第93話 アイビス独立国首都イーグル
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僕たちは大聖女と関わりがあると予想される、元スワロー共和国のシュトラウス伯爵家について、調査を開始した。
調査二日目を迎え、現在朝食後にリビングで、アイスティーを飲みながら会議中である。
「クリスっち、今ふと思ったんすけど、トリック独立国の王宮で入手した大聖女の伝記があるのに、なんでリーゼロッテ・フォン・シュトラウスが、大聖女の名前の予想なんすか? 伝記ならフルネームで記述がありそうなもんすけどね」
カルラが首を傾げて不思議そうに僕を見ている。
「普通の伝記ならフルネームで記述があるよね。だけど、この伝記が記されたのは今から100年前くらいらしい。大聖女が亡くなってから約400年後に書かれた伝記で、その400年の間は戦争が繰り返されており、様々な文献が消失してフルネームが不明だったようなんだ」
「ほえー、そうだったんすね」
「大聖女が書いた手記以外で信頼度が高そうなのは、メーベルト家で入手した文献3冊かな。かなり古い書物で、文章もしっかりとしているからね」
それと、気になることがもう一つある。
共和国についてだ。
前世の知識では、共和国って共和制をとる国家のことだと記憶している。
共和制とは王がいない国で、王の代わりに大統領がいたようなイメージだ。
しかし大聖女の手記には、スワロー共和国の国王から依頼があったと記されている。
うーん、この異世界では、共和国の定義が違うのかもしれない。
「エル、僕のイメージする共和国って王のいない国なのだけど、スワロー共和国には国王がいたと、大聖女の手記に記載がある。どういうことなのだろうか」
「クリス君、共和国の定義って沢山あって結構適当なのよ。約500年前のスワロー共和国は、独立国の集まりに過ぎなかったの。当時は戦時中で、周辺の大国に攻められて困っていた独立国同士が、対抗するために同盟してスワロー共和国が誕生したのだわ」
「なるほど」
「それと、独立国にはそれぞれ国王がいて、数年ごとに持ち回りで共和国の国王を務めたらしいのだわ」
「ふむ、それでスワロー共和国には国王がいたのか。エル、ありがとう」
「どういたしましてなのだわ」
エルが爽やかな笑みを零す。
「お兄様、スワロー共和国のシュトラウス伯爵家は、どこかの独立国の伯爵家だった訳ですよね? その独立国が分かれば、答えに近づけると思うのですが」
リゼが真剣な表情で僕を見つめている。
今日のリゼは、麗しくサラサラとした銀髪をポニーテールにしていた。
おそらくクラウとお揃いにしたのだろう。
4歳年上のエル、クラウ、カルラを姉のように慕っており、皆にとても愛されているようだ。
服装は、バイオレットの半袖ワンピースで、スカートの丈は……ずっとドキドキさせられてばかりなので、毎回ミニと予想するようにしよう。えーと、今日は……普通に膝下10センチメートルくらいだね。
あー、この後外出すると予想しているのか。
「リゼの言う通りだね。アイビス独立国の首都イーグルへ移動して、スワロー共和国とシュトラウス伯爵家について調べてみよう」
皆が頷いたので、僕は平家を出て収納ボックスから新風力車を取り出す。
「お兄様、以前光魔法のブレスをかけたみかんの木に、実がなっています」
「おお、随分と早く成長したね。周りの木は、やっと花が咲いたところなのに」
「美味そうっすね。クリスっち、収穫して後でジュースにしてみるっすよ」
そう言ってカルラがみかんを収穫しているのだが、かなり大変そうだ。
「カルラ、風魔法を使うから少し木から離れてくれる」
「了解っす」
僕が風魔法を使うと、一瞬で収穫が終わった。
「ほえー、やっぱり魔法ってスゴイっすね。あんなに大変な作業が、あっという間に終わるんすから」
カルラが驚嘆している。
僕は集めたみかんを収納ボックスへ入れて、平家を解体した。
「それじゃあ行こうか。皆、新風力車に乗ってね」
「「「「了解!」」」」
女性陣の元気な声がハモった。
僕たちは新風力車に乗って、アイビス独立国の首都イーグルを目指し東へ進む。
1時間くらい進むと、大きな町が見えてきた。
「お兄様、あれが首都イーグルの町でしょうか?」
「そうだといいのだけど……とりあえず着陸して、検問所の門番に聞いてみようか」
僕たちは、町の検問所から少し離れた所に着陸した。
「クリスっち、降りる前に午前のおやつはどうっすか? リゼたんの光魔法で成長したみかんのジュースができたっすよ」
「お兄様、是非飲んでみたいです!」
リゼが興味津津にみかんジュースを見つめている。
「じゃあ、少し休憩してから外出しようか」
皆が、次々にカルラからコップを受け取った。
「では、乾杯!」
「「「「乾杯!」」」」
僕の音頭に皆が応える。
皆が一口飲んで、味を確かめているようだ。
「「「「「美味しいー!」」」」」
インフィニティ全員の声が揃う。
「みかんて、こんなに甘かったっけ?」
「もう少し酸っぱいイメージでしたが」
「こんなに甘くて美味しいみかんジュースは、初めてなのだわ」
「これ本当にみかんなのか!?」
「リゼたん、ちゅきちゅき大好きっすー!」
僕、リゼ、エル、クラウ、カルラの順にみかんジュースの感想を述べた。
「もしかして光魔法『ブレス』って、植物の成長を早めるだけでなく、甘味まで増すのかもしれないね」
「お兄様、後で検証してみましょう」
僕は頷くと、リゼと約束の指切りをして、残りのみかんジュースを堪能した。
飲み終わった後に、何だか力が沸いてくる気がしたのだが気のせいだろうか。
全員が飲み終わると、僕たちは新風力車から降りて町の検問所へ向かう。
門番に確認すると、間違いなくアイビス独立国の首都イーグルの町であった。
早速、冒険者カードを見せて町に入り、古書店を片っ端から見て回る。
「おお、大聖女関連の本と違って、スワロー共和国の歴史書は簡単に見つかったね」
「お兄様、500年前の地図もありますよ!」
「さすがに光魔法の魔術書は見つからないけれど、上出来なのだわ」
僕、リゼ、エルの順に意見を述べた。
その後も僕たちは、スワロー共和国の歴史書と地図関連の書籍を、できるだけ多く買い集めるのだった。




