第86話 特訓
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レオナに火魔法を教えることになったが、火魔法AがSに上昇する条件は二つある。
一つ目は、火魔法Aの中で全ての火魔法を発動させること。
二つ目は、火魔法の経験値が足りていること。
この二つの条件をクリアすると火魔法AがSに上昇するのだ。
僕は、まず一つ目の条件を確認するために、収納ボックスから帝国の魔術書を取り出す。
「レオナは、この火魔法Aの中で、発動したことの無い魔法がいくつあるかな?」
僕は火魔法の魔術書で、火魔法Aが全種類載っているページをレオナに見せた。
「うーん、これ以外は全部できるのじゃ」
おお、優秀だね。
火魔法Aの中でレオナが発動したことがないのは、範囲攻撃のフレアブレスだけだった。
「フレアブレスは、トリック独立国の魔術書に載ってないのじゃ」
レオナが苦笑して僕を見ている。
「その国によって得意な魔法は違うよね。ファルケ帝国は火魔法が得意で、火魔法使いが沢山いるから」
「そうじゃな。我が国は水魔法が得意で、水魔法使いが沢山いるのじゃ」
「早速、レオナにフレアブレスを習得してもらう」
「よろしくなのじゃ!」
僕は、日焼け止めを塗ったレオナと一緒に外へ出た。
そこはムアっとしていて、まるで前世の高校野球で経験した、真夏のグラウンドみたいである。
今日もデス砂漠は日差しが強く、気温がグングン上昇しているようだ。
「じゃあ、僕がやってみるから良く見ていてね」
「了解なのじゃ」
僕が周囲を確認すると、魔物は見当たらない。
まあ、手本を見せるだけだし、適当な場所で問題無いか。
僕は右手を開いて、前に出した。
「レオナ、行くよー、フレアブレス!」
僕は無詠唱で魔法を発動できるけど、レオナに魔法を使った瞬間を知らせるために、魔法名だけを発声した。
すると、広範囲に火魔法のブレスが降り注ぐ。
「おお、凄い威力なのじゃ」
レオナが驚愕している。
しかし、ここが砂漠で良かった。
手本を見せるにしても、草木の生えている場所では、火災になるため実演できない。
「クリス、疑問に思ったのじゃが、魔法名だけで呪文が聞こえなかったのはなぜじゃ?」
「ああ、僕は無詠唱で魔法が使えるからね」
「ほえー、すごいのお! 残念ながら我が国には、無詠唱の使い手は居ないのじゃ。いつか妾もクリスのように、無詠唱で魔法が使えるように頑張るのじゃ」
レオナがやる気に満ちた顔で僕を見た。
「じゃあ次は、レオナの番。今見た状況を頭の中にイメージしてね。呪文は『天より降り注げ、大地を覆う炎の息吹よ、フレアブレス』だよ」
「了解なのじゃ」
レオナが僕の右横を通り前に出た。
そして、深呼吸をしながら集中力を高めている。
「よし、行くのじゃ……天より降り注げ、大地を覆う炎の息吹よ、フレアブレス!」
範囲は少し狭いが、炎のブレスが降り注いだ。
成功と言って良いだろう。
「むー、クリスのようには、いかぬか。もっと広範囲にしたかったのじゃが」
レオナが納得いかないようで、悔しがっている。
「でも、初めてにしては上出来だと思うよ。さあ、火魔法の経験値が足りていれば、これでレオナの火魔法がSになったはず」
「クリス! 妾のステータスを見せて欲しいのじゃ」
僕はレオナと手を繋いで、彼女のステータスを表示したが、火魔法はAのままだった。
「くー、ダメだったのじゃ……」
レオナが、ガックリと肩を落として悔しそうにしている。
「でも、二つある条件のうち、一つはクリアできたじゃないか」
僕はレオナの頭をイイコイイコした。
「えへへ、気持ち良いのお……確かにクリスの言う通り、目標の半分はクリアできたのじゃ」
「後は、ひたすら火魔法の経験値を積み重ねていけば良いから、巨大蟻地獄を討伐しよう」
「賛成なのじゃ。徹底的に討伐しておかないと、巨大サソリが落とし穴に落ちてしまうのじゃ」
僕とレオナは、一旦平家に戻って準備を整える。
「お兄様、お帰りなさい。どうでしたか?」
平家の玄関を入ると、リゼが迎えてくれた。
今日のリゼは、銀髪をツインテールにして、瑠璃色の半袖ワンピースを着ている。
スカートの丈は、最近多くなってきた膝上10センチメートルくらいで、相変わらず白く透き通るような美しい生足だ。
いつかレオナみたいなミニスカートのリゼも見てみたい。
クラウのようなホットパンツも、足の奇麗なリゼに似合いそうだ。
「リゼ、ただいま。フレアブレスは成功したけど、レオナの火魔法はAのままだったよ」
「そうですか……」
リゼが自分のことのようにガッカリしている。
「リゼ、ガッカリしなくて良いぞ。妾、この後クリスと巨大蟻地獄を大量に討伐するのじゃ」
「それなら沢山の経験値を得られますね。頑張ってください、レオナ」
「リゼ、ありがとうなのじゃ」
リゼが両手を高く掲げると、レオナが応えるようにハイタッチをした。
そして、お互い笑顔で抱き合っている。
この調査依頼の間に、二人ともすっかり仲良くなったようだ。
この後、皆で新風力車に乗って、巨大蟻地獄が大量にいる場所を探した。
「ここら辺で良いかな」
僕は新風力車を着陸させて、外に出る準備をする。
「お兄様、レオナ、気をつけてくださいね」
リゼが心配そうに見つめた。
「分かった。リゼ、念のため結界を二重に張っておいてね」
「はい、お兄様」
「リゼ、行ってくるのじゃー!」
「レオナ、頑張ってね」
リゼが微笑みながら見送ってくれた。
僕は外に出るとしゃがんで、レオナをおんぶする体勢を整える。
「さあ、レオナおいで」
「ふお! クリスが妾をおんぶしてくれるのか!?」
「うん。僕が最初に火魔法Cの超火でダメージを与えるから、最後にレオナが火魔法Dの業火でトドメを刺して」
「了解なのじゃ!」
レオナが元気良く僕の背中に飛びついてきた。
エルのときみたいな弾力は背中に感じないが、それでも背中全体に柔らかな感触が伝わってくる。
そして、何か良い香りがするのだが、同じ石鹸とシャンプーを使っているはずなのに不思議だ……もしかして香水をつけているのだろうか?
そんなことを考えていると、巨大蟻地獄の落とし穴上空に到達した。
エルのときと同じやり方で大丈夫なはず。
僕とレオナは、次々に巨大蟻地獄を討伐して行く。
討伐後は、僕が複合魔法で落とし穴を塞いだ。
気温が40度を超えていると思われるので、熱中症対策として水分補給の休憩を多く取るようにした。
そして、休憩中にレオナのステータスを表示して、レオナの火魔法がSになっているか確認する。
僕とレオナは、巨大蟻地獄の討伐と水分補給の休憩をひたすら繰り返した。
結局、夕方になってもレオナの火魔法はAのままだったが、諦めた様子は全くない。
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翌日も僕とレオナは、巨大蟻地獄の討伐と水分補給の休憩をひたすら繰り返した。
ところが、途中で昼食を取ったときは元気だったレオナが、夕方になると疲れもあり少し元気が無い。
「もしかして、魔力切れの兆候!?」
「うーん、怪しい感じなのじゃ。申し訳ないが、次で今日は終了にして、明日またお願いしても良いかの?」
「分かった。無理しなくて良いからね。また、明日頑張ろう」
そして、2日目最後の巨大蟻地獄を討伐して新風力車へ戻った。
「クリス、すまないが明日もよろしくなのじゃ」
「うん。レオナも二日間よく頑張ったね」
僕はレオナと手を繋いで、ステータスを表示する。
【レオナ・デザート・トリック】
トリック独立国 第一王女 12歳 女
知力 85/94
武力 45/51
魅力 94/94
剣術 F/F
槍術 G/F
弓術 G/E
馬術 D/D
火魔法 S/S (AからSへ上昇)
水魔法 A/A
話術 A/A
算術 A/S
芸術 A/S
料理 F/C
「ふおおー! 妾の火魔法がSになってるー!」
「最後ので上がったのかもね。レオナ、おめでとう!」
「ありがとうなのじゃー!」
感激したレオナの瞳からは涙が溢れている。
そして、ふらつきながら僕の胸に飛び込んで来たのだった。




