第61話 姉妹
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エルの兄に、どちらが妹と仲が良いか対決で、僕は勝利した。
そして膝から崩れ落ちたベルノルトさんに、手を貸して立ち上がらせると、種明かしをする。
「ベルノルト殿、妹と一緒にお風呂に入るといっても、水着は着用していますよ」
エルの兄が驚いて僕を見た。
「その手があったのですね! エルネスタ、水着を着用して一緒にお風呂に入ろう!」
「嫌です」
間髪を容れず、エルが拒否する。
そして再びエルの兄が、膝から崩れ落ちた。
「ベル兄様、そんなに落ち込まないでよ。水着を着用したなら、一緒にプールに入れば良いと思うのだわ」
「ふむ、確かにその通りだな」
エルの兄が、自力で立ち上がる。
まあ、エルが僕と一緒に水着を着てお風呂に入るのは、前世のシャワーみたいに僕の掌からお湯が出るからだし。
シャワー魔法が使えないエルの兄が、一緒にお風呂に入るのを断られるのも仕方ない気がする。
その後、ケーキを食べ終えた僕たちは、エルの部屋へ移動した。
「こ、これは……凄く可愛らしくて素敵です!」
リゼがエルの部屋を見て驚嘆している。
どれどれ……あ~確かにこれは超絶可愛らしい部屋だ。
ピンクを基調にした装飾を、ふんだんに使ったファンシーな感じである。
まるで前世の中高生女子に支持されていた、可愛い服や小物を売っている店内のようだ。
「まあ! リゼには、この良さがわかるのね!」
「ええ、私もこのような部屋が欲しいです!」
エルがリゼを自分の妹のように抱きしめて、頭を撫でている。
「でも今の私には、もう似合わない部屋なのだわ。この部屋は、私が12歳の頃に使っていたものだし」
そうか、貴族学校での3年間は、帝都の貴族寮で暮らしていたはず。
この部屋は、エルが12歳のときに帝都へ引っ越した瞬間から、時間が止まっているのだな。
「そうそう、リゼを私の部屋に呼んだのは、服を見てもらおうと思ったからなのだわ」
「服を?」
「ええ、私が今のリゼくらいのときに着ていた服が沢山あるのだけど、私もクラウディアと同じで、妹がいないからあげる人がいないのよ」
エルがクローゼットを開けると、パステルカラーを基調にしたワンピースが、ぎっしり詰まっていた。
「リゼが着てくれたら、とても嬉しいのだわ」
「ありがとう、エル」
リゼが微笑むと、エルはホッとしたように笑みを浮かべる。
「やっぱり私も、妹が欲しかったのだわ」
「私もエルみたいな姉がいたら良いなって、最近思うの」
たまらずエルが、再びリゼをギュッと抱きしめた。
「やーん、なんて可愛いのかしら! クリス君、リゼを私の妹にしても良いかしら!?」
エルが瞳にハートを宿して、僕に懇願している。
エルのいう妹とは、スール的なアレだろうか?
「エル、そんなにリゼを妹にしたいなら、アタシと一緒に旦那様と結婚すれば良いだろ。そうすれば、自動的にリゼが義妹になる」
「クラウディア、あなた天才ね!」
クラウがこんな画期的な案を思いついたことに驚いたが、それに乗っかろうとしているエルにもっと驚く。
僕のことを弟としか見ていないだろうに、リゼを妹にするためなら僕との結婚もアリなのだろうか?
「あー、でも私は年上との恋愛結婚に憧れているのよね。クリス君のことは、大好きなのだけど」
なるほど、エルが僕を男として見ていないのは、年上の男と恋愛したいという思いが強いからなのか。
ふむ、僕が年上の男のように頼りがいのあるところを、認めさせれば良いのでは?
「エル、お兄様は年上の男性のように頼れると思うけど」
うう、リゼが嬉しいことを言ってくれる。
「確かにそうね。クリス君て12歳とは思えないような、考え方や振る舞いをするものね」
あー、この体は12歳だけど、頭の中は前世の29年と足すと……いや、オッサンくさくなるのでやめよう。
僕は、大人の考え方ができる12歳の少年ということで。
「殿下、もうすぐ夕食の準備が整いますので、時間になりましたらご案内いたします」
エルの兄が気を利かせて、夕食を振舞ってくれるらしい。
カルラも郷土料理を楽しみにしているようなので、遠慮なくご馳走になろうと思う。
「お気遣いありがとうございます。では、お言葉に甘えさせていただきますね」
「はい、この地方特有の料理も用意させましたので、お気に召すと良いのですが」
「それは楽しみです」
この会話を聞いて、カルラが目を輝かせている。
僕は、リゼが選んだパステルカラーのワンピースを収納ボックスに入れて、食堂へと移動した。
☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆
ご馳走になった夕食は素晴らしかった。
リートベルク侯爵領は、山間部にあり海に面していない。
料理の多くは山の幸が中心で、帝都でも見たことのない料理がいくつかあった。
興味を持ったカルラが、シェフに熱心に質問していたようだ。
現在はティールームに移動して、食後の紅茶を頂いている。
「ベルノルト殿、北方のトリック独立国について、聞きたいのですが」
「はい、殿下にでしたら、私が知る全てのことをお話いたします」
「助かります。デス砂漠のことを教えて欲しいのですが」
エルの兄が驚愕して僕を見ている。
「殿下、まさかとは思いますが、デス砂漠を通過するつもりでは、ないですよね?」
ベルノルトさんが、顔を引きつらせながら聞いてきた。
「通過はしないというか……」
エルの兄が安心したのか、ほっと胸をなでおろしているようだ。
「デス砂漠にあるオアシスを、探そうと思ってね」
「ブフッ」
ベルノルトさんが驚いて紅茶を噴き出してしまう。
「殿下、デス砂漠を甘く見てはいけません。あそこは誰も行きたがらない、不毛な場所です」
「そうなの?」
「はい、砂嵐が頻繁に起こり、巨大サソリや巨大蟻地獄などの魔物がウヨウヨしていますよ」
ふむ、相当にヤバイところらしい。
でも、メーベルト劇場で写させてもらった5冊の本に、記述があった場所なのだ。
大昔、大聖女リーゼロッテが砂漠の緑化に挑み、デス砂漠のオアシスに滞在したことが記されていた。
丁度これから通る所だし、気軽な気持ちで立ち寄ろうと考えていたのだが。
うーむ、どうしたものか……僕は頭をフル回転させて、策を練るのだった。




