第82話 砂漠のギャング
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レオナが臨時的にインフィニティへ合流してから、一夜が明けた。
今は朝食を終えてリビングのソファーに座り、皆でハチミツ入りのホットミルクを飲んでいる。
「さて、今日からデス砂漠に行って、巨大サソリのスタンピードについて原因となったであろう魔物を探す」
全員が僕を見て頷く。
皆、昨夜ぐっすり眠れたようで体調は良さそうだ。
レオナだけは変な夢を見たらしく、夢の中で身動きが取れずに、ずっともがいていたらしい。
エルは、レオナという抱き枕が最高だったらしく、『やっぱり妹が欲しいのだわ』と言っていた。
「じゃあ外に出て、新風力車に乗ってね」
僕は平家から出ると、収納ボックスから新風力車を取り出した。
そして、全員が平家から出たのを確認し、家を解体する。
「リゼ、結界と認識阻害を解除して」
「はい、お兄様」
リゼが慣れた手つきで作業を終えた。
「リゼ、いつもありがとう。魔力は大丈夫かな? 体調に変化はない?」
「はい。お兄様と一緒だから、私は元気一杯ですよ」
リゼが、キラキラ輝く笑みを零す。
今日のリゼは若葉色の半袖ワンピースで、膝上10センチメートルくらいのスカート丈だ。
透き通るような白く美しいリゼの生足がとても眩しい。
いつもは膝下のスカート丈なので、何か心境に変化でもあったのだろうか。
「よし、行こうか」
リゼが首を縦に振ると、僕の左腕にしがみついてきた。
僕は空いている右手で、リゼの頭を優しくなでる。
そして二人で一緒に、新風力車へ乗り込んだ。
「では、以前と同じように二人一組になって、30分交替でデス砂漠の調査を行う。左側の小窓をリゼとクラウ、右側の小窓をエルとカルラで、30分ごとに交替してね」
「「「「了解!」」」」
リゼ、エル、クラウ、カルラの声が揃う。
「クリス、妾は何をしたらよいのじゃ?」
レオナが微笑みながら、首を傾げて僕を見つめている。
「レオナは僕と一緒に運転席で、前方を探してくれる?」
「わかったのじゃ!」
レオナが元気一杯に笑顔で返事をした。
「では、出発するよ。皆、所定の位置についてね」
「「「「「了解!」」」」」
レオナを含めた女性陣全員の声がハモった。
僕は運転席に座ると、右隣にレオナを座らせて後ろを確認する。
全員が座っていたので、僕は新風力車を風魔法で浮上させて上空を進んだ。
「ふおおお、クリス! 飛んでる! これ、空を飛んでいるのじゃが!?」
初めて新風力車に乗ったレオナが、驚嘆して叫んでいる。
まあ、初めて空を飛んだら、そういうリアクションになるよね。
「レオナ、これは僕が作った新風力車という乗物で、僕の風魔法で動かしているんだ」
「ふえー、風魔法が使えると、皆空を飛べるのかや?」
「うーん、僕の風魔法はSだけど、他の風魔法Sの魔法使いが空を飛べるかは、確認してみないと分からないかな」
「なるほどのう。よし、妾頑張って魔物を探すのじゃ!」
そう言ってレオナは、元気良く首を左右に振りながらデス砂漠の魔物を探していたが、30分くらい経つと予想どおり舟を漕ぎ始めた。
リゼやエルでさえ、この眠気には勝てなかったのだ。レオナのせいではない。
元々この依頼は、インフィニティへの指名依頼だから、レオナは自由にしてもらって大丈夫である。
僕は1時間空を飛んだら地上に着陸して10分休憩し、また新風力車で空を飛ぶことを繰り返す。
しかし、初日と2日目は何の手掛かりも得られず終了した。
☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆
そして、デス砂漠の調査3日目を迎える。
現在朝食を終えリビングで、ハチミツ入りのアイスミルクを飲みながら会議中だ。
「この2日間、デス砂漠で魔物を見ていない。いくらスタンピードの後だとしても、おかしくないだろうか。巨大蟻地獄すら居ないのは、異常な光景だと思う」
「私もクリス君に同感なのだわ。巨大蟻地獄の落とし穴だけが沢山ある状況を、予想していたのだけど」
僕の意見に、エルも同じ考えのようである。
「うーん、となると巨大蟻地獄の落とし穴を苦にせず、捕食している魔物が存在する可能性が高いね」
「お兄様、その魔物が私たちの探している魔物かもしれませんね」
「うん。とにかく今日は、何でも良いから魔物を探そう。初日に首都ストークからデス砂漠を見て左側を探した。そして2日目は中央付近を探したが、初日2日目と魔物を見ていない。今日は、右側を探そうと思う」
皆が真剣な表情で頷いた。
僕たちは、準備を整えて新風力車に乗り込み、3日目の調査を開始する。
午前中は空振りだったが、昼食休憩後にリゼが魔物を発見した。
「お兄様、こっちです」
リゼとクラウの居る左側の小窓から外を見ると、スラリとした体形の魔物が直立不動で何かを探している。
ん? あの特徴のある姿勢は、前世で見たことがあるな……たしか動物園で見たような……
「ミーアキャット?」
「クリス、キャットってあれは猫なのか?」
僕のつぶやきにクラウが反応した。
「いや、猫ではなくてマングースの仲間だったはず」
すると、魔物が何かを見つけたようで動き出した。
「2本の足で直立不動になってましたけど、移動するときは4本足なのですね」
リゼが驚いて魔物を見つめている。
そして、魔物が移動中に『グワッグワッ』とアヒルのように鳴いた。
「うわっ、あの猫アヒルみたいに鳴いたぞ」
「だからクラウ、あれは猫じゃないってば」
そんな会話をしていると、後ろにレオナ、エル、カルラが集まって来ていた。
「少し待ってね。皆が観察しやすいように、新風力車の向きを変えるから」
僕は皆が見やすいように、運転席の窓から魔物が見える位置に向きを調整する。
「あの猫、何を見つけたんすかね?」
突っ込むのも面倒になってきたので、カルラの発言は放置した。
「あっ、巨大蟻地獄の落とし穴に、自分から落ちていったのじゃ!」
レオナがそう言い終わる頃には、落とし穴の底に到達する。
そして、飛び出してきた巨大蟻地獄を、右手の鋭い爪を使い一撃で仕留めたのだ。
その後、頭部だけを食べると落とし穴から這い出て、自分の足で落とし穴を埋めている。
「凄い強さなのだわ」
エルが発見した魔物の強さに驚いていた。
「あっ、巨大サソリが近づいてきます」
リゼがそう言い終わる頃には、発見した魔物が走り出す。
「あの猫、巨大サソリの尻尾を踏みつけたっすよ」
「ああ、巨大サソリが毒針で刺したのじゃ」
「勝負あったっすね。猫の負けっす」
しかし、そこで僕たちは異常な光景を目にする。
「あれ? あの猫、しぶといっすね」
「カルラあれは、しぶといのではなくて毒が効いていないのだわ」
「あの魔物、巨大サソリの尻尾を食いちぎったのじゃ」
毒針付きの尻尾が無い巨大サソリは、ただのエビだった。
さっきの巨大蟻地獄とは違い、美味しそうにバリバリと殻ごと食べている。
そして、あっという間に尻尾以外を完食したのだ。
あまりの無敵ぶりに、女性陣が全員ドン引きしている。
「スタンピードの原因は、あの魔物で間違いなさそうだね」
「クリス君、鑑定してみて欲しいのだわ」
「皆、僕の手に触れてね」
僕は、スタンピードの原因になったであろう魔物を鑑定した。
【巨大ミーアキャット】
魔物 5歳 オス
知力 25/30
武力 85/90
魅力 25/25
特徴……名前にキャットとあるが、猫ではない。マングースの仲間であり、『グワッグワッ』とアヒルのように鳴く。巨大サソリの毒に免疫があり、まるで効かない。巨大サソリにとっては天敵であり、まさに砂漠のギャングである。滅多に巨大化して魔物になることはないが、魔物になってしまうとあまりの無敵ぶりに、巨大サソリがスタンピードを起こすことがあるので注意が必要。手の鋭い爪と何でも噛み砕く歯が武器。肉は美味とはいえず、食用には向かない。ただし、鋭い爪と歯は貴重な素材となる。
「キャットって名前なのに猫じゃないんすね」
「まったく紛らわしい名前だな。ニャーって鳴かないから、びっくりしたじゃないか」
やっとカルラとクラウが、猫ではないと認識したようだ。
しかし、僕にとってこの発見は嬉しい。
僕がスタンピードの原因ではないと、証明できたのだから!
「お兄様、砂漠のギャングみたいですけど大丈夫ですか?」
リゼが心配そうに僕を見つめている。
僕は、巨大ミーアキャットを討伐する作戦を考えるのだった。




