第68話 突入
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僕たちは、砂嵐が集中して発生している中にオアシスがあると予想した。
それを確かめたいが、問題はどうやって辿り着くかである。
エルが指摘するように、新風力車で飛びながら砂嵐に突入すると、強風で墜落してしまうかもしれない。
僕は再び新風力車を、改造することにした。
「お兄様、何か良い案が浮かんだのですか?」
「わかる?」
「はい、何かスッキリとした表情をされていたので」
さすがリゼ、僕のことをよく理解している。
「強風に耐えるため、上空を飛ばずに地面を滑るように飛ぼうと思う」
「滑るように飛ぶ?」
「うん、新風力車の車輪を外して、車の底面全体にソリのような物を付ける。そして、ソリの周囲に上級風魔法を纏わせて地面すれすれを飛ぶ」
「なるほど、名案ですねお兄様!」
リゼが弾けるような笑顔で僕を見つめている。
「でしょ!?」
「クリス君、私もその考えに賛成だけど、まだ問題が残っているのだわ」
「あー、障害物や飛来物への対処だよね?」
「ええ」
「大丈夫だよエル。新風力車の前面にも上級風魔法を纏わせて、障害物や飛来物は全て粉砕する予定だ。前面以外の防御は、リゼの結界に任せたいと思う」
「なるほど、良い案なのだわ」
「でしょ? じゃあ僕は、作業部屋で新風力車の改造をしてくるから、皆は好きに過ごしてね。あ、絶対外には出ないように」
皆が頷いたのを確認して、僕は作業部屋へ移動した。
そして、夕方になる前に予定通り新風力車の改造を済ませた僕は、久しぶりに社交ダンスの練習をする。
今日頑張った自分へのご褒美だ。
「お兄様、一緒に踊りたいです」
「うん、僕もだよリゼ」
二人で踊りだすと、リゼが楽しそうに僕の動きについてくる。
エルに教わって、僕もリゼもかなり上達した。
「クリス君、どうしたの? 突然社交ダンスの練習なんて」
「へ? ああ、最近冒険者の活動ばかりで、勉強する時間が無かったなと思ってね」
「確かに私も最近、家庭教師の仕事ができていないと、感じていたのだわ」
なんとかエルも納得してくれたようで良かった。
そして、今日もエルと踊っていると、Hカップが僕の胸に『ふにゅふにゅ』と定期的に当たる。
素晴らしく極上な感触!
これで明日も頑張れそうだ……ご馳走様でした。
「旦那様、アタシとも踊って欲しい」
「それは構わないけど、クラウは男性パートしか踊れないのでは?」
貴族学校でファンクラブまであったクラウは、女子生徒にばかりダンスを申し込まれて、男性パートのみ踊ってきた。
なので僕に出会うまで、女性パートを踊る機会がなかったらしい。
「ぐぬぬぬ、旦那様の言う通りアタシは男性パートしか踊れない……あ、旦那様が女性パートを踊れば良いのでは!?」
名案を思い付いたとばかり、クラウがドヤ顔で僕を見ている。
「なんでそうなるのさ! まったくもう、エルに女性パートを教えてもらいなよ。踊れるようになったら、いつでも付き合うからさ」
「本当!? 旦那様、優しいから好き」
クラウがエルに女性パートを習いに行った。
「クリスっちー、自分も踊ってみたいっす」
「あれ? カルラは社交ダンスを習っていたの?」
「一応宮廷料理長の娘っすからね、最低限の踊りは習ったっすよ」
カルラと踊ってみたが、結構上手だ。
そして、Gカップを堪能する……ご馳走様でした!
こうして美少女たちとの社交ダンスを満喫した僕は、気分転換もできた。
明日からの砂嵐突入作戦に頑張れそうである。
☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆
翌日、朝食を済ませた僕たちは、改造した新風力車に乗り込んだ。
「クリスっち、昨日考えて今日完成してるって、やっぱり魔法は凄いっすね」
「だよね、僕もそう思う。けどカルラの料理だって、出来ない僕からしたら、まるで魔法のようだけどね」
「本当っすか!? 自分の料理適性がSになったら、もっと驚くような美味しい料理を作るっすよ」
カルラが僕を見つめて、笑みをこぼしている。
今日もサイドテールにした茶髪が、とても似合っていて可愛らしい。
「よし、出発するから皆、所定の位置についてね」
「「「「了解!」」」」
女性陣の声が奇麗にハモった。
「まずは砂嵐が発生している場所の近くまで上空を飛行して、着陸したら地上ギリギリを滑るように飛び、砂嵐の中に突入するよ」
僕が皆を見ると、全員が引き締まった表情で頷いている。
そして前方に砂嵐を発見したので、近くまで飛行して着陸すると、地面を滑るように飛びながら進む。
「皆、砂嵐に突入するよ。衝撃に備えて! リゼは新風力車の前面と底面以外の周囲に、結界を二重に張って」
「了解です、お兄様。新風力車の上面、両側面、後面に結界を二重に張りました」
一瞬の静寂が訪れ、車内に緊張が走る。
数秒後、砂嵐の中に突入すると同時に、車内が激しく揺れた。
前方の窓に飛来物が激突しているが、纏わせている上級風魔法がその全てを粉砕している。
しばらくすると、車体の揺れにも慣れてきた。
「リゼ、結界は大丈夫?」
「うう、巨大蜂のときと同じで、外側は持たないかもしれません」
リゼが珍しく弱気な表情を見せる。
もしかすると、巨大蜂のときよりも負担が大きいのかもしれない。
「リゼ、大変かもしれないけど巨大蜂のときと同じように、結界を二重に維持できるかな?」
「大丈夫です、お兄様」
「視界が悪くて速度を上げられない。辛かったら早めに声をかけてね」
リゼがコクリと頷く。
砂嵐の中は、予想以上に視界が悪い。
前方の10メートル以上先は、砂煙で何も見えない状況だ。
僕は視界が悪い中、前方に意識を集中させて慎重に進む。
そして、リゼの外側の結界が何度か破られた後、しばらく進むと、急に前面の視界がクリアになる。
そこは、穏やかな晴天だった。
ついに、僕たちは砂嵐を突破したようだ。
皆でハイタッチをして、喜びを分かち合う。
僕は、リゼの近くに歩み寄ると、抱きかかえてお姫様抱っこをした。
「ふええ、お兄様!?」
「お疲れ様。リゼの大活躍で無事に砂嵐を突破することができた。ありがとね、少し休んでいて」
僕は、リゼをソファーにそっと寝かせた。
「カルラ、冷たいフルーツジュースをリゼにお願い」
「かしこまりっす!」
「このままオアシスの探索をするので、エルは右側の小窓を、クラウは左側の小窓を見てもらえるかな」
「承知したのだわ」
「承知した」
エルとクラウが、微笑みながら返事をしてくれる。
しばらく進むと、何となくだが景色の雰囲気が変わったような気がした。
「旦那様、見つけたぞ!」
「クラウ、また巨大サソリとかじゃないよね?」
「違うって! 何か家みたいなものが沢山あるのだ」
僕がクラウに近づいて、左側の小窓から外を見ると、遠くに小さな村のような集落があった。
もしかして、あれが大聖女リーゼロッテの滞在したオアシスだろうか。
僕は、期待に胸を膨らませるのだった。




