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相容れない存在

「私、アナタのことが嫌いなの」

「だけど僕はキミが好きだ」

 数ヶ月前からこんな会話を繰り返している彼ら。

「しつこいわね。私とアナタの関係は水と油のようなものよ」

「水と油かぁ……」

 考え込む様な仕草をする彼。

「じゃ、私はこれで」

 その場から立ち去ろうと彼がいるほうとは反対に向かって足を進める。

 考え込むのをやめて前を向くと彼女が先に居ることに気づき、走って彼女に近づく。

 そして彼が彼女の肩に手をかける。

「何よっ。しつこ……っっっっ!!」

 バチーンと強烈な一撃が彼の頬に命中した。

 その一撃の原因は彼のキスだ。

 振り向きざまの彼女の唇と彼の唇が当たった。

「何すんのよっ!!」

「だって僕らは水と油の関係なんだろ?」

「それが何よっ!!」

「水と油は洗剤があれば混ざる。これは洗剤代わりさ」

「……」

 彼女はそっぽを向いて再び進みだした。

 彼も遅れずに彼女の横を歩いた。

「……」

「横を歩いても何も言わないんだね」

「……アナタのこと、好きでないけど付き合ってあげるわ」

「ホントっ!?」

「だけど洗剤の効果が消えるまでね」

 そういうと彼女はそっと手を伸ばし彼の手を掴んだ。

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