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そんな風に笑うとよく似てるわ あの人に。
彼は突然彼女と付き合うことになった。
彼女から告白をしたのだ。
彼はずっと片思いだった。
彼女からの告白を聞きうれしくなった。
彼は心が躍った。
これから彼女が傍にいるから。
付き合い始めて数週間。
彼は彼女に尋ねた。
「君は僕の何処を好きになってくれたんだ?」
そう聞くと彼女は天使のように笑った。
「フフッ。笑ってみて」
彼は彼女に言われたとおりに笑った。
「それよ」
彼はなんだかわからずに首を傾げた。
「そんな風に笑うと似ているのよ。事故で死んだあの人に」
彼の気持ちは複雑になった。
彼女は自分を好いてくれたわけではない。
死んだ彼の影を重ねていただけだ。
だけど自分が消えると彼女は壊れてしまう。
今の彼女はそれほど脆い。
「アナタは私の前から消えないでね?」
彼女のその言葉を守ると決めた。
彼は笑顔を彼女に向けた。




