生の恋模様を扱ったドラマで、今滅茶苦茶人気なのだ。

 私の心の恋人、ルタ様は出演してはいないけれど、それなりに恰好良い俳優が目白押しなのだ。

 大学の寮が舞台なんだけれど、天井の高い部屋に4人の学生が入り、勉強机の上がロフトの様にベッドになっているのだ。

 で、部屋の真ん中には個別の勉強机ではなく大きなテーブルが置かれており、同室の学生が仲良くおしゃべりやおやつを食べたりでき、凄く快適な空間を模っていて、キャンパスライフではいろんな同好会やクラブ、キラキラしいイケメンのオンパレードとくれば、年頃の女の子で憧れない者は居ないと断言できる。


「ああ、あのドラマかぁ。女子はあれ好きだよなぁ」

「え?ミソはあのドラマ好きじゃないの?」

「いや、嫌いじゃないけど、あんまり興味無いかなぁ~」

「そうなんだ」

「タマ、オレは興味あるぞ。大学の寮って面白そうじゃん」

 ナルは目をキラキラさせている。

 そうか、ナルもキャンパスライフに夢を見ているのね。

 同志だね!


 今回ナルとガオとミソは同じクラスなのに、私一人が違うクラスになった。

 予鈴が鳴ると一人トボトボ3年C組の教室に入った。

 見知った顔もいくつかあるけど、いつもの通り友達が出来るわけでは無いので、空いている席にちゃっちゃと座った。


 担任はおばさん先生で、ホームルームの時、進路希望調査票の提出を求められた。

 ガオの質問はタイムリーだったね。

 私は迷わず瑞穂の名前を第一希望に書き入れたよ。

 あ~あ、高校からはみんなバラバラになるんだなぁなんて感傷に浸っていたら、何故かガオたちの担任から職員室へ呼び出された。


「失礼しま~す」

 頭を下げながら職員室に入ると、ガオたちの担任の若いお兄さん先生が私に向かっておいでおいでしている。

 職員室へ入るって滅茶苦茶緊張するよね。

 ましてや自分を呼んでいるのが別のクラスの担当ともなると、余計に緊張しちゃうよ。

 私は右足と右手を同時に前に出す感じで、ギクシャクと先生の方へ近づいて行った。


「タマさん、君はガオ君やミソ君と幼馴染なんだよね?」

「はい」

「ねぇ、なんで彼らが瑞穂を希望しているか知ってる?」

「えっ?」

「あの二人は学年でもトップなのに、萬髭じゃなく揃って瑞穂を希望しているんだよね。でも、もったいないんだよ。特にガオ君は余裕で合格できると思うのに、何で萬髭より自宅から遠い瑞穂にわざわざ通いたいのか分からないんだよ」

 ぐっと言葉に詰まってしまった。

 

 ガオが瑞穂にしたのは何となく、何となくだけどね、分かる気がするんだ。

 小さな時から私にひっつきもっつきだったからね。

 でも、ミソが瑞穂を希望する理由は全然わからないよ。

 だから先生の問に答える術がない。


「君から一度二人に理由を聞いておいてもらえないかな?受験までまだ時間があるから、希望校を変える事はまだ可能なんだよ。でも、こういうのは早い方が良いからね。なっ!頼むよ」

 私はガオたちの担任に頷いて職員を後にした。

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