第85話 無邪気
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クラウが熱中症から回復した後、ステータスを確認したのだが、クラウの武力は上昇していなかった。
最近武力が98に上がったばかり、というのもあるのだろう。
ただ、クラウは特に気にした様子もなく、また次頑張ると前向きだった。
一夜明けて、朝食後にリビングのソファーに座り、ハチミツ入りのアイスミルクを飲みながら現在会議中である。
「クラウ、昨日はお疲れ様。体調はどう?」
「問題ない。クリスの氷風呂や皆のお陰で、アタシは元気だ」
クラウに笑みが零れる。
今日のクラウは、珍しく深緑の半袖ワンピースを着ていた。スカートの丈は膝上10センチメートルくらいである。いつもは、半袖シャツにホットパンツが多いのだが、病み上がりだし安静にするようエルに言われたらしい。燃えるような美しい赤髪も、いつものポニーテールではなくストレートロングにしている。
今日のクラウなら誰が見ても、淑やかな令嬢に見えるだろう。
そういえば最近、女性陣のスカート丈が短くなっている。
今日のリゼは、レモン色の半袖ワンピースで、スカート丈はクラウと同じ短めだ。
カルラも紺色の半袖ワンピでスカート丈は短めである。唯一エルだけが平常運転で、膝下10センチメートルくらいの紫色の半袖ワンピを着ているが。
そんなインフィニティ内に起きている変化を考えながら、僕はクラウに視線を戻した。
「あの戦闘の後に思ったのだけど、クラウって砂漠の砂地を全然苦にしないよね? 僕は歩きにくいから苦手なのだけど」
「あー、それは幼少期から砂地で稽古したりして慣れているからだな。オルレアン伯爵領の東側は海に面しているから、毎年定期的に砂浜で合宿をしていたのさ」
「なるほどねー」
「まあ砂地に慣れていても、デス砂漠の酷暑には対処のしようがないけど。砂漠での戦闘は、剣士にとってかなりキツイ。前衛で守備に徹して、攻撃はクリスに任せるのが一番だと、身に染みて分かった」
クラウが苦笑して僕を見ている。
昨日は熱中症になったりして大変な思いをしたけれど、お互い砂漠での役割分担が明確になった。
そう考えれば、貴重な体験だったのかもしれない。
「クリスー! 妾のステータスを見せて欲しいのじゃ」
ハチミツ入りのアイスミルクを飲み終えて、ソファーに座るレオナが、零れるような笑顔で僕を見つめている。そう言えば、巨大ミーアキャットを討伐した後に見せると約束していたね。
今日のレオナは、茜色の半袖ミニワンピを着ている。
ミニワンピ比率が高いので、見えてしまいそうになることが多く、心配する毎日だ。
せめて下に、水着を着てくれたら助かるのだけど。
「分かった。僕の隣に座ってくれるかな」
「了解なのじゃ!」
元気よくレオナが立ち上がり、僕とリゼが座る3人掛けソファーにやって来る。
そして、空いている僕の右側に座らず、迷いなく僕の膝の上に乗った。
ん? これは……凄く柔らかい物が膝の上に密着している……レオナのお尻か?
……これはこれで有りだな!
しかし、レオナの後ろ頭で前が全く見えない……うーん、どうしたものか……
「レオナ、前が見えないから降りてもらっても良いかな?」
「ん? ああ、すまないのじゃ。いつも父上とこうしておるから、つい癖でな」
レオナがピョンと僕の膝から降りて着地した。
「クリス、足を開いて欲しいのじゃ」
「ん? こうかな?」
僕はソファーに座りながら閉じていた足を、ハの字に開いた。
「ありがとうなのじゃ」
そう言ってレオナが僕の足の間に座ると、グイグイとお尻を僕の方へ寄せて、僕の太ももの間にレオナの体がスッポリと挟まった。
う、この体制はヤバイな。密着度が半端ない……何かドキドキしてきたぞ。
「えーと、レオナ? 僕の右隣りに来てもらえるかな?」
「なぜじゃ? 妾、父上といつもこうしておるのじゃが、クリスは嫌じゃったかの?」
レオナが振り返りながら、シュンとして僕を見つめている。
う、泣きそうな顔をされても困るのだけど……
「い、嫌じゃないよ」
「本当か!? なら問題ないのじゃ。さあ、妾のステータスをよろしくなのじゃ!」
いつもの元気なレオナに戻ったようだ。
結局、押し切られてしまったが仕方ない。
僕は、レオナのステータスを表示した。
【レオナ・デザート・トリック】
トリック独立国 第一王女 12歳 女
知力 85/94
武力 45/51
魅力 94/94
剣術 F/F
槍術 G/F
弓術 G/E
馬術 D/D
火魔法 A/S
水魔法 A/A
話術 A/A
算術 A/S
芸術 A/S
料理 F/C
「ふあー、これが妾の素質かや!?」
レオナが振り返って僕を見ながら、目をキラキラさせている。
か、顔が近いのだけど! 今日はレオナに、ドキドキさせられてばかりだ。
まあ無邪気なレオナのことだから、狙って実行しているわけでは、ないのだろうけど。
「クリス、妾の知力は94まで上がるのじゃな?」
「そうだね。一生懸命努力すれば、いずれはね」
「ふおー、妾頑張るのじゃ!」
レオナがこちらを振り返りながら、瞳に炎を宿している。
「あ、妾の水魔法は、父上のようにSにはならぬのじゃな」
レオナが、ガッカリして気落ちしてしまったようだ。
「でも、レオナの火魔法はSまで上がるみたいだよ」
「おお、本当じゃ! 妾、火魔法の方が素質あったのじゃな。今までずっと水魔法をSにしようと訓練を続けていたのじゃが、妾は無駄なことをしておったのかもしれぬ」
珍しくレオナの声に元気がない。
「レオナ、無駄な努力なんて無いよ。限界突破っていうのがあってね、ずっと努力を続けていると、いつかレオナの水魔法が素質の限界を超えてSになることもある」
「そうなのかや!?」
「うん。素質AがSに限界突破するのは、かなりレアだけど、可能性はゼロじゃない」
「そうか……妾、無駄なことをしておった訳では、ないのじゃな」
レオナの声に少しだけ力が戻ってきたようだ。
「クリス! 妾、火魔法をSにしたいのじゃ。もしまたスタンピードが起きたときは、妾が何とかしたい。だから妾に火魔法を教えて欲しいのじゃ!」
レオナが完全復活したようで、やる気に満ちた大きな声を出した。
トリック独立国とは、良い関係を維持していきたい。
通常なら他国の軍事力が上がる手伝いをするのは、あり得ないのだろうけど、僕はレオナを信用している。
エルの方を見て確認すると、微笑みながら頷いてくれた。
「分かった。僕に任せて」
「クリス、ありがとうなのじゃ!」
レオナが破顔して僕に抱きついてくる。
こうして僕は、レオナに火魔法を教えることになった。




