第78話 褒美
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国王陛下との謁見中に、レオナとの結婚が許された。
僕のことを気に入ってくれたのは嬉しいが、いきなり結婚とか……わけがわからないよ。
「陛下、大変光栄なことではありますが、私には、やるべきことがありまして、この国にも長く滞在できないのです」
「そちたちの実力なら、何か特別な依頼を受けているのかもしれないが、娘と結婚すればそちも王族の一員になれるのだぞ」
うーん、僕は既に皇族なのだけどね。
「申し訳ございません。私は、王族になりたいわけでは……」
「クリス! 妾では不満と申すか!」
レオナが険しい表情で、僕の前に飛び出してきた。
彼女に不満があるわけではないのだ。
レオナは12歳の女性でありながら、国民を守るために最前線で魔物と戦う、責任感の強い人である。
いずれ火魔法がSになれば水魔法Aもあるし、トリック独立国の守護神となるだろう。
オマケに美少女だし。
「いえ、殿下には何の不満もございません」
「なら、よいではないか。父上の許可も出ておるし、絶対に後悔はさせないのじゃ」
不満が無いと言った僕の言葉に気を良くしたのか、レオナが微笑んで僕を見つめている。
「しかし、私にも立場がありまして、自分の一存では……」
「立場? そうか親兄妹のことを心配しておるのじゃな。問題ない、クリスの家族全員をトリック独立国へ呼べば良い。まとめて妾が面倒をみよう。どうじゃ、これで何も心配は無いであろう?」
レオナが美少女スマイルで、僕をじっと見つめた。
黒髪ストレートロングで姫カットの彼女に、紫色のドレスがとても似合っている。
もしかすると前世の和服の方が、もっと似合うかもしれない。
「いや、家族のことでは、ないのですが……」
「なら、冒険者としての立場かのう? それも問題ないのじゃ! 妾と結婚しても、冒険者を続けて構わぬ。定期的に妾の元に帰って来てくれるだけで良いぞ」
レオナが笑顔でグイグイ攻めてくる。
そして、どんどん外堀が埋められていく。
これはもう冒険者の立場では、断りきれないかもね。
僕がチラリとエルの方を見ると、困ったように苦笑していた。
「殿下、少し私の軍師と相談させていただいても、よろしいでしょうか?」
「ほう、クリスには軍師がおるのか。よいぞ、しかと相談してまいれ」
僕は、国王陛下とレオナに一礼して、エルと小声で相談する。
「エル、どうしようか。このままだと逃げられない」
「押しが強いだけでなく、頭の良い王女なのだわ」
「冒険者の立場では断りづらい。僕の身分を明かしても大丈夫かな?」
エルが少し下を向き、目を閉じて考えている。
「まあ、両国の仲も悪くないし、昨日クリス君があれだけの強さを見せた。私たちが捕縛される心配もないのだわ」
「そうだね、これで納得してくれるといいのだけど」
「頑張ってね、皇子さま」
エルが苦笑して僕を見た。
軍師との作戦会議を終えて、僕は国王陛下とレオナに向き合い片膝をつく。
「お待たせいたしました」
「うむ、軍師と相談した結果を聞かせてもらうのじゃ」
レオナが楽しそうに笑みを浮かべている。
「その前に陛下へ、私についてお伝えしたいことがございます」
「ほう、申してみよ」
陛下が穏やかな表情で、僕を見ている。
「Aランク冒険者パーティー『インフィニティ』のリーダー『クリス』は、仮の姿です」
「ほう、してその正体は?」
陛下が、面白そうに僕を眺めている。
「私は、ファルケ帝国第三皇子クリストハルト・ブレイズ・ファルケと申します」
一瞬の静寂が謁見の間を支配した。
「はあ!? 帝国の第三皇子だと!?」
謁見の間が、ざわついている。
「何か証明できるものは?」
僕は収納ボックスから、父上が持たせてくれた皇族手帳を取り出した。
「収納ボックスまで持っておるのか」
陛下が驚いて僕を見ている。
「こちらが皇族手帳になります」
僕が手帳を差し出すと、陛下の側近らしき男が受取り陛下に渡した。
「確かに、間違いないようだ。それと第一皇女も一緒なのか?」
あ、手帳にリゼの名前も載っているのか……仕方ない。僕は立ち上がると、リゼを隣に呼んだ。
「陛下、妹のリゼットです」
「国王陛下、ファルケ帝国第一皇女リゼット・ブレイズ・ファルケと申します」
リゼが微笑みながらペコリと頭を下げた。
「おお! なんと可愛らしい」
陛下が、リゼの超絶美少女ぶりに驚いているようだ。
「クリストハルト殿、リゼット殿、妾はトリック独立国第一王女レオナ・デザート・トリックなのじゃ」
「レオナ嬢、ファルケ帝国第三皇子クリストハルト・ブレイズ・ファルケです」
「レオナ様、ファルケ帝国第一皇女リゼット・ブレイズ・ファルケと申します。仲良くして頂けると嬉しいです」
リゼが、レオナに微笑んで挨拶をした。
「くー、可愛いのお、妾もリゼット殿のような妹が欲しいのじゃ。あ、クリストハルト殿と妾が結婚すれば、自動的にリゼット殿が妾の妹になるのじゃ」
レオナが、妾天才とか言いながら笑っている。
「しかし、レオナよ」
「なんじゃ、父上」
「クリストハルト殿がファルケ帝国の第三皇子となると、即結婚とはいかぬぞ。国家間のことゆえ、慎重にならざるを得ない」
「確かに、父上の言う通りなのじゃ」
先程まで笑顔だったレオナが、シュンとなってしまった。
「だがな、クリストハルト殿がレオナを気に入れば話は別だ。両国の同盟と共に、すんなり結婚の話がまとまるだろう」
「父上、妾頑張るのじゃ!」
レオナが国王陛下に抱きついた。
「うんうん、父も応援するぞ」
陛下がレオナをギュッと抱きしめている。
とても仲の良い親子だ。
「クリストハルト殿、我が国に滞在中はレオナを案内役にするので、常に一緒に行動して欲しい」
陛下が笑顔で僕を見ている。
「常にですか?」
「ああ、この後冒険者ギルドを通して、スタンピードの原因を探るため、インフィニティにデス砂漠の調査を依頼するつもりだ。数日は帰ってこれまい。そこにレオナを案内役として、連れて行ってくれ」
やられた……さすが知力が高い国王陛下である。
砂漠を案内するうちに仲良くなって、一緒に宿泊する中で何かを仕掛けてくるのかもしれない。
油断できないな……
「はい、承知いたしました」
「それと、大分話がそれてしまったが、我が国を救ってくれたクリストハルト殿に対し、依頼の報酬とは別に褒美を考えている。希望があれば、言って欲しい」
ふむ、ここは遠慮せずに大聖女の情報を集めよう。
「王宮の書庫を見せて欲しいです。大聖女リーゼロッテ関連の書籍を探しておりまして」
「書庫を見るだけで良いのか?」
「必要な本が見つかったときは、書き写させて欲しいのですが、よろしいでしょうか?」
「承知した。好きなだけ見ていくがよい」
こうして僕は褒美として、トリック独立国の王宮書庫で、新しい情報を探すのだった。




