そして事件は起こった 再び
驚いた事に3学期の終わり頃、私たちの中に彼女が出来た奴が出て来た。
むむむ。
何と!パフだった。
パフは1年のカワイイ金髪少女から告白されて付き合い始めたらしい。
登下校は私たち4人と一緒だが、お弁当は彼女と2人で食べると袂を分かった!
何を大げさなと思うかもしれないが、これを袂を分かったと言わずして何と言えば良いのだろうかっ?
ガキのくせに色づきやがってっ!
しかも、しかも、奴の自己申告によると大人への階段を登ったらしい!!!
まだ中学1年なんだよ!?
不潔よ、ふ、け、つ!
ガオやナルはつるんと何でもない事の様に特に関心を寄せていなかったけれど、ミソはかなり気にしていた。
「お前、大人の階段って・・・・。手を握るとかキスをしたとかじゃないんだぞ!」
「え!?違うの?」とミソの説明にパフが絶句していた。
「全然違う。お前はどっちだ?」
「え?キス・・・・」
「ふう~ん」
ミソとパフはナルと知り合う前から2人で仲良く遊んでいたので、付き合いの歴史が我々よりも長い事もあるし、パフは家がある程度の小金持ちと言う事は知られているので、その金髪少女がパフを好きではなく、パフの家のお金に目を付けたのではないかと心配していた様だった。
翻って私は、ただただ何か面白く無い!
本当にただそれだけだったけれど、面白くないものは面白く無い!
パフにはパフの魅力があるんだろうし?蓼食う虫も好き好きだからパフを好きになる娘もいるでしょう。
でもキスは不潔よ、ふ、け、つ!
それに毎日一緒にお弁当を食べていたのに、パフだけが離れて行った。
本来ならその金髪少女を私たちのグループの所へ連れて来て、一緒に食べたらいいじゃん?
何で離れるの?
「え?だって、ガオやミソと同じテーブルで食べたら、二人の方に目が行っちゃうじゃないか。そしたら俺、振られるじゃん?嫌だよ」だって。
それを聞いたミソは心底怒って、「そんな見掛けだけでフラフラする様な女、捨ててしまえっ!」って吐き捨てる様に言っちゃったもんだから、パフの方も怒っちゃって、今冷戦状態なんだよね。
何か居心地悪いなぁ~。
しかし、例の金髪少女もパフと付き合えばガオやミソとお近づきになれると思っていたのか、私たちの昼食会に参加したいと何度もパフにお願いしているらしいのに、パフは絶対「うん」と言わなかった。
「タマさん、お客さんよ」
ウチのクラスの女子が廊下から私に話し掛けた。
いつもの4人以外私を訪ねてくる人なんて予想もつかない。
でも、4人なら勝手に教室に入って来て、私の机の所へ来るから、4人でないのは確か。
廊下へ出てみると、件の金髪少女が居た。
くりくりっとした目を長いまつ毛が縁取り、少女漫画の主人公みたいと思ってしまった。
「あのぉ、タマさん」
「はいっ」
「私、パフと付き合っているんですけど」
「ええ、知っています」
「え?そう、知っていたんだ」
「はい」
そこで金髪少女は考え込んだ感じになり自分から私を呼び出したくせに、だんまりになった。
次に何を話して良いのか考えているのなか?
休憩時間なので、早くしないと3人の内誰かが私の様子を見に来ると思ったので、「何か心配事ですか?」とこちらから水を向けてみた。
「あ、はい。お昼なんですが、何度言ってもみなさんと一緒のテーブルへ連れて行ってくれないんです」
ん?そんな事が悩みなの?
「私、学年はみなさんより1つ下ですが、是非、ご一緒させてもらえたらって思っているんです。なのに、パフは絶対同じテーブルはダメだの一点張りなんですよぉ」
「それって、パフはガオとかミソとかイケメンと一緒のテーブルだと、あなたの気持ちが揺らぐのが怖いと思っているんじゃないですかねぇ」
「ええええ?でも、私たちもう一線を越えたんですよ。なのに安心してくれないなんて。思い切って許したのに・・・・」
どしぇぇぇぇ。
学校の廊下で話す内容だろうか?
私の方がドギマギしちゃうよ。
それってキスの事?それとも別の大人の階段?
そんな事聞くに聞けないので、私の方がワタワタしちゃうよ。
そうこうする内にナルが私の様子を見に教室まで来てくれた。
「タマ、どうしたんだ?」
珍しく女子と話している私を見て、私がいじめられていると思ったのだろう、結構キツイ顔のまま金髪少女を睨み付けた。
「キャッ!」と可愛らしい声を上げた金髪少女は私たち2人に頭を下げてそそくさと1年の教室のある1階へ降りて行った。
結局、何しに来たんだろう、あの子。
「タマ、何かあったら直ぐにオレたちに言うんだぞ」と言って、ナルは自分の教室へ戻って行ったが、さっきの金髪少女がパフの彼女だとは気づかなかった様だった。
しかし、この事件はここで終わらなかった。
私たちの会話を聞いていた生徒の誰かが、先生にパフと彼女の関係をチクった様だった。
そう金髪少女が口にした「一線を越えた」ってやつを・・・・。
パフと金髪少女、それぞれの両親が学校に呼び出された。
不順異性交遊ではないかと確かめるためらしい。
「ねぇ、大丈夫かなぁ?」
美術教室でしきりに気を揉む私と違って、男子3人は全然気にもしていない様子。
「最悪、退学もあるんじゃないの?」
「タァ~マ、妊娠させたんじゃなければ学校もそこまでの強硬手段を取らないでしょう」
「に、妊娠!?」
ぶわっと顔が赤くなったのが自分でも分かる。
まさかガオの口から妊娠なんてワードが出てくるとは思わなかったよ。
私一人が心配して、頭と心の中がグルグルしてるみたい。
それでもそんな私を心配して、3人とも今日の部活はお休みしてくれて、私と一緒に美術教室で待機してくれている。
美術部の部長が日参する形で今日も美術室に来たが、私達が居るのを見て、慌てて出て行った。
どっちが主か分からない感じになってるぞ。
美術室は美術部の部員のためにあるのだもんね。
校庭側の窓から外を見ていたミソが、校舎から出て来たパフの両親を見て、「終わった様だぞ」と教えてくれた。
私たちは全速力で駐車場の方へ歩くパフたちの所へ向かって走った。
「パフぅ!どうなったの?」
4人が雁首揃えて息せき切っている所を見て、パフパパが、「お前が責任を持ってみんなに説明しなさい」と促したので、パフはご両親と別れ、私たちと徒歩で帰宅することになった。
パフは歩いているのに前を向かず、アスファルト道路を見つめつつ、ポツリポツリと話し始めてくれた。
「キスした事は怒られた」
「「「「うんうん」」」」
「キスは僕たちの年齢ではまだ早いって怒られたけれど、退学になる程ではなかったよ。でも、もう彼女とは付き合わない様にって先生に言われた。内申書にも響くぞって言われたら、彼女は親に言われて僕と付き合い始めたって。それに僕を通してガオかミソの彼女になりたかっただけで、僕とどうにかなりたい訳じゃないとも。昼食もお前らと一緒に食べさせてもらえないなら、俺に魅力は無いから別れるだとよ」
「えええええ!?」
その一言に驚いたのは私一人だった。
残りのみんなはパフ以外は知っていたみたい。なぜなら影で彼女からアプローチとかがあったらしい。
しかし、金髪少女の一線ってキスだったんだね。
本物の大人の階段でなくてよかったよ・・・・。
私たちにはまだまだ早いしね。




