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相思草
「それってもったいないよね」
彼がタバコを吸っていると彼女がそう言ってきた。
「そう?」
「だって、お金をいっぱい払っているのにすぐに燃え尽きちゃう」
「それでも僕はいいのさ」
「自分の命を燃やしているみたい」
「そんなことないさ」
「そうかな」
「そうだよ」
彼はそう言って煙を吐き出して煙の輪を作る。
それを見て彼女は喜ぶ。
「僕は君の笑顔を見れれば長生きできるのさ」
「じゃあ私は笑ってる」
彼女は彼を見つめてニコニコしている。
彼は再び煙を吐き出す。
「私もアナタの笑顔で長生きできる」
「じゃあ僕も笑っていないとな」
彼は彼女を見つめてニコニコしている。
二人でニコニコしながら見つめている。
煙の輪が消えるのを。
タバコが燃え尽きていくのを。




