いってらっしゃいのキスをして
「いってらっしゃい」
彼女のその一言で彼は会社に行く。
会社で仕事をして疲れて家に帰ってくる。
「おかえりなさい」
彼女のその一言で仕事が終わった気がした。
彼女の笑顔を見れるだけで彼は十分だった。
「いってらっしゃい」
いつものように彼女のその一言で彼は会社に行く。
会社が終わり家に帰ってくる。
「おかえりなさい……」
なんだか彼女の様子がおかしいと思った。
何故かと聞いても彼女は答えてくれない。
帰ってきて彼女の笑顔を見れないと不安になる。
「いってらっしゃい……」
昨日の様子のままの彼女の一言で彼は会社に行く。
不思議に思った彼は同僚達に何故かを聞いてみた。
一人の同僚がおしえてくれた。
「なるほど」
会社が終わって家に帰った。
「おかえりなさい……」
やはり彼女はおかしいままだった。
明日教わったことを試してみよう。
「あの……」
朝、彼女がそう切り出してきた。
「お願いしてもいいですか?」
何だろうと彼は思ったが彼女の言葉を待った。
「いってらっしゃいのとき……やっぱいいです」
そう言って彼女は食器を片付けた。
「いってらっしゃい……」
やはり彼女はおかしいままだ。
同僚に教わったことをやることにした。
「っ!」
彼女は驚いたように目を開いたがすぐに閉じた。
唇を離すと不思議な顔を向けてきた。
「どうしてわかったのですか?」
同僚から教わったとは言えないのでこう答えた。
「いってらっしゃいのキスをしてって顔をしてたから」




