ウチのルール
「タァ~マ、はい、イカ」
ガオがお昼のちゃんぽんから私の好きなイカを自分のお椀から私のお椀へ。
「じゃあ、オレは豚肉」
ナルも私のお椀へ。
「お前たち、そんなにタマに気を使う必要はないんだぞ。ちゃんと最初からタマのお椀にもイカも豚肉も入ってるんだから。お前たちはまだ子供なんだから、たくさん色んな物を食べて大きくならないとな」とお父さんは自分のお椀の中からイカをタオへ、豚肉をナルのお椀へ載せてやっていた。
私からすると自分の好きな物をガオやナルがくれるのは大歓迎。
「お前たちは何でタマの好きな物をタマのお皿に載せるんだ?既に皿に注いである物を他人の皿に載せるのはお行儀が悪いんだぞ」
お父さんにそう言われてガオもナルもしょぼ~んとしている。
この好きな物を貢ぐ習慣は最近ガオが始めたものだ。
その時はそれで何も咎められず済んだけれど、それ以降も何度もガオは私の好きな物を貢いでくれる。
「お前からちゃんとそんな事しなくて良いって言わないと、ガオやナルはずっとこうやってお前の好きな物を口にする事がなくなるんだぞ。それってとても悪い事だと分からないかい?」とお父さんに言われて、初めて悪い事だと思った。
でもね、ガオがこうやって私の事を考えてくれるのは嬉しいのよ。
ガオに触発されてナルもそうなっちゃったけどね。
「タオさん。この子たちのこのやり取りはこの子たちだけの愛情表現に見えるから、家の中だけなら良い事にしないか?」
「え?ヤマさん。こういう事は家でやってたら外でもうっかりやっちゃったりしないかな?」
「まぁ、そうだとしても、家族であろうとするこの子たちの努力を無下にはしたくないんだ」
「ヤマさんにそう言われると、そうだなぁって思ってしまうけど・・・・」
「うん。大人になるまでにはやめる様に大人が気を付ければ良い様に思うよ。それまでは良いと言うことにしないか?」
ガオパパのお陰で、弟たちからの貢ぎ物はこれからも貰える様だ。にひひひ。
でも、ガオは牛肉の時は貢いでくれないんだよね。
ガオの大好物だからね、牛肉。
この、食いしん坊め!
そこへ行くとナルはそういう駆け引きみたいなのはしないから、自分が本当に好きなものでもちゃんと私にくれるんだよね。
でも確かにお互いに好きな物を分け合うのは気持ちが良い。
もちろん私もガオが本当に好きな牛肉とか、ナルが好きなナッツ類とかは少しだけどちゃんと皿に載せてあげるよ。
あ、自分のお皿からじゃなくて大皿からだけどね。
こうして私たち3人の間では、相手の好物を自分の皿から相手の皿へということが当たり前になった。
その他にも私たちの間には愛情表現の表し方として色んなルールみたいなものが出来上がって来た。
私の成績が振るわない時はガオが一緒に勉強してくれる。
もちろんそう言う時はナルも一緒だし、殆どの場合パフやミソも一緒だ。
でも、ガオが教えてくれる教科やテーマは私が苦手とするモノが主体だ。
ナルやミソはそこまで勉強が苦手ではないんだけれど、パフは私と同じくらい勉強が苦手だ。
でも、ガオが教えてくれるのはパフが苦手な教科ではなく、私の苦手教科と言うのはブレた事が無い。
そこに愛情を感じてしまう。
ナルは絶対私に重たい物は持たせない。
鞄もそうだし、お父さんに急遽頼まれるお使いの時もそうだ。
もちろんガオも重たい物は持ってくれるけれど、ナルの方が少しだけ力持ちなんだよね。
だからいつも少しだけ多く私の物を持ってくれるのだ。
後、ガオパパはお酒を飲みたい時は仕事仲間ではなく、必ずウチのお父さんを誘う。
外に飲みに行ったのは見た事ないけれど、ウチのお店や居間で、父さんが用意したツマミで2人で良く飲んでいるのは知っている。
それとガオパパは生活費をウチに入れてくれているんだけれど、それって将来ナルやガオが大学まで勉強出来る様に貯めている貯金分を除いて、給料の殆どを生活費として入れてくれているみたい。
もちろんウチの食堂からの収入も生活費にしているらしいんだけれど、私の学費貯金と店のための余剰金以外はガオパパからのお金と一緒にして余った分は共同貯金にしてるんだって。
私たちの学費だけじゃなくって、お父さんやガオパパが病気になったり、年を取って働けなくなった時に使うお金になるんだって。
一時は2階の家を売り払って全員でウチの家に住むとかも考えたみたいだけれど、部屋の数が足りなくなるからね、その話は流れたらしい。
本当はどっちの家も同じ階にある方が行き来がしやすいので2階のガオん家の反対側の家とウチの家の交換も考えたらしいんだけれど、お父さんがお店をしながら家の事をするにはやっぱり今の方が楽なんだって。
噂スズメのおばさんやおばあさんがしょっちゅうお見合い話をお父さんやガオパパに持ってくるけれど、どちらも素気無く断っているんだよね。
こんな感じで2つの家族が1つの家族になっている。
噂スズメたちは特殊な家庭って言うけど、お父さんに言わせれば『特別な家庭』って事になるらしい。
そう、特別に素敵な家庭なんだよ。




