第69話 集落
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僕たちは、クラウが発見した集落へ移動した。
そこには、日干しレンガの家が密集しており、全部で50前後ある。
ヤシの木がまばらに生え、水場や畑のようなものが確認できた。
「お兄様、どうしますか?」
「うーん、まずは人が住んでいるかどうかを確認しようか」
「クリス君、もし先住民がいるのなら、私たちは敵と勘違いされて、襲われる可能性が高いのだわ」
エルが警戒するよう、注意してくれる。
「そうだね、僕たちが敵じゃないと伝えてみるね」
風魔法を使えば、僕の声が村全体に届くはず。
「誰かいませんかー! 僕たちは、Aランク冒険者パーティー『インフィニティ』でーす! この村に敵対する気は、ありませーん!」
「……」
ダメか……
「風魔法を使って村全体に呼びかけたけど、反応が無い。誰もいないのかもね」
「アタシもそう思う。人の気配を感じない」
剣術Sのクラウが言うのなら、間違いなさそうだが……
剣士は、人の気を察するのに長けているからね。
「どうするクリス、アタシが家に突入してもいいが」
「うーん、出会頭に何か起こると、ケガ人が出るかもしれない」
「それならどうする? 何か策があるのか?」
クラウが、真剣な目つきで僕を見た。
「皆の安全を考えたら、突入するのは危険かな。そこで、家を解体しようと思う」
「はあ!? そんなことして大丈夫なのか? もし、住んでいる人がいたら激怒すると思うが」
「そのときは僕が、複合魔法で新築の家を建てて、お詫びするよ」
皆が苦笑して僕を見ている。
「さすがクリス君、やることが大胆なのだわ。でも、新築の家をプレゼントするなら、誰も文句は言わないでしょうね」
「そうっすね。それこそ自分の家も壊して、新築にしてくれって人が殺到するような気がするっす」
僕たちは、一番近くにある家の前に移動した。
「じゃあ、いくよー、ディスマントル!」
僕が土魔法の呪文を唱えると、日干しレンガの家は、ドロドロに溶けて土に戻る。
「お兄様、誰も居ませんね」
「そうだね。よし、次行ってみようか」
僕は手当たり次第に、土魔法で家を解体していく。
そして、最終的には全ての家を土に戻した。
「アタシの予想通り、誰も居なかったようだな」
「さすが剣術S、人の気配に敏感だよね」
「ふふふ、旦那様もっとアタシを褒めて」
「はいはい、いい子いい子」
僕が頭を撫でると、クラウが目を閉じて気持ち良さそうにしている。
「クリス君!」
ん? どうしたのだろうか、珍しくエルが慌てているな。
「この石碑に大聖女リーゼロッテの名があるの!」
「本当に!?」
だとしたらこの集落が、過去に大聖女リーゼロッテが滞在したオアシスの可能性が高い。
皆が、エルの示す石碑に集まった。
「エル、なんて書いてあるの?」
「大分古いものらしく、見づらいけれど……『村の救世主、大聖女リーゼロッテここに眠る』と書かれているみたい」
「これが大聖女リーゼロッテのお墓……」
「お兄様、リーゼロッテ様は、ここで亡くなったのですね」
「うん、死因は分からないけどね」
僕たちは、大聖女リーゼロッテのお墓に、手を合わせて黙祷する。
「何か手掛かりになるものが残されていないか、徹底的に調べよう」
「そうね、家があった場所を全部調べた方が良いのだわ」
「よし、二手に分かれて探そう。エルとクラウは、ここから順に調べてみて。僕とリゼとカルラは、反対側から調べるから」
僕たちは皆で頷くと、それぞれの家があった場所をくまなく調査した。
すると、村の中心付近にある一番大きな家の跡地から、地下に続く階段を発見する。
「お兄様、土に埋もれてしまって、降りられないですね」
リゼが心配そうに階段を見つめていた。
「大丈夫だよリゼ、僕に任せて。皆、風魔法で土を除去するから下がってね」
僕は、皆が階段から離れたのを確認すると、風魔法で土を運ぶ。
何度か風魔法を使うと、ようやく地下に続く階段が全て現れる。
「クラウ、地下室から何か気配を感じる?」
「うーん、全く感じないな」
「了解、じゃあ僕が見てくるから、皆はここで待っていて」
皆が頷いたのを確認すると、僕は階段を降りて地下を目指した。
光魔法を使って周囲を照らすと、階段自体は長くない。
すぐに地下室へ到着した僕は、光魔法を調整して室内を明るくした。
すると、棚に箱がいくつか置いてある。
「リゼとエルは、階段を降りて地下室に来て。クラウとカルラは、そのまま待機で周囲の警戒をよろしく」
「「了解!」」
クラウとカルラの返事がハモった。
そして、リゼとエルが地下室に降りてくる。
「お兄様、何か手掛かりが見つかりましたか?」
「うん、いくつか箱を見つけたよ」
「では、早速開けてみるのだわ」
エルが箱に手を伸ばす。
「待って! 罠があると大変だから、僕に任せてくれるかな」
「う、確かに。慎重に行くべきなのだわ」
僕たちは、一旦箱から距離を取る。
そして僕は風魔法で箱のふたを持ち上げて、様子を窺う。
「お兄様、問題なさそうですね」
「うん、少し待っていてね」
僕は、風魔法で箱を傾けて中を見た。
「本かな?」
「そのようですね」
「クリス君、他の箱はどうかしら」
僕が全部の箱を開けると、空の箱もあったが、最終的には3冊の本を発見する。
僕とリゼとエルの3人で、それぞれ1冊の本を読んでみた。
「これは……大聖女リーゼロッテの手記かな……」
僕が読んだ本には、オアシスの村で大聖女が暮らしたときに書いた、日記のような記述がある。
「リーゼロッテ様……」
「とりあえず、この3冊の本を持ち帰って、じっくりと読むしかないのだわ」
「そうだね。とりあえず、この村に複合魔法で平家を作るから、そこで調べようか」
こうして僕たちは、大聖女リーゼロッテの滞在したオアシスを発見し、手掛かりを得たのだった。




