第57話 オルレアン伯爵領
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巨大蛙の討伐から8日目の朝、クラウがようやく呪いから解き放たれて復活した。
皆で喜び歓迎したが、エルが一番嬉しそうにしている。
そして、久しぶりに5人全員で仲良く朝食をとった。
今は、リビングのソファーに座って、皆でくつろいでいる。
「では、これより今後の活動について、話し合いたいと思います」
皆が頷いてくれたので、そのまま話を続ける。
「5月に帝都を出発して、すでに3か月以上が経過し現在8月になりました。気温に変化は無いけれど、皆の体調は大丈夫かな?」
帝都近郊は、4月から9月にかけてが前世の夏みたいなもので、10月から3月にかけても寒くはならない。
前世の沖縄と似たような気候だ。
「問題ないようなら、依頼も受けたばかりだし、一気に北を目指そうと思います」
「お兄様、帝国を出るのですか?」
リゼが僕をジッと見ている。
今日の髪型は、カルラと同じサイドテールにしたみたい。
超絶美少女は、どんな髪型にしても似合うから不思議だ。
「いずれはね。でもその前に、町を通過しながら大聖女の情報を探したいと思う。冒険者ギルドには寄らずに、国境にあるオルレアン伯爵領を目指したい」
「ん? アタシの実家を目指すのか?」
「ああ、さすがに黙って通過するわけにもいかないし。道案内を頼むよ、クラウ」
「承知した」
剣聖様のオルレアン伯爵領は、帝国の最北、他国との国境付近にある。
他国からの侵略に備え帝国を守る、辺境伯のような役割を任されている。
当主である剣聖様が帝都に暮らしているので、留守を夫人と次男が務めているそうだ。
僕たちは出立の準備を整えると、平家を土に戻してマーメイドの町を探索したが、目ぼしい情報は得られなかった。
朝の打ち合わせ通り、僕たちはどんどん北上していく。
次の町へ到着すれば大聖女の情報を探り、ダメなら次の町を目指す。
それを繰り返すうちに、四つの子爵領と六つの男爵領を通過し、翌日の夕方前にオルレアン伯爵領へ入った。
「結局二日間、何の手掛かりも得られなかったね」
「仕方ないのだわ。子爵領と男爵領では、町の規模も小さいし」
「帝都近郊に比べると人通りも少なくて、寂しい感じでしたね」
僕、エル、リゼの順に二日間の感想を述べた。
「シアターの町で5冊の大聖女関連の本を発見したけど、あれはメーベルト家に伝わる書物で、街中の書店で見つけたものじゃないものね」
「そうですね、お兄様。あの本を除けば、帝国内の町で発見出来た情報は、無いのですから」
「つまり、帝国内に大聖女関連の情報は、ほぼ無いと考えるのが妥当なのだわ」
僕の意見にリゼとエルが答えた。
「よし、今日のうちにクラウの実家まで行こう」
「え? これからか!?」
クラウが驚いて僕を見る。
「ああ、明日の午後に訪問することを、クラウが直接伝えてきて欲しい。いきなり皆で押しかけるわけにも、いかないからさ」
「承知した」
僕は、クラウに道案内をしてもらい、オルレアン伯爵家の本邸へ風力車で移動した。
到着するなりクラウが風力車から降りる。
「じゃあ、ちょっと行ってくる」
「うん、よろしくね。ここで待ってるから」
クラウが門番に話しかけると、最初はビックリしていたが、すぐに中に通されたようだ。
そして、しばらくするとクラウが戻ってきた。
「クリス、きちんと伝えてきたぞ」
「ありがとう、クラウ。じゃあ、町の郊外へ移動して、いつものように平家を作ろうか」
僕たちは、シャークの町郊外に複合魔法で平家を作り一泊する。
翌日の午前中は、シャークの町を探索して大聖女の情報を探したが、空振りに終わった。
そして、レストランで昼食をとった後、オルレアン伯爵家の本邸を訪問する。
門番に案内されて屋敷の前まで来ると、夫人と次男らしき人が出迎えてくれた。
「ようこそ、お越しくださいました。クリストハルト殿下、リゼット殿下」
気品溢れる夫人が、奇麗な仕草で挨拶をしてくれた。
「私は、オルレアン伯爵であるヴィルフリートの妻で、ロジーネ・フォン・オルレアンと申します」
金髪碧眼のストレートロング、身長が160センチメートルくらいで細身のEカップくらいだろうか。
僕は、クラウの母親を鑑定してみた。
【ロジーネ・フォン・オルレアン】
ファルケ帝国 オルレアン伯爵家夫人 35歳 女
知力 89/91
武力 55/55
魅力 90/90
剣術 F/F
槍術 F/F
弓術 G/F
馬術 D/D
火魔法 A/A
話術 A/A
算術 A/A
芸術 B/A
料理 C/C
知力が高く、優秀な火魔法使い。
クラウは、父親似らしい。
「殿下、こちらは次男のモーリッツでございます」
「オルレアン伯爵家次男、モーリッツ・フォン・オルレアンにございます」
クラウの次兄が背筋をピンと伸ばして、奇麗なお辞儀で挨拶してくれた。
金髪碧眼の短髪、身長170センチメートルくらいで細身のイケメンである。
「初めまして、オルレアン伯爵夫人。それにモーリッツ殿。ファルケ帝国第三皇子、クリストハルト・ブレイズ・ファルケです。突然の訪問、もうし訳なく思います」
「いえいえ、歓迎いたしますわ、殿下」
「それと、こちらは妹のリゼットです」
「初めまして、ファルケ帝国第一皇女、リゼット・ブレイズ・ファルケです」
リゼが微笑みながら挨拶をした。
「あらまあ、なんて可愛らしい!」
クラウの母親は、リゼを気に入ったようだ。
「さあ、中にお入りくださいませ。お茶の準備が、できておりますので」
僕たちは屋敷の中へ移動すると、ティールームに通されて、円卓に各々が座った。
「帝都では、剣聖様とフォルカー隊長に剣術を教わっています」
「まあ、フォルカーは、きちんとお務めを果たしておりますでしょうか?」
伯爵夫人が心配そうに僕を見ている。
やはり母親は、息子が何歳になっても心配なのだろうな。
「はい、いつも丁寧に教えてくれますよ」
「そうですか、少し安心しました」
伯爵夫人が、ほっと胸をなでおろす。
「モーリ兄、その後剣術はどう?」
「それがなクラウディア、Aのままなんだよ。3年間毎朝稽古を欠かしたことは、ないのだが」
クラウが次兄と剣術の話だろうか。
僕が視線をクラウの次兄に向けると、相手も気付いたようだ。
「ああ、殿下の御前で申し訳ありません」
「いえいえ、剣術がどうしたのですか?」
「あー、お恥ずかしい話なのですが、兄も妹も剣術Sなのに、私だけAなのです。しかも3年間ずっと。毎朝稽古は、欠かさずにしているのですが」
クラウの次兄が苦笑している。
しかし、3年間もAのままだと……心配になった僕は、モーリッツさんのステータスを確認してみた。
【モーリッツ・フォン・オルレアン】
ファルケ帝国 オルレアン伯爵家次男 16歳 男
知力 70/90
武力 70/70
魅力 90/90
剣術 A/A
槍術 C/B
弓術 F/C
馬術 C/B
火魔法 A/A
話術 B/A
算術 B/A
芸術 F/A
料理 F/C
ああ、予想通りか……このまま何年稽古を続けても、武力70剣術Aは変わらない。
父親が剣聖で、兄も妹も剣術S。
しかも、この3人が帝国の剣士第1位、第2位、第3位を独占しているのだ。
高い知力に火魔法Aの素質から見るにモーリッツさんは、どちらかと言うと母親似のようである。
いつか自分も剣術をSに……そう願い、毎朝剣を振り続けているのだと思うと、僕は放っておけないと思うのだった。




