勉強カードは最強です!
「最近の学校はテストはないのかい?」
ぎくり。
家族全員で食事を摂ろうとしている時にガオパパが好物のイカのセロリ炒めに目をやりながら、呑気に聞いていた。
そりゃぁ、ガオは成績が良いからテストの解答用紙もすぐにおじさんに渡せるだろうけど、私は赤点だったんだよぉぉ。
社会と理科が苦手なんだよぉぉぉ。
うぉぉぉん。
あれ?でも、ガオパパが聞いて来たって事は、ガオもテスト用紙を渡していないってこと?
一生懸命推察していたら、お父さんが台所から最後の一皿を持って来て自分の席に座った。
「鶏のナッツ炒めだよ。ナルの大好物だろう?」
ナッツ炒めをナルの前に来る様に皿を並べ替えてお父さんが座ったので、さっきの会話は聞こえていなかったのかとほっとした所へ、「で、タマ、テストの用紙はどこだい?」と不意打ち。
「お父さん、テストなんて無かったよぉ」
「嘘つけ、今日、家の店にマリちゃんところのおじさんが食べに来た時、テストの話をして行ったんだよ」
うわぁぁ。変な所に伏兵が居たよ!
結局、渋々と自分の部屋に置いた鞄から赤点が付けられたテスト用紙も含めてお父さんに渡した。
「むむむ。私は勉強をしろとは言わないけれど、赤点だけはダメだそ。赤点だけは取らない様にがんばりなさい」
「ガオ、お前のテスト用紙も後で渡しなさい」
「ヤマさん、ガオは絶対に良い点を取ってるから安心だよ。中学生になっても学年一なんだよな。タマが私に叱られない様に気を使ってヤマさんにテスト用紙を渡さなかったんだよな?」とガオの頭に手をのばし、わしゃわしゃと撫でたお父さんは、未だに目つきで『めっ!』って感じでこちらを軽く睨んで来た。
しょぼ~ん。
「・・・・父さん、後で渡すよ。タァ~マパパ、タァ~マの勉強は僕が見るから安心して」
「ありがとうな、ガオ。ただ、流石のガオでもタマに勉強させるのは至難の業じゃないかなぁ。ウチの娘は気立ては良いんだが、頭の方は私に似ちゃったからなぁ・・・・」
「タァ~マに勉強をさせるのは難しいけど、遊びにして勉強すれば大丈夫だから」
「遊び?」
「うん。カルタみたいなのを作って遊べば学べる様な道具を作るよ。で、タァ~マは絵を描くのが好きだから、作る時から一緒にやれば、描く時にも覚えるでしょ?」
「なるほど~。流石、神童」
お父さんとガオで勝手に私の勉強計画を立てられてしまった。
ぐるるるる。
ナルとガオパパはニコニコ笑いながら私たちの会話を聞いているけど、ナル、お前も来年には中学なんだよ。
私と同じ様に苦しむ事になるからなっ!
呑気な顔して鶏のナッツ炒めなんて食べちゃってさぁ。
腹が立ったから、鶏のナッツ炒めを山盛り自分の茶わんに取ってやった。
ナルも急いで皿に残っている鶏のナッツ炒めを自分の茶わんによそってる。カカカカ。
そんなこんなで次の日から私の部屋で勉強カード作りを始めた。
元々、中学に入学してからはガオと私の帰宅時間は小学生のナルたちより遅いので、一緒に遊ぶ時間がかなり減っていた。
そこへ、この勉強カード作りが入ってしまった。
ナルとは食事時には顔を合わせるけど、パフとミソとは会わない日が何日も続いた。
「なぁ、パフとミソが心配していたぞ」
今日の夕食の時に唐突にナルが私達二人が席に着くタイミングで言って来た。
恐らくたった今までパフたちと一緒に遊んでいたんだろう。
お父さんが作った牛肉の黒胡椒炒めに箸を伸ばし掛けていたのだけれど、話し掛けられてナルの方を見た。
奴はこっちが一旦箸を止めているのに、自分はバクバク肉豆腐を口に運んでいた。
なんだ、言いっぱなしかよぉ~。
「勉強カード作りは後2日間くらいかな。一緒に遊ぶならみんなで勉強カードで遊べば一緒にいられるよ」
「なるほど!じゃあ、みんなにそう言っておくよ」
ガオが何でもない様に後2日間で作り終わるって言ってたけど、本当に2日間で終わるのかなぁ?
我ながら面白いカードに仕上がっていると思うんだ。
でもカードに絵を描くのは結構大変なんだぞ!
この勉強カード、例えば歴史のカードは歴史的な出来事のワンシーンを絵で描いて、その絵のヒントが右上に文字で書いてある。
くるっとひっくり返せば年号と場所が書いてある。
別のカードには歴史的な出来事の名前が書かれている。
つまり、読み手が出来事の名前を言えば、残りの人がそれに該当する絵のカードを早い者勝ちて取る。
で、カードを取った人はそれが何年にどの国、場所で起こったか答えなければいけない。
回答が間違っていたらお手付き扱いで、読み手カードも絵の描いていあるカードも戻さなければならない。
最後に、一番多くカードを持っている人の勝ちっていう単純なゲームなんだけど、自分たちで考えて造ったので愛着があるのだ。
私たちは勉強カードが出来上がってからは毎日の様にカードで遊びまくった。
お父さんが紙の箱に入ったキャラメルを2箱提供してくれて、コインの代わりに使って、その日最後の勝負で自分たちの手元に残ったキャラメルがその日の戦利品になるので、みんな真剣に勉強カードで遊びまくった。
お父さんはいつも読み手役になるガオには菓子パンを一つ毎日渡していた。
お陰で、赤点から脱出できたのは言うまでもない。
私ってあったま良~い!




