第90話 一歩前へ
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僕たちは昨日の夕方、空から無事国境を越えて、アイビス独立国へ入国した。
昨夜はリゼのぬくもりを感じてぐっすり眠ることができ、今朝は少し早く目が覚めてしまう。
僕の左腕に抱きついているリゼの手を、優しく離してベッドから立ち上がる。
カルラは既に起きていて、おそらく朝食の準備をしているのだろう。
エルとクラウの方を見ると、いつものようにエルがクラウを抱き枕にしていた。
幸せそうな寝顔のエル、苦しそうに呻くクラウ、いつもの光景だ。
僕もエルの抱き枕になってみたいけど、Hカップを堪能して嬉しいのは一瞬と予想する。
残りは朝まで締め付けられる苦しさと、興奮して一睡も出来ない辛さだろう。
平家のキッチンに移動すると、カルラが驚いて僕を見ている。
「珍しいっすね。クリスっちが早起きなんて」
「なんか目が覚めてしまってね」
「いつもならリゼたんがクリスっちを離さないから、エルとクラウの後に起きてくるのに」
カルラがニシシとからかうように笑った。
「カルラ、ホットコーヒーをもらえるかな。砂糖なしのミルク入りで」
「了解っす! てか、クリスっちはコーヒー飲めるんすね」
「意外だった? いつもはリゼに合わせているからね」
しばらくするとカルラが、ホットコーヒーを持ってきてくれた。
「お待たせー。熱いから気をつけてくださいっす」
「ありがとう」
僕は、颯爽とコーヒーカップを口に運ぶ。
前世ではコーヒーが大好きだったのだ。
香りは同じような感じだろうか……さて、味はどうかな?
「う、苦い……」
「大丈夫っすか?」
「うん。ミルクの追加をお願い」
まだ12歳の僕には苦く感じるようだ。
それともこの世界のコーヒーが、特別苦いのかもしれないが。
そんなことをしていると、リゼとエルとクラウが起きてきたようだ。
今日のリゼは、美しい銀髪を左右お団子ヘアにしていて、動物の耳のような形でとても可愛らしい。
そしてラズベリー色の半袖ワンピースを着ており、スカートの丈は……ミニだった。
「ブホッ!」
僕は、ミルクを追加したホットコーヒーを思わず噴き出してしまう。
「お兄様、大丈夫ですか!?」
リゼが僕を心配して駆け寄ってくるが、スカートの裾がヒラヒラと揺れて、中が見えてしまいそうだ。
「だ、大丈夫。それより、そのワンピースは?」
「あー、これはレオナにもらったのですよ。私が水着をプレゼントしたら、お返しにくれました。どうですか?」
リゼが首を傾げて笑みを零した。
「滅茶苦茶可愛いよ。リゼの奇麗な足が、より一層引き立っている。でも……」
「でも?」
「外では、着てほしくないかな」
「あー、それは大丈夫です。さすがに私も恥ずかしくて、外では着れません。これは、お兄様専用です」
ハウッ! ミニワンピが僕専用というだけでもポイントが高いのに、さらにリゼが片眼を閉じて僕にウインクしている……うちの妹が超絶可愛いのだけど!
僕は、もうノックアウト寸前だ。
「分かった……それを聞いて安心したよ」
「お兄様、もしかしてドキドキしましたか?」
「うん」
僕は正直に答えた。
「やったー! エルの言う通りね。大成功だったわ」
リゼが嬉しそうにエルと両手でハイタッチしている。
最近リゼの中で、僕をドキドキさせることがマイブームのようだ。
どんどん魅力的に成長しているリゼに、僕がノックアウトされる日は、近いのかもしれない。
☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆
朝食を食べ終えると僕たちは、平家から出て近くにあった木を観察している。
僕が木を鑑定するとミカンだった。
少し離れた場所にも、同じくらいに成長したミカンの木がある。
通常なら来月あたりに実がなるらしい。
「丁度良いね。このミカンの木を使って、リゼが未収得の光魔法『ブレス』を試してみよう」
ちなみに光魔法『ブレス』は、植物の育ちが良くなる魔法である。
『ハイブレス』、『エクストラブレス』と上位の魔法ほど成長速度が速いと予想するが、どうだろうか。
「お兄様、私は何をすれば良いですか?」
「リゼは平家の近くにある方のミカンの木に、光魔法『ブレス』の呪文を唱えてもらう。少し離れた方にあるミカンの木は何もせずに放置して、成長の比較をしてみよう」
リゼがコクリと頷いたので、僕は収納ボックスから大聖女の杖を取り出して、リゼに渡した。
リゼは、エルが開いてくれている光魔法の魔術書を確認すると『ブレス』の準備に入ったようだ。
「では、行きますよー。輝き照らせ、大地に恵みを与えたまえ、ブレス!」
平家の近くにある方のミカンの木に、リゼが光魔法『ブレス』の呪文を唱えて、キメポーズをした。
すると、上空からキラキラと光の粒が舞い降りて、ミカンの木に降り注ぐ。
「リゼ、お疲れ様。とりあえず明日まで様子を見ようか。皆、エルから課題をもらって、今日は休養も兼ねて平家で静かに自習しよう」
女性陣が了承して頷いたので、僕たちは平家に戻って自習した。
☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆
あっという間に一夜が明けて、僕たちは朝食後に平家から出てミカンの木を確認する。
「お兄様、昨日光魔法のブレスをかけた方の木だけに、花が咲いています!」
平家から出ると、誰よりも先にミカンの木へ走ったリゼが、大きな声で報告すると笑みを零した。
「確かにブレスをかけていない方のミカンの木には、花が咲いていないのだわ」
「ということは、リゼがブレスを習得したのか……アタシは嬉しいぞ!」
「リゼたん、おめでとうっす!」
エル、クラウ、カルラの順に意見を述べた。
「皆、ありがとー!」
リゼが破顔して喜びを爆発させている。
「これで『ハイブレス』が大聖女専用魔法なら、この『ブレス』習得でリゼの光魔法がSSになっている可能性がある」
「お兄様、私のステータスを確認してください!」
僕は急いでリゼのステータスを表示した。
女性陣も皆、僕の手に触れている。
【リゼット・ブレイズ・ファルケ】
ファルケ帝国 第1皇女 11歳 女
知力 91/95 (90から91へ上昇)
武力 29/29
魅力 100/100
剣術 G/F
槍術 G/F
弓術 G/F
馬術 G/F
光魔法 S/SS
話術 S/S
算術 A/S
芸術 S/S
料理 D/C
「「「「「……」」」」」
残念な結果に皆が無言になる。
僕は、リゼをそっと抱きしめた。
「リゼ、これでまた一歩大聖女に近づいたね。後は『ハイブレス』の呪文を探し出そう」
「そうですね、お兄様。私頑張ります!」
リゼは落ち込んだ様子も無く、目標へ向かって進んでいけそうである。
僕たちは、光魔法『ハイブレス』の呪文を求めて、アイビス独立国を探索すると決意したのだった。




