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オーロラと初詣

「こら、そんなに走ったらコケるぞ」

 お父さんとガオパパは後ろの方から声を掛けて来るけど、私たちが早足で神社へ向かうスピードに合わせ様とはせず、ゆっくりと父親同士で話しながら話している。


 でも、私は神社へ行くまでの仲見世の商品やテキヤが並べている出店も気になる。

 甘栗も買いたいし、イカ焼きも。

 スーパーボールはキラキラの緑と青色の混ざったのが欲しい。

 でも、私金魚にしてもスーパーボールにしても釣り上げるのは苦手。

 こういうのはナルに頼むに限る。


 まずは手前にあるスーパーボールからだよ。

 どのボールにしようかと思ったら中に恐竜とか造花の入ったボールがある。

「ナル!あの恐竜の奴!緑のが欲しい」

「中に何か入っているのはあんまり弾まないぞ」

「いいんだって。いいから、あれ取って」

「しょうがないなぁ」

「いらっしゃい。何人分?」

 テキヤのお兄さんが他を排する様に真々中に陣取った私を見上げたけど、会話もちゃんと耳に入っていたのだろう。

 ちゃんと人数確認をしてくれた。


「いや、2人分。あ、ミソもやる?」と、後から到着したガオが指を2本出した。

「俺はいいや・・・・」

 ミソは遠慮したのか気にしてあげるべきなんだろうけど、そんなの関係ねぇ!

 私の興味はみんながどのスーパーボールを取るのかの方に向いているのだ。

「ガオはどれを取る気なの?」

「タァ~マはどれが欲しいの?」

「あの緑の恐竜をナルに頼んだんだけど」

「あ、それ、オレが取るから安心しろ」

「んとね、じゃあ、あの青と緑色の混ざったの」

「あれか?」とガオが私が言った通りのスーパーボールを指さした。

 うんうんと無言で頷くと、早速2人が釣りはじめる。

 此奴ら、運動神経がめっちゃ良いのと、ガオはそれプラス要領も良いので結構すぐ取ってくれた。

「ほれ」

「これ」と、2人共私が言った通りのスーパーボールを渡してくれた。

 

 こりゃぁ、新年から縁起がいいねぇ。

 欲しいものがじゃんじゃん手に入りそうな一年になりそうだ。

 

 途中、イカ焼きとか焼きそばの誘惑に負けそうになったけれど、食べ物は参拝が終った帰りと言うのがウチのルールだ。

 ガオたちの家もウチの家のルールに合わせてくれる。

 お父さん曰く、神様へ昨年のお礼を言う前に食べ物を口に入れちゃだめなんだって。


 イカ焼きも焼きそばも、山査子飴もどれも美味しい。

 いつもならお肉とかフルーツとか私の好きな物は私のお皿にこっそり載せてくれるガオとナルなんだけれど、出店の食べ物は串に刺してあるモノが多いので、そういう訳にも行かない。

 でも、ぐふふふふ、そういう時は奴らが持ってる串をガブリと横から齧る!これに限るのだ。

 いやぁ~、満腹満腹。

 あ、ミソが呆れた顔してこっちを見ている。

 あれれ?ミソの串は触ってないのに。

 食い意地が張ってるって?当たり前じゃん!

 こういうのは姉の特権なんだよ。

 下の者、つまり弟の物は私の物、私の物は私の物なんだよ。ニヤリ。


 おみくじを引いた。

 私は実はおみくじマニアで、普段から神社の前を通るとおみくじを買っちゃうんだよね。

 だから1年に4回くらいは軽くおみくじを買う。

 だけど初詣のおみくじが本当のおみくじと思っているから、広げて中を見る時にう~んと時間を掛ける。

 だって大吉が良いからいっぱい念を送っておかないとね。


 おおお!大吉。

 ガオのは?あ、中吉だ。

 ん?ナルも中吉。

「ミソのは何?」

 聞いてもミソは見せてくれずに背中に隠す。

 これは怪しい。

 3人でワイワイ言いながらミソの手からおみくじを奪うと、案の定凶だった。

「オレ、凶なんて初めて見た!」

「私も!」

 そんな事を言ってたらふてくされたミソが、「こんなの当んないよ」と負け惜しみを言っていた。

「悪いおみくじはあそこの木に括り付けると悪い気を吸ってくれるんだよ」って教えてあげたら、その時は聞いてない風を装って一緒に大鳥居を潜った。

 でも、境内を出る直前に姿を隠したので、私達3人はミソの行動のあたりを付けてさっき私が指示した木が見えるところまで戻った。

 案の定、こっそりおみくじを木に括り付けてるミソがいた。

 3人でニヤニヤ笑いながら物陰から見ちゃった。

 ミソもカワイイところがあるねぇ~。

 

 今年は受験があるから願掛けに行こうとミソとパフにも声を掛けたんだけれど、パフは冬休みに入ってすぐ今度は北のアングロサクソンの国に家族旅行へ行った。

 寒い時こそ温かい南の島へ行けば良いのに、なんでもおばさんとお姉さんがオーロラを見たいと言い張ったらしい。

 元々初詣は家で孤立しているミソを誘いたい部分が大きかったから、パフがいなくてもまぁ、それはそれでって雰囲気だ。

 だってパフの家は家族の仲が良いからね。

 パフは馬鹿姉とかお姉さんの事を悪く言う事も多いけど、シスコンではなくてもちゃんとお姉さんの事好きなんだと思うよ。


 この後、ウチでおせち料理をミソに食べさせたいんだけれど、どうやって食べさせよう?

 おせちって言えば、十中八九ミソは遠慮する。

 家族団らんなのに・・・・って。

 聞かなくても分かるんだよ。

 もう何年一緒に居ると思ってるの?

 そこで今年はお父さんにも相談したんだ。

 そしたらみんなで初詣に行く案を出してくれた。

「さぁ、みんな。初詣も終わったし、家に帰っておせちを食べよう。ミソもな」とウチの団地に到着するタイミングでお父さんが声を掛けてくれた。


 ミソが断りの言葉を発しようと口を開いたタイミングで、「もし、ミソがウチに来て食べたくないって言ったら、そこら辺で開いている食堂で食べる事になるぞ」って先手を打ってくれた。

 私たち3人は態と「「「ええええ!」」」と不満の声を上げる。

「大丈夫。ミソはちゃんとウチに来ておせち食べるよね?」と詰め寄ると、「う・うん」と何時もの太々しさが無く、ちょっとタジタジとした様子のミソ。

 ふふふ、こういうのはね、攻撃あるのみなんだよ。

 

 私はミソの左腕に腕を絡めて、「さぁ、行くよ!」と言い、反対の腕はガオの右腕み絡めた。

 両掌にはそれぞれスーパーボールを握って。

明けましておめでとうございます。

本年もどうぞよろしくお願い致します。

新しい年がみなさまにとって素敵な年になりますように。

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