第59話 クラウディアの贈り物
たくさんある作品の中から
見つけてくれて、ありがとうございます♪
今回から通常どおり、クリストハルトの視点で物語が進行します。
【クリストハルト視点】
モーリッツさんは、知力90話術A算術Aを目指して頑張ると決めたようだ。
もう落ち込んだ様子はなく、しっかりと前を見据えており、引き締まった表情である。
クラウの次兄が元気になって良かった。
「殿下、妹に何でもありの決闘形式で勝ったそうですね。父からの手紙に書いてありましたよ」
「あー、色々大変だったけど何とかね」
「是非、私とも決闘形式で勝負してください! お願いいたします」
「へ? 今から?」
「一度だけで良いので、お願いいたします」
モーリッツさんに懇願されて、僕は一度だけ決闘形式で勝負をした。
クラウのときと同じ戦法で戦った僕が、あっさりと同じ勝ち方をする。
「う、参りました。突然、殿下が消えましたが、魔法を使ったのですか?」
「うん、風魔法を使って自分の体を運ぶのだけど、やり過ぎると反動で体中激痛になるから、注意が必要でね」
「なるほど、殿下もリスクを負いながら戦っていたのですね」
「まあね、今日は上手に加減ができたけど、クラウディアのときは試合後に、激痛で地面を転げまわったからね」
「命がけの魔法ですね」
「そうなんだよ」
僕が笑うと、クラウの次兄もつられて笑う。
「殿下、よろしければ夕食を召し上がってください。母にお誘いするよう、申し付けられておりますので」
「じゃあ、お言葉に甘えさせてもらおうかな」
「はい!」
僕とモーリッツさんは、屋敷の中に移動した。
「お兄様! どこに行っていたのですか? 屋敷中探しても見つからないので、心配しました」
「あ~、ゴメンねリゼ。ちょっと庭でモーリッツさんと話をしていたから」
「それなら仕方ないですね。あ、見てくださいこれ! クラウが昔着ていた服をもらいました」
リゼがエメラルドグリーンのワンピースを着ている。
スカートの丈が膝上で、リゼの生足がとてもまぶしい。
「リゼ、すごく似合っているよ」
「本当ですか!? クラウ、お兄様に褒めてもらいました」
リゼが朗らかに笑う。
「だから似合うって言っただろ。しかし、リゼは何を着せても似合うから不思議だな」
クラウが驚いているが、僕にとっては常識だ。
「クラウ、本当にもらっていいのかな?」
「ああ、アタシには妹もいないし、リゼが着てくれるなら嬉しいさ。それに、突然城を飛び出したから、着替えもあまりないのだろ?」
「そうなんだよ。途中の町で冒険者用の服は買ったけど、普段着用のワンピースは不足していてね。本当に助かるよ、ありがとうクラウ」
クラウが照れくさそうに微笑んでいる。
「お兄様、見てください。このマリンブルーのワンピースも素敵なのですよ」
「本当だ、リゼに似合いそうだね」
他にも沢山の服や小物、靴などをもらったようだ。
リゼが満面の笑みを浮かべている。
「殿下、夕食の準備が整いました」
クラウの次兄が呼びに来てくれた。
僕たちは食堂で夕食をご馳走になる。
オルレアン伯爵領の郷土料理や、帝都で食べたことのないスープ、パンなどカルラが興味深そうにしていた。
僕たちは、大満足で夕食を終えて、今はリビングに移動して紅茶をいただいている。
「クリストハルト殿下、娘との勝負に勝ったそうですね。主人からの手紙を読んで、私は驚いてしまって」
「ええ、なんとか」
伯爵夫人に僕は苦笑しながら答えた。
「殿下もご存じの通り、娘は自分より強い男と結婚するのが夢なのです。先日、帝都で第二近衛騎士隊長に勝ってしまい、帝国内に父と長兄以外で、自分より強い男がいないと絶望してしまいまして」
「あはは……」
僕は、伯爵夫人になんと返事をしたら良いかわからず、苦笑いで誤魔化した。
「ついには、国外へ武者修行の旅に出て、自分よりも強い男を探すことも考えていたようでして」
伯爵夫人も僕につられる様に苦笑している。
しかし、クラウが国外で戦闘狂モードになったら、どれだけの犠牲が出るか想像もつかないな。
というか、外交問題になりそうで怖いのだけど……
「そんな中、殿下が娘に勝ってくださり、夫も私も安心いたしました。どうぞ、娘をよろしくお願いいたします」
ん? 何か話が勝手に進んでないか? まだ結婚すると決めたわけでは、ないのだが……
「殿下、アタシと結婚してくれたら絶対に退屈させない。アタシはやればできる子、必ず役に立ってみせます」
クラウが珍しく真剣な表情で僕を見ている。
うーん、確かに退屈はしないというか、退屈にすらさせてもらえないというか……散々やらかしたよね!
巨大蜂に巨大蛙と色々あった。
ああ、ハチミツの件もだ。
まあ、リゼの護衛としては優秀だけど……それとメーベルト劇場では、大活躍で大人気だったけどね。
「えーと、帝都を出発するときにも言ったけど、僕たちはまだ出会ったばかりだ。これからお互いのことをもっと知ってからで、良いと思うよ」
「確かに殿下の言う通りですわね。クラウディア、これからの旅であなたの良いところを、殿下に沢山理解してもらうのですよ」
「はい、母上!」
ふう、どうにか納得してくれたみたいだ。
この後、泊っていくように勧められたが、丁重にお断りする。
警備の問題等、オルレアン伯爵家に大変な思いをさせてしまう。
僕は別れ際に、伯爵夫人とモーリッツさんのステータスを、紙に書き写した物を渡すと、二人とも凄く喜んでくれた。
こうして僕たちは、クラウの実家にお別れをして、旅に戻るのであった。




