第74話 トリック独立国首都ストーク
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エルが限界突破を成し遂げて、火魔法の適性上限がDからCへ上昇した。
僕はエルをおんぶしたまま、新風力車に帰還する。
「ただいまー!」
「「「おかえりー!」」」
リゼ、クラウ、カルラの3名が出迎えてくれた。
「皆、エルが限界突破に成功して、火魔法の適性上限がDからCに上昇したよ!」
「エル、おめでとー!」
「うむ、さすがアタシの幼馴染だ」
「エル、おめでとうっす! いつか自分も限界突破して、追いつくっすよー」
僕の発表にリゼ、クラウ、カルラの順にエルに対しお祝いの言葉を述べた。
「皆、ありがとう! 6年間諦めずに、努力を続けて良かったのだわ」
エルがフラつきながら笑顔で答えた。
「リゼ、エルにヒールをかけてあげて」
僕は、エルをソファーに座らせる。
「外は猛暑ですものね。エル、いきますよー、ヒール!」
リゼが右手を前に出して、光魔法を行使すると淡い光がエルを包み込む。
「ありがとうなのだわ、リゼ」
リゼにヒールをかけてもらって、エルの表情が少し穏やかになった。
「エル、このまま水風呂に入ってきたら?」
「クリス君、そうさせてもらうのだわ」
「カルラ、水魔法で浴槽に水を張ってくれる?」
「了解っす!」
さて、リゼのヒールで体力面は回復したはず、後はエルの精神的な疲労を癒してあげよう。
「クラウ、エルを浴場までお姫様抱っこしてあげて」
「承知した」
エルが、大好きなクラウにお姫様抱っこをされて、幸せそうにしている。
うんうん、頑張って限界突破をしたのだ、ご褒美は必要だよね。
「お兄様にもヒールをかけますか?」
「うん、よろしくね」
「はい! いきますよー、ヒール!」
リゼの右手から暖かな光が発現し、僕を癒してくれる。おお、体が楽になった。
「リゼ、ありがとう」
「どういたしまして、お兄様」
リゼがニッコリと笑う。
う、可愛いリゼをギュッと抱きしめたいけど、今の僕は汗だくなのだ……我慢しなければ。
「旦那様、お願いがある」
ん? クラウが浴場から戻ってきたようだ。
「どうしたの?」
「このままデス砂漠を抜けると、次はいつ来れるかわからないだろ?」
「そうだね」
「そこで、巨大サソリを多めに捕ってきて欲しい。自分で行きたいところだが、アタシは火魔法が使えないからな」
あー、クラウは海老の味がするって、気に入っていたよね。
まあ、素材としても価値があるらしいので、反対する理由はないかな。
「わかった」
「いいの!? 旦那様大好き!」
クラウが僕に抱きついてくる。
「ちょっ、今は汗だくだから離れた方がいいよ」
「アタシは全然気にしないぞ。むしろ、ご褒美だ」
「はいはい、離れないなら巨大サソリを捕りに行けないけど、仕方ないよね」
「ぐぬぬぬ」
クラウが渋々僕から離れた。
「じゃあ、行ってくるね。リゼ、念のため結界を二重に張ってくれる?」
「はい!」
「クラウは、女性陣の護衛を頼むね」
「承知した」
僕は再び外に出て、デス砂漠に降り立つ。
そして、手当り次第に巨大サソリを20頭くらい討伐し、収納ボックスへ入れる。
大分上達したようで、上空から上手く加減して火と風の複合魔法で、頭だけを狙撃できるようになった。
「もう近くには見つからないね……帰るか」
僕は、新風力車へ帰還する。
「ただいまー」
「お兄様! おかえりなさい」
リゼが僕に抱きついてきた。
「リゼ、僕の汗がついてしまうよ」
「大丈夫ですよ。ワンピースの下は水着ですから。お兄様と一緒に、お風呂に入ろうと思って待っていました」
リゼが微笑みながら僕を見上げる。
エルもお風呂から出てソファーで寛いでいるし、僕も汗を流しておこうかな。
「じゃあ、一緒に入ろうか」
「はい、お兄様」
まだお昼なので、僕とリゼは手早くシャワー魔法で済ませて風呂を出た。
今日中にトリック独立国の首都ストークに到着したいのだ。
その後、昼食を済ませて一気にストークの町を目指す。
「クリス君、右方向に巨大サソリの大群が見えるのだけど」
しばらく進んだところで、エルが巨大サソリを大量に発見したようだ。
「ん? ああ、本当だね」
「どこを目指しているのかしら?」
「僕たちと同じ方向だ……これはマズイかもしれないね」
僕が前方を確認すると、遠くに町のようなものが二つ見える。
左奥に見えるのは小さな村のような集落で、右手前に見えるのは壁に囲まれた規模の大きな町だ。
おそらく右に見える大きな町が首都ストークではないだろうか。
僕は速度を上げて、巨大サソリより先に町に到着した。
そして、検問所から少し離れた所に新風力車を着陸させて、全員車外へ降りる。
収納ボックスへ新風力車をしまい、徒歩で検問所まで来た。
「大騒ぎっすね」
カルラの言う通り、検問所では軍隊が出動しているらしく、物々しい雰囲気になっている。
僕たちが冒険者カードを提示して検問所の兵士に確認すると、間違いなく首都ストークの町だったので、そのまま中に入った。
「とりあえず、冒険者ギルドへ行ってみよう」
「そうですね、お兄様」
僕たちは、一直線に冒険者ギルドを目指す。
ギルドに到着すると、検問所同様に大騒ぎとなっている。
「何か手伝えることがないか、受付で聞いてみよう」
皆が頷いたので、僕は受付を目指す。
「すいません、何かあったの?」
「ええ、巨大サソリのスタンピードが発生したの。今日は依頼どころではないから、あなたたちも家に帰ったほうが良いわ」
受付嬢が僕たちのことを、心配してくれているようだ。
「何か手伝えることが、あるだろうか」
「その気持ちだけで嬉しいわ。親も心配しているでしょうから、早く家に帰って安心させてあげてね」
完全に子供扱いされているな。
11歳から15歳までの少年1人、美少女4人の冒険者パーティーだから当然ではあるが。
あ、冒険者カードを提示していなかった。
「ごめんね、見せるのを忘れていたよ」
僕は、冒険者カードを受付嬢に提示する。
「……はあ!? Aランク冒険者パーティー!?」
受付嬢が大声で叫ぶと、今まで騒がしかった周囲が静かになる。
そして、大柄な男が僕たちの方へ歩み寄って来た。
「Aランク冒険者パーティーってのは、本当か!?」
「はい」
「巨大サソリの討伐経験は?」
「今までに30頭くらい討伐したかな」
ギルド長が目を見開いて驚嘆している。
「この中に火魔法使いは何人いる?」
「3人です」
僕とエルとカルラの3人が手を挙げた。
「デス砂漠で貴重な火魔法使いが3人も! 頼む、巨大サソリ討伐の緊急依頼を受けてもらえるか?」
「はい。しかし何でこんなことに?」
「おそらくデス砂漠に、何か強い魔物が出現したのだと思う。その魔物から逃げ出した結果が、このスタンピードだからな」
ん? ギルド長が言うような強い魔物なんて、見かけなかったけどね。
すると、僕の肩をエルが優しく叩いてきた。
「どうしたの?」
「クリス君、デス砂漠を通過する直前に、クラウディアにお願いされて巨大サソリを討伐しに行ったでしょ?」
「うん、クラウの大好物だからね。その辺に居たのを、手当たり次第に捕って来たよ」
「何頭討伐したのかしら?」
「うーん、20頭くらいだったかな」
エルが驚愕している。
「クリス君。魔物にも知力があるから、周囲で大量に同族がやられたら、一斉に逃げ出すのだわ」
「へ? もしかして、スタンピードが起こったのは、僕のせいなの!?」
「絶対にそうだとは、言えないのだわ。実際に強い魔物が突然現れた可能性の方が高いもの」
エルが苦笑して僕を見ている。
「いずれにせよ僕は、このスタンピードを全力で止めないといけないね」
「責任重大なのだわ」
こうして僕たちインフィニティは、ストークの町で巨大サソリ討伐の緊急依頼を受けるのだった。




