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自称おばさん パート2

無理矢理、男女の関係を持つ等の表現が出てきます。

子供を授かる、授からないと言う表現も出てきます。

苦手な方はバックして下さい。

 ここのところ顔を出さなかったので安心していたのに、忘れた頃にふっと現れるナルの自称おばさん。

 ナルを引き取りたいとまたまたウチの店に登場した。


「ナルは私の妹の子なんです。今回、実の父親も判明しましたし、二重の意味でウチで引き取りたいんです」とのこと。

 このおばさん、子供が聞いていても気にしないみたいで、お店の中で声を潜める事もなく滔々と話し出した。


 ウチのお父さんはこのおばさんが苦手なので、店で麻雀をしていた近所の噂スズメの一人に頼んで、ガオパパを呼びに行ってもらった。

 瓦工場の仕事を抜けて来たガオパパは息を堰切ってウチの店に入って来た。


 それまで店のお客に対しても、そして隅っこで聞き耳を立てていた私達を気にした風もなかったのに、おばさんは今度は声を潜めて話し始めた。

 でも、声を潜めていても元々の声が高いので、しっかり耳に入ってくるんだよ。

 おばさんの話によると、おばさんの夫がつい先日、おばさんの一番下の妹に手を出そうとしたらしい。

 でも、彼女はなんとかおばさんの夫を振り切って逃げる事ができたらしいのだが、その際夫が「お前らの真ん中の妹は声を出す事もなかったのにな」と言ったらしい。

 つまりナルママは自分のお姉さんの夫に手籠めにされたらしい。

 

 その後、ナルママは妊娠した事が分かり、両親から子供の父親について色々聞かれたのだが、姉の夫だと言えなくて実家を出たらしい。

 このおばさんの言う事が正しいのなら、その時の子がナルという事になる。


 乱暴されて出来た子供だとその子の耳に入る状況で言えてしまう神経が私たちには理解できない。

 ナルは顔を真っ赤にし、2階の自分の部屋へ上がって行った。

 居たたまれなかったのだろう。

 もちろんガオや私もナルが心配なので、ナルの後を追いかけた。


 ナルママはなかなか子供が出来ない事を婚家で責められているらしいのだが、ナルが自分の家系と夫の家系の血が混ざっていると言うことで血筋的にも理想的と言ったらしい。

 本当にどういう神経をしているんだろう?

 自分の妹が乱暴されたんだよ?

 お金もなくつつましい生活をして、何の援助も受けられず、ナルを育てていた。

 何故、ナルママが生きている時に援助の手を差し伸べなかったの?

 いや、本当に差し伸べていなかったかどうかは私は知らないけどさぁ。


 しかも自分の夫が女に手が早いってどうして許せるのかな。

 もっと言うなれば、無理やりにでも女性を組み敷いたりするゲスな所は気にならないの?

 これからも似たような事を繰り返すと思うよ?そういう男は。


 おばさんの婚家はかなりのお金持ちらしく、首都に大きな家があり、お手伝いさんも何人も働いているらしい。

 おばさんとしてはナルを引き取って彼女の思う所の唯一の瑕疵である、夫の子を身籠り辛いと言う問題をナルを養子にすることで乗り切りたいと店でお父さんたちに切々と訴えていたらしい。

 翌日、店のお客さんたちがそう話しているのを聞いちゃったよ。


 ナルは自分の部屋へ入ると、ベッドにうつ伏せにダイブし、頭の上に枕を載せ、周りの音から隔離したつもりになっている。

 そこへ私はダイブしてナルの背中に横に飛び乗った。

「ぐへぇぇ」

 

 こんな羽の様に軽い乙女が背中にダイブしたというのに、カエルが車に轢かれた様な声を上げるでない!

「ちょっとナル、それ頭隠して尻隠さずって言うんだよ。受験に出るかも~」

「タマ、重い!」

「えええ!重くなんてないよ。失礼ねぇっ、グエっ」

 ガオまで私の上にダイブした。


 そうか人が上からダイブしてくると、こんな衝撃があるのかぁ。

 お、重たい・・・・。


「ナル、気にしなくていい。ナルママは優しかった。ナルといつも手をつないでいた」

 ガオが優しい声音でそう言ったら、ナルの肩がピクっと動いた。

「ナルはウチの子だからね。養子なんて行かせないよぉ。私の弟たちは誰にもあげないからねぇ」

「「弟じゃない!」」

 ナルもガオも条件反射の様に弟と言うのを否定した。


「え?だって私たち家族でしょ?」

「家族であっても弟ではない」

「????」

「オレたちの方が兄みたいなもんだ。タマは1人じゃ、何も出来ないだろう?」

「ちょっと待て!ナルはそう思ってたの?」

「だって勉強だってガオの手伝いなしには赤点確実だし、料理だってオレの方が得意。将来タマパパのお店を継ぐのはオレだしな!」

「ちょっと待ってよ。何時、ナルがウチの店を継ぐ事にしたの?お父さんはナルに店を継がせるなんて一言も言った事ないよ」

「まぁ、将来な。将来の話だよ」


「じゃあさぁ、ナルは食堂で働くとして、ガオはどんな仕事に就きたいの?」

「僕?う~ん、パソコン関係の仕事かなぁ」

「うん、夜はいつも自分の部屋でパソコンいじってるもんなぁ、お前」

「へぇ、ガオは夜はパソコンいじってたのかぁ。で、ナルは夜寝る前は何をしているの?」

「オレ?漫画読んでるよ。そういうタマは何をしているの?」

「う~ん、何か食べてたり、漫画読んだり、TV見たりかな?でも、2人が上に上がった後って、そんなに時間を置かずお風呂に入って寝てるよぉ」

「まぁ、オレもそんな感じだなぁ。ガオは結構夜遅くまでパソコンしてるけどなぁ」

「あんな高い物プレゼントしてもらったんだもん、そりゃぁ、パソコンしちゃうよね?」

「うん」


 今年のガオの誕生日プレゼントはパソコンだったのだ。

 いつもはガオパパとウチのお父さんは別々のプレゼントを用意するのだが、ガオのたっての望みで今年は2人のお父さんのプレゼントを一緒にしてもらい、パソコンを無事ゲットしたのだ。


 自称ナルのおばさんは、結局ナルを養子にする事ができないまま、また姿を見る事がなくなった。

 大人たちの間の話合いについては、ウチの店の常連客は知らないみたいで、私たちはどうしておばさんが来なくなったのか知る事はなかった。

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