第88話 石像
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僕たちインフィニティとレオナを乗せた新風力車が、トリック独立国首都ストークの町に到着した。
丁度昼食の時間だったので、そのまま車内で軽く食べてから町に入る。
「お兄様、どこへ向かうのですか?」
「まずは冒険者ギルドへ行って、依頼の報告を済ませよう」
僕たちは冒険者ギルドに到着すると、そのままギルド長の部屋に通される。
「お、インフィニティじゃないか。調査依頼の進捗はどうだい?」
「ロルフさん、お疲れ様です。調査は、無事に終了しました」
「ほう、早いな。さすがSランク冒険者パーティー」
「へ? 僕たちはAランクですよ?」
ギルド長のロルフさんが微笑んで僕を見ている。
「それがな、前回のスタンピードに関する依頼は、冒険者ギルド中央本部で検証された結果、SSランク依頼に相当すると認められた。そしてそれを討伐した功績によりインフィニティは、Sランク冒険者パーティーに昇格が決まったんだ」
「やったのじゃ、クリス! おめでとうなのじゃ!」
レオナが満面の笑みで僕を見ている。
「ロルフよ、この世界にSランク冒険者パーティーは、いくつあるのじゃ?」
「レオナ殿下、インフィニティを含めて五つです」
そんなに少ないのか!
「ん? どうしたクリス、浮かない顔をしているが」
「いや、本当に僕たちで良いのかなって」
「良いに決まってるだろ。次にSSランク依頼が発生したときに、インフィニティがAランクだと依頼が受けられないだろう?」
「あー、たしかにSランク以上の冒険者パーティーでないと、SSランク依頼は受けられないですね」
「だろ? そういうことさ」
兎にも角にも僕たちインフィニティは、世界で五つ目のSランク冒険者パーティーに昇格した。
まあ、これで僕たちは、どんな依頼も受けることができるわけで、素直に喜ばしいことだと思う。
「おっと、調査依頼の話が途中だったな。で、何が見つかった?」
「デス砂漠の中央付近で巨大ミーアキャットを発見しました」
「何だと! 超レア魔物じゃねえか。デス砂漠でここ20年は、発見されていないはずだ」
ギルド長のロルフさんが、目を見開いて興奮している。
「早く討伐しないと、またスタンピードが発生するかもしれない。インフィニティだけで無理なら、至急増援を募集するがどうする?」
焦っているのか、ロルフさんが早口で聞いてきた。
「発見してすぐに討伐したので、大丈夫ですよ」
「マジか!? 助かるぜ。スタンピードから色々あって、まともに休みがとれてなくてな。インフィニティのお陰で、ゆっくり休暇が取れそうだ」
ロルフさんから笑みが零れる。
「さて、討伐の証明に何か持ち帰ってきたか?」
「はい、抜かりなく」
「よし、早速見せてくれ」
休暇のめどが立って、上機嫌なロルフさんが笑顔で僕を見ている。
「ここで出すとギルド長の部屋が壊れますけど、大丈夫ですか?」
「へ? クリスは何を持ち帰って来たんだ?」
「倒した巨大ミーアキャットを、そのまま収納ボックスに入れてあります」
「お前、収納ボックスを持っているのか! 待った待った、絶対にここで出すなよ。俺と一緒に解体場へ来てくれ」
慌てて席を立ったロルフさんの後を皆でついて行くと、ギルドの建物の裏手に大きな倉庫みたいな建物があった。
ロルフさんに続いて僕たちも中に入ると、天井が高さ5メートルくらいで、広さがバスケットボールのコート2面分くらいある。
前世の少し天井の低い体育館といった感じだ。
「よし、いいぞ。収納ボックスから出してくれ」
ロルフさんの許可が出たので、僕は収納ボックスから巨大ミーアキャットの死骸を取り出す。
「うお! でけえな。巨大サソリの倍くらいあるじゃねえか」
僕はロルフさんに、巨大ミーアキャットが巨大サソリを捕食していたときの状況を話した。
「なるほどな、巨大サソリの猛毒が効かないのか。そして殻ごと食われちまうとは、そりゃあスタンピードが起こるわけだ」
ロルフさんが珍しそうに巨大ミーアキャットの死骸を、様々な角度から観察している。
「クリス、ギルドで買取もできるがどうする? でも、歯と爪だけになるけどな。肉は美味とは言えないようだし」
「うーん」
「迷うようなら売らずに持っておくのもアリだと思うぞ。珍しい素材だから高値になるかもしれないし、もしかしたら自分で武器を作るときの素材になるかもしれない」
「ロルフさん、教えてくれてありがとうございます。とりあえず、売らずにしまっておきます。国王陛下にも証拠として見せたいですし」
こうして僕たちは、調査依頼の完了報告書と巨大ミーアキャットの討伐報告書をギルドに提出して、合わせて金貨200枚の報酬を得た。
次に僕たちは、冒険者ギルドを出て王城へ向かう。
「クリス、途中にある教会へ寄っても良いかの?」
「別に構わないけど、どうしたの?」
「妾の火魔法がSになったことを、父上に報告したいのじゃ。神官に鑑定してもらうと、結果を紙に写して教会の証明印を押してくれるのじゃ」
「分かった。でも、僕の能力については内緒だよ。デス砂漠で火魔法の特訓をして帰ってきたら、たまたま火魔法がSに上昇したって感じでよろしくね」
「勿論なのじゃ!」
レオナが無邪気な笑顔を僕に向けた。
少し歩くと教会の前に到着する。
「クリスたちは、どうするのじゃ?」
「せっかくだから待っている間、教会の中を見学しておくよ」
「了解なのじゃ。鑑定が終わったら妾がクリスのところまで行くゆえ、それまで自由に見学して欲しいのじゃ」
そう言い残してレオナは、教会の奥へ歩いて行った。
「お兄様、私教会に入るの初めてです!」
「リゼも? 僕もだよ」
お互いに6歳と7歳の頃からずっと、帝城にある迎賓館の旧館に住んでいて、5年以上一度も外出したことがなかったのだ。
「お兄様、見てください。女神様の石像がありますよ」
「どれどれ……ふお!」
「どうしたのですか!?」
リゼが驚いて、心配そうに僕を見ている。
だって、女神様の石像がパラスそっくりなんだもの。
ツインテールの美少女が、手を組み目を閉じて祈っている。
たしかこの世界の教会には、どこも女神パラスの石像が置かれていると聞いたことがあるけど、実際に見ると驚きだ。
あのマッドサイエンティストな女神は、元気にしているだろうか?
こうしてインフィニティのメンバーに出会えたのは、偶然なのかパラスの導きなのか……絶対に偶然だな。
パラスがそんな緻密な計算をする訳がない。
『何とかなるっしょ~』って感じの女神なのだから。
「ああ、何でもないよリゼ。驚かせてゴメンね」
僕が微笑むと、リゼも微笑み返してくれる。
「ただいまなのじゃ~!」
レオナが満面の笑みで、皆に手を振りながら戻って来た。
「どうだった?」
「バッチリ火魔法Sになっておった」
レオナは、教会の印が押してある書類を持っている。
おそらく、人物鑑定の結果を写したものだろう。
そして王城に着くと僕たちは、謁見の間ではなく国王陛下の執務室に通される。
すでに冒険者ギルドから報告がきており、陛下は巨大ミーアキャットの討伐を喜んでいた。
「陛下、討伐した巨大ミーアキャットの死骸を、ご覧になりますか?」
「いや、それには及ばぬ。レオナも確認しておるのだろう?」
「はい、父上。しっかりと目に焼き付けてきたのじゃ」
陛下がレオナの頭を優しく撫でている。
「クリスよ、娘が世話になった。そなたのお陰で火魔法がSになったレオナは、この国の守護神となるであろう。3年後、大人になった娘にまた会いに来て欲しい」
「はい」
「クリス! 妾の成長を楽しみに待っていてくれ。それと、インフィニティの皆、妾と仲良くしてくれて、ありがとうなのじゃ!」
僕たちは、レオナとお別れの握手をする。
そして陛下に挨拶を済ませて、王城を後にした。
こうして僕たちインフィニティは、トリック独立国から東へ移動して、アイビス独立国を目指すのだった。




