第66話 舟を漕ぐ美少女
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昨夜の巨大サソリの夕食会から一夜明けて、僕たちは朝食後のフルーツジュースを満喫している。
「猛暑の砂漠で、冷えたフルーツジュースを飲めるなんて、贅沢ですよね」
リゼが幸せそうな笑顔で、僕の方をみている。
「そうっすね。まあ、これも収納ボックスのお陰っすけど。新鮮な果物がないと作れないっすから」
カルラに言われて、僕も収納ボックスの有用さを改めて実感する。
インフィニティのメンバーが大好きな焼肉も、生肉の鮮度が落ちないからであり、収納ボックスが大活躍だ。
転生前に女神パラスから、何か一つプレゼントをもらう際、収納ボックスを選択した自分を褒めてあげたい。
しかも、こんなに高性能で大容量!
「クリス君、今日の予定は、どうするのかしら?」
「アタシは、昨日と同じで巨大サソリの討伐が良いと思う」
エルの質問にクラウが勝手に答えているが、昨日の目標は、巨大サソリの討伐ではなくオアシスを見つけることだったはずだ。
「巨大サソリの肉は、収納ボックスにまだ沢山残っているから、今日は見つけても無視して、オアシスの探索に集中したいと思う」
クラウも納得したのか、全員が頷いてくれた。
僕たちは準備を整えると、新風力車に乗り込み、デス砂漠を懸命に調査する。
女性陣も協力してくれて、前方の運転席を僕とリゼ、左側の小窓をクラウ、右側の小窓をエル、後方の小窓をカルラが担当したが、手掛かりは掴めていない。
何もない砂漠が永遠に続く景色、退屈になると人は眠くなるものだ。
昼前になると僕の左隣で、リゼがこっくりこっくりと舟を漕いでいる。
いつもしっかり者のリゼが居眠りをするなんて、超レアな光景だ。
それにしても超絶美少女は、居眠りした姿も超絶可愛いのだな。
こうして眺めているだけで、凄く癒される。
でも、このまま放っておくと、運転席前方の窓にヘディングをしてしまう。
僕は、そっとリゼを抱き寄せる。
「ムニャ……お兄様……」
寝言をつぶやきながら微笑んでいるので、楽しい夢を見ているようだ。
僕は、他の女性陣も確認してみる。
エルは、最初に座ったままの姿勢で、上品に舟を漕いでいた。
居眠りしていても絵になるって凄いな。
クラウは、丁度左側の小窓にヘディングをかましたところだ。
「敵襲か!?」
寝ぼけながらも必死に、キョロキョロと周囲を確認している。
スゴイ音がしたけど、大丈夫だろうか?
カルラは、大きな動作で舟を漕いでおり、まさに今椅子から転げ落ちたところだ。
「あいたたた……ふえ、何すか? 何があったんすか?」
寝ぼけながら、ゆっくりとした動きで周囲を見ている。
うーん、女性陣は全滅か……仕方ない、昼食を食べてからまた仕切り直しかな。
「皆、少し早いけど昼食にしよう」
僕たちは、皆でカルラを手伝い早めの昼食を取った。
僕がリクエストしたのは、ピリ辛パスタである。
前世のペペロンチーノみたいな感じだが、ニンニクは入っていない。
「辛いけど美味しいのだわ」
「目が覚めるような、ピリ辛味だ」
エルとクラウにも好評である。
リゼだけは少し物足りなそうに、激辛香辛料を追加していた。
危険を察知した僕は、さり気なくリゼから距離を取る。
だって、『あーん』とかされたら断れないからね。
食後にアイスティーを飲みながら、皆で午後の作戦を考えた。
「お兄様、途中で寝てしまって、すいませんでした」
「リゼだけじゃないのよ、私も眠ってしまったのだわ」
「オデコが痛い……」
「自分も体中が痛いっす」
各々が午前中の反省を述べている。
2名負傷したようだが……
「リゼ、クラウとカルラにヒールをかけてくれるかな」
「はい!」
僕が収納ボックスから魔法の杖を渡すと、リゼがクラウとカルラの前に移動する。いつものようにキメポーズを披露して、二人をヒールで癒すと満足そうに破顔した。
「何か眠気対策を、考えないといけないね」
皆が真剣に考えているようだ。
一瞬の静寂が車内を支配する。
「はい! 私の激辛パスタは、どうでしょうか?」
リゼが元気良く右手を挙げて、笑顔で提案した。
うーん、眠気は覚めるかもしれないけど、気を失う者が出るかもね。
「アタシは構わないが、満腹になると眠くなるような気がする」
「あうう、確かにクラウの言う通りかもしれませんね」
「私からは、交代制を提案するのだわ」
さすがエル、良い案だ。
「30分くらいすると、眠くなってくるのだわ」
「そうなんすよねー、自分もエルと同じっす」
ふむ、30分ごとに交代で探すことにしようかな。
「では、前方は僕だけで探して、左側の小窓をリゼとクラウ、右側の小窓をエルとカルラで、30分ごとに交替してね」
皆が頷いたので、午後のフォーメーションは、これで行こうと思う。
僕も疲れたり眠くなるといけないので、1時間くらい探すと地上に着陸して、10分ぐらいの休憩を取るようにした。
こうして、必死に薄暗くなるまで探したが、何の手掛かりも得られない。
僕が、ため息をついていると、遠くに砂煙が見える。
そして、それがどんどん近づいてくるのだ。
「皆、砂嵐かもしれない!」
僕は急いで新風力車を、地形の平らな場所へ着陸させた。
そして魔法で平家を作ったところで、砂嵐に飲み込まれる。
「皆、早く家の中に入って!」
女性陣が全員、家の中に避難している間に僕は、平家の周囲に直方体の外壁を作った。
そして光魔法で明るくしてから、新風力車を収納ボックスにしまい、僕も平家に入る。
「いやー、ひどい目にあったね」
僕が女性陣を確認すると、皆が砂まみれになっていた。
顔も手足も砂がびっしりと付いていて、四人の美少女が真っ黒である。
「プッ、アハハハ!」
女性陣を見て、思わず笑ってしまうと、皆も僕を見て笑いだした。
「お兄様、真っ黒クロタンみたいですよ」
リゼの一言で、皆が僕を見ながら爆笑している。
ちなみに真っ黒クロタンとは、ファルケ帝国の児童用絵本に出てくる、真っ黒な色をした『ゆるキャラ』の名前だ。
まあ、僕の方が外にいる時間が長かったし、丁度良い具合に汗をかいているから、砂が付きやすかったかも。
自分の手足を確認すると、女性陣の倍以上の砂が、へばりついていたのだった。




