第60話 兄妹仲
たくさんある作品の中から
見つけてくれて、ありがとうございます♪
クラウの実家、オルレアン伯爵家の屋敷に別れを告げた僕たちは、シャークの町郊外に複合魔法で平家を作り一泊した。
そして翌朝、朝食を済ませた後リビングで、紅茶を飲みながら皆で話し合いをしている。
「お兄様、いよいよ帝国を出るのですか?」
「うーん、すぐ近くだし帝国を出る前に、エルの実家にも寄って行こうか」
「私は嬉しいけど、皆はそれで良いのかしら?」
僕の提案にエルが一瞬喜ぶが、皆の意見を聞きたいようだ。
「エルの実家ですか、私気になります!」
「アタシは構わないぞ。どうせ隣の領地だし」
「郷土料理に興味深々っすね」
リゼ、クラウ、カルラの順に各々意見を述べた。
エルの実家リートベルク侯爵領は、オルレアン伯爵領の西隣にある。
そして三つの外国との国境を持つ、帝国の重要拠点でもあるのだ。
西にブレイブ王国、北西にグロリア公国、北にトリック独立国がある。
「反対意見もないようだし、エルの実家に寄ってから、北に隣接するトリック独立国を目指そうと思う」
僕たちは風力車で、リートベルク侯爵領にあるロビンの町を目指した。
帝都から北上するに従って山林が増え、障害物が多くなったので、今は10メートルくらい上空を飛ぶようにしている。
今までの移動中に測定したデータから、1時間は問題なく連続で運転できると判断して、休憩を挟みながら移動することにした。
結局、一回の休憩を取っただけでロビンの町に到着する。
「エル、一旦リートベルク侯爵家の屋敷に行くから、昼食後に訪問すると伝えてもらえるかな?」
「承知したのだわ」
僕はエルに道案内を頼み、リートベルク侯爵家の屋敷に到着した。
「ちょっと説明してくるのだわ」
エルが風力車を降りて門番に話しかけると、すぐに中へ通されて、しばらくすると戻ってくる。
「エル、おかえり」
「ただいま、訪問の件間違いなく伝えたのだわ」
僕は頷くと、風力車でロビンの町へ戻った。
そこで大聖女関連の情報を探したが、手掛かりは得られなかったので、レストランで昼食を取る。
その後、再びリートベルク侯爵家の屋敷へ移動して、門番に案内され屋敷の前に到着すると、師匠にそっくりなイケメンが歓迎してくれた。
「クリストハルト殿下、リゼット殿下、ようこそお越しくださいました。私は、リートベルク侯爵家長男ベルノルト・フォン・リートベルクと申します」
エルの兄が片膝をついて丁寧に挨拶してくれた。
金髪碧眼の長髪、身長180センチメートルくらいで細身のイケメンである。
師匠の息子さんか……僕は早速ステータスを確認してみた。
【ベルノルト・フォン・リートベルク】
ファルケ帝国 リートベルク侯爵家長男 17歳 男
知力 92/94
武力 68/71
魅力 90/90
剣術 B/B
槍術 F/C
弓術 F/C
馬術 B/B
火魔法 A/S
土魔法 A/A
話術 A/A
算術 A/A
芸術 A/A
料理 F/D
おお、師匠によく似たステータスだ。
将来が超有望な人材である。
「初めまして、ベルノルト殿。ファルケ帝国第三皇子、クリストハルト・ブレイズ・ファルケです。突然の訪問、もうし訳なく思います」
「いえいえ、大歓迎いたします、殿下」
「それと、こちらは妹のリゼットです」
「初めまして、ファルケ帝国第一皇女、リゼット・ブレイズ・ファルケです」
リゼが微笑みながら挨拶をした。
「おお! なんと可憐な」
エルの兄が、超絶美少女なリゼを見て驚嘆している。
「リゼット殿下は、可愛い美少女代表ですね。私の妹エルネスタは、奇麗な美少女代表ですが」
こんな偶然もあるのだな。エルの兄は、僕と同じ表現を使ってリゼとエルを形容した。
「ベルノルト殿、実は僕も全く同じことを考えていてね。僕の妹は、可愛い美少女代表。エルネスタ嬢は、奇麗な美少女代表であると」
「おお、殿下も全く同じことを考えていたのですね」
僕とエルの兄は、お互いに大きく頷くと、がっちりと握手を交わした。
「ベルノルト殿とは、気が合いそうだ」
「私も同感です、殿下」
意気投合した僕とエルの兄を先頭に、皆がティールームへと案内される。
そして、円卓に皆が座ると紅茶と色々な種類のケーキが卓上に並ぶ。
インフィニティの女性陣にも大好評である。
リゼは笑顔で上品に食べつつも、ペースが落ちることは全くないようだ。
給仕のメイドが前世の『わんこそば』のように懸命に補充している。
「お兄様も一口食べてみてください。美味しいですよ、あーん」
リゼが微笑みながら僕に、フォークでさしたケーキを口元に運んでくれた。
「ありがとう、リゼ」
僕がリゼに『あーん』をしてもらっていると、僕の右隣に座っているエルの兄が、羨ましそうに見つめている。
「エルネスタ、私もあーんをして欲しいのだけど」
エルの兄が右隣に座っているエルに、あーんを懇願するとエルが苦笑した。
「もう、良い大人が恥ずかしくないのですか?」
ちなみにこの世界では、15歳が成人となる。
飲酒が許され、本人の意思で結婚が可能となるのだ。
「いや、殿下たちに負けてられないと思ってね。私たちも、兄妹で仲良しだったじゃないか」
「それはそうですけど……もう、仕方ないですね。はい、あーん」
「おお! ありがとうエルネスタ」
エルの兄が満面の笑みで、ケーキを食べている。
「殿下、私とエルネスタも、殿下たちに負けないくらい兄妹仲が良いのです」
エルの兄が胸を張り宣言した。
ふむ、これは僕も負けていられないのでは?
僕は椅子から立ち上がると、リゼを見つめた。
「さあ、リゼおいで」
僕が大きく両腕を広げると、リゼが僕の胸に飛び込んでくる。
僕がエルの兄に視線を送ると、あちらも椅子から立ち上がった。
「さあ、エルネスタおいで」
するとエルは、ため息を吐きながら立ち上がる。
「もう、何をムキになっているの、ベル兄様。まあ、このくらいは、してあげるけれど」
エルが兄に軽く抱きつく。
「どうですか殿下、私たちも負けていません」
エルの兄が自信満々に、僕を見て微笑んでいる。
ふむ、これは僕も本気を出さないといけないな。
「僕とリゼは、毎日一緒に寝ているよ」
「私とエルネスタも殿下たちの年の頃は、一緒に寝ていることもありました」
僕が、本当かどうか確かめるためにエルに視線を送ると、エルがうんうんと頷いた。
僕とリゼが一番仲の良い兄妹だと自負していたのだが、帝国内にこんな強敵が潜んでいたとは驚きである。
こうなったら仕方ない、最終手段を使うか。
「僕とリゼは、毎日一緒にお風呂に入っているよ」
「なんですと……そんな羨ましい……」
エルの兄が膝から崩れ落ちた。
「殿下、私の負けです」
そしてエルの兄が、潔く敗北を宣言した。
あ、お風呂といっても、水着をつけていることを伝え忘れていたけど、まあいいか。
こうして僕は、どちらが妹と仲が良いか対決に、勝利したのだった。




