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砂時計の落ちた砂は 戻らない
「砂時計ってキレイだよね」
さらさらと落ちていく砂。
時を刻んでいく。
全ての砂が落ち終わる。
ひっくり返して再びさらさら。
「こんなにキレイなモノが正確な時間を刻んでいるんだね」
再び砂が落ち終わる。
ひっくり返して再びさらさら。
「知ってる?落ちた砂は戻らないんだよ?」
「どういうこと?落ちた砂はひっくり返せば戻るじゃない」
再び砂が落ち終わる。
ひっくり返して再びさらさら。
「確かにひっくり返せば再び砂は落ちるさ」
「ならどうして?」
再び砂が落ち終わる。
ひっくり返して再びさらさら。
「砂は落ちても同じようには積もらないのさ。何億、何兆、もっとのたくさんの粒がまったく同じに積もることはない」
「それはそうか」
再び砂が落ち終わる。
ひっくり返して再びさらさら。
「人生も砂時計と同じさ。人生という砂は戻らない。だから人生は大切なのさ」
「なるほどね」
再び砂が落ち終わる。
ひっくり返さず物入れにしまう。
「じゃあ私はこのひと時を大切にするわ」




