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カワイイ顔と服はいつもお古、どっちがいい? 

今回は少し長いです。

文字数合わせが苦手なので、日によって長い話と短い話が混在します。

これに懲りずに拙作をよろしくお願い致します。


いいよ、★、ブックマークなどで応援して頂けたら筆者の励みになります。

よろしくお願い致します。

 ガオ一家が引っ越して来た夜、ご飯の時間になってから、2階から今までは聞いた事の無いような騒音が聞こえて来た。

 物を叩きつける音。

 多分、食器か何かだと思う。

 そして女の人のキーキー声。


 何事かと店の外に出て、音の発生源を心配そうに見る隣人たち。

 そう、この騒音はガオん家から聞こえる。


「あなたに甲斐性が無いからこんな寂れた地区に住む事になったのよ。こんな所、洋装店すら無いじゃないのっ!」

「わ、分かった。少し落ち着いてくれ」

「私は落ち着いてるわよ!」


 何故そんな喧嘩の内容を知っているかと言うと、この地域は皆喧嘩する時でも開けっ放しの窓もドアも態々閉める家もなく、各家の会話が自分の家に居ながらにして耳に入るのだ。

 どの家も盗まれて困るモノなんてないし、元々鍵をかける家なんてめったにないので、全部あけっぴろげ。

 かく言う我が家もあけっぴろげだ。


「ガシャーン!」

「ぎゃあぎゃあぎゃあ」

「ガッシャ―ン」


 お母さんがそっと私の両耳を塞いで店の中に入り、夕食の続きを食べる様に促した。

 妹のミルはまだ赤ちゃんなので店の端っこに設置されたベビーベッド擬きに寝かされていたのだが、上の階の騒音で火が付いた様に泣いている。


 お母さんは「タマちゃん、気にしないでご飯を食べてごらん」と、さっきまで母さんと二人で夕飯を食べていた店内の端っこの席に私を座らせ、ミルの方へ行き、ベッドから抱き上げ、背中を優しくポンポンと叩きながら、「チュチュチュチュチュ」と言う、意味不明の音を口から発しながら店の外へ出た。

 ミルが泣き止むまでその辺を散歩してくるのだろう。

 お父さんは店の調理場へ戻って行った。


「ガッシャ―ン!」

 今夜何枚目になるのか分からない皿が割れた音が響いた。


「すごいご近所さんが引っ越して来たもんだなぁ」

「瓦工場で働くって言ってなかったか?」

「え?そうなのかっ?ウチの製造ラインじゃない事を祈るよ」

「しっかし派手な夫婦喧嘩だな」


 お店の中のオジサン率が最高潮なこの時間帯、仕事を終えて一杯ひっかけたい人たちが店内にはいっぱいいる。

 もちろんガオパパがこれから働く事になる瓦工場の工員も少なからず飲んでいるんだよね。


 ウチの団地の外れにその工場があって、そこから一番近い飲み屋はウチだしね、偶に家族全員で夕飯も食べに来てくれたりする。


「タオさんや、こりゃぁ、商売の邪魔になったりせんのかのぉ」

 ウチの常連客の一人、セタさんがお父さんに言うのを聞いて、もしこれが毎晩なら商売の邪魔になるよね~と思いながら夕飯の肉炒めを口にする。

 セタさんはもうお爺さんと言って良いくらいの年齢で、シワシワの色黒の顔で少し腰の曲がったペンキ塗りなんだけど、独り身なので毎晩ウチで晩酌をしてくれている。


 しかし、このセタさんの言った事、的中しちゃったんだよね。

 ガオん家が引っ越して来てから、おばさんが皿を割らない日もキーキー声で叫ばない日も一日足りとて無かったんだ。

 本当に営業妨害だよ。


 さてさて、引っ越しして来た次の日の朝に話を遡ると、ガオん家に迎えに行き、幼稚園に行く時もひと悶着あったんだ。

 ガオママは専業主婦だったので、本当を言えばガオはまだ後1年は幼稚園へ行く必要は無い。

 だって鍵っ子じゃないからね。

 でも、その日の朝、ガオを呼びに行って手を引っ張ると殴られた様な痣が腕いっぱいにあったんだ。

 それは私が手をひっぱっちゃったから、袖口と手首の間が露出しちゃって、痣を見て驚いたお母さんがガオの袖をめくると、二の腕の辺りまで色んな色の痣があったんだ。


 お母さんが無言でガオママを見ると、ガオママはとっても動揺して、「私じゃないわよ。この子がどんくさくてこけたのよ」と言い訳をした。

「ソルさん、あなた・・・・」

 ウチのお母さんだけでなく私も、ガオの痣を見た時に原因はガオパパではなくガオママだと秒で思っちゃったもんね。

 それくらい毎晩の皿やモノを投げまくる彼女の印象が暴力に彩られていたと言って良いだろう。


 工場への初出勤は明日からだったガオパパがたまたまその日は家に居て、ウチのお母さんの問いかけに応えようとしないガオママに業を煮やしたんだと思う。

「ミナさん、言いたい事は分かります。この子の父親として何とか解決しようとしています。なので、昼間はこの子を幼稚園へやりたいんです。物凄く甘えた事を言っているのは自覚していますが、タマちゃんと一緒にウチの子も連れて行ってやってくれないでしょうか?」


「幼稚園なんて行く必要は無いから、家に居なさい」と横からガオママが喚いている。

 けれど、ガオパパが「いや、幼稚園には行かせる。お前も昼間はガオが側にいない方が落ち着くと思う。しばらくでいいからガオは幼稚園へ通わせる」と言い切り、今度はガオの目線までしゃがんで「ガオ、お前も分かるな。母さんが少しでも落ち着く様に幼稚園に通いなさい。そして友達をたくさん作るんだぞ」とガオの頭を撫でた。

 ガオは頷くでもなく、声を発するでもなく、でもガオパパの言う事を受け入れた様で、ウチのお母さんに近づいた。

 それを見てガオパパはほっとした顔をした。

「ミナさん、申し訳ないが、こういう事情なのでタマちゃんと一緒に幼稚園へ連れて行ってもらえないだろうか?もちろんお礼は払います」と頭を下げた。


 ウチの幼稚園は遊び場は狭いけれど、教室は6つもあり、この辺では唯一の幼稚園だ。

 ガオは私より1歳下なので、ユリ組さんだ。

 私はマリちゃんたちと一緒のウメ組さんなのだ。


 初日、ウチのお母さんは背中にミルをおぶったまま「ガオちゃん、何かあったらウチのタマの所へ行けばいいからね。帰りはおばさんが迎えに来るから先に帰っちゃだめだよ」とお弁当をガオに渡して、私たちを園の外から見送った。

 ガオのお弁当は当然の様に用意されていなかったので、ガオん家でのゴタゴタの後ウチの台所で急いで詰めたお弁当だった。


 ユリ組さんの先生がガオに挨拶をし、ガオを教室へ連れて行った。

 私は自分の教室は知っているからさっさと一人で歩いて行った。

 その日は何事もなく済み、お昼寝の後におやつを食べて、しばらくするとお母さんが迎えに来た。


 幼稚園から戻るとガオパパが食堂の方で待っていて、ガオママがガオを殴るのはヤマさんが居ない時ばかりなので、できたら二人だけにしたく無いとお父さんとお母さんに訥々と語った。

「俺が居る時に事が起これば止められるんだが、俺も仕事があって、家に居ない時間は長いので・・・・。申し訳ないのですが、今後もガオを幼稚園へ連れて行ってもらえませんか?もちろんお礼はしますので」


 ウチのお母さんはガオパパにニッコリ笑って話し始めた。

「どうせウチの子を連れて行くので、お礼なんかはいらないわ。後、幼稚園の後もガオちゃんはウチで預かるので、仕事が終ったらウチへ迎えに来てくださいな。ところで・・・・ガオちゃんはソルさんの実の子ではないのですか?あっ、すみません。踏み入った事を聞いてしまって・・・・」

「いえ、ガオはソルの実の息子なんですが、子供を産んでから腹に妊娠線が残ったと言って異性にとって魅力的でなくなったと怒っているんです」

「え?妊娠線ですか?」

「はい・・・・。ウチのは男性にどう見られるかと言うのが一番重要らしく・・・・」

「まぁ、美人さんですものねぇ」

「・・・・」

「分かりました。ガオちゃんは幼稚園後もウチで預かりますので、安心してお仕事して下さい」

 ガオパパは何度も何度もお母さんに頭を下げ、それでは足りないと思ったのかガオの頭にもその大きな掌を載せて頭を下げさせていた。


 ウチのお母さんは愛嬌はあるがガオママの様に美人ではない。

 私と同じで天然パーマなので、頭が他のおばさんたちよりちょっと大きく見える。

 私の髪が明るい茶色なのに比べ、お母さんの髪の毛は灰色だ。

 妹のミルは髪色はお母さんと同じ灰色なのに天然パーマではないので羨ましい。

 ウチのお父さんに似たんだと思う。ちぇっ。

 お父さんの髪はサラサラだけど色は私と同じ明るい茶色だ。

 お父さんは甘いハンサムさんなのだ。


 でもね、私の目の覚めるような青色の目は、お母さんの目と全く一緒なんだよ。へへへ。

 しかし長男長女は親の特徴をしっかり引き継ぐって言う言い伝えの通りなのか、親の特徴を引き継ぎ過ぎてあんまり美男美女はいない気がする。

 それに引き換えウチのミルは天然パーマじゃないし、顔はお父さん似で将来美人になると思う。

 もぉぉ~、反対だったら良かったのにっ!


 でも、それを言うと、いつもお母さんは、「でも、お洋服は上の子は新しい服を着られるけど、下の子はいつもお下がりなんだよ」って言われて意味もなく納得させられてしまう。

 ん?これって何か変!?

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