第55話 巨大蛙
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僕たちは、マーメイドの冒険者ギルドを出発して、巨大蛙の討伐に向かった。
生息する森まで馬車で2時間くらいかかるらしいが、風力車を使えば10分とかからない。
森の入口で風力車から降りると、僕たちは徒歩で森の中を進む。
「クラウは、どうしてカエルが苦手なの?」
意外だったので、直接本人に聞いてみた。
「あー、子供の頃昼寝をしていたら、口の中にカエルが入り込んだことがあって」
「それは、トラウマになりそうな思い出だね」
「そうなんだ。翌日熱が出て、数日寝込んだからな。それ以来カエルには、近づかないようにしてきた」
クラウが、苦虫を嚙み潰したような顔をしている。
そしてしばらく歩くと、不快な臭いがしてきた。
「近くにいるかもね。皆、警戒して」
皆が頷きながら、鼻をハンカチで覆っている。
どんどん臭いが強くなってきたので、僕はキョロキョロと周りを見渡す。
すると少し先に、ピョンピョンと元気に飛び跳ねる巨大蛙を発見した。
大きさは、巨大牛より一回り小さくて、高さ4メートルくらいある。
「見つけた! 鑑定するから少し待ってね」
僕は自分の体の真横に右手を伸ばし、皆が先に行かないように制止する。
【巨大蛙】
魔物 5歳 オス
知力 30/35
武力 60/65
魅力 45/45
特徴……
「間違いない、巨大蛙だ」
僕は、とりあえず名称だけ確認して、皆に告げた。
「幼少期の恨み、今こそ晴らさん!」
「あっ、クラウちょっと待って。まだ特徴とか見てないから!」
止めたのだが間に合わず、クラウは僕の左側を通過して走り出す。
「もう、しょうがないな。レストリクション!」
仕方なく土魔法で巨大蛙を拘束した。
拘束されて動けなくなった巨大蛙が、ゲコゲコと大きな声で鳴いている。
「もらったー!」
クラウが剣を振りかぶり、止めを刺す準備に入ったようだ。
あれ? 巨大蜂のときと同じ状況じゃないか?
まさか、一匹倒すと大量の巨大蛙が襲ってくるとかないよね……
僕は先ほど見れなかった、特徴の部分を確認する。
【巨大蛙】
魔物 5歳 オス
知力 30/35
武力 60/65
魅力 45/45
特徴……それほど強くないので討伐は難しくないが、とにかくクサイ。体の表面のヌルヌルが臭いの原因である。このヌルヌルを浴びてから10分以内に石鹸、シャンプーなどで洗い落とさないと、一週間くらいクサイ臭いがこびりつく。長期戦は自殺行為である。短期決戦で一気に倒して、すぐ洗い流す。近くに水場がある所で戦うべし。勿論、石鹸とシャンプーは忘れずに持っていくこと。
追記……体当たりを得意とし、強烈な臭気で相手の戦意を喪失させる。最悪の場合、意識を失ったり呼吸不全になり死に至ることもあるので要注意。死ぬ間際に爆散して、超クサイ液体を四方八方へまき散らすので、最後のトドメは遠方から攻撃すること。
やばい、超近距離でクラウが、まさに今剣を振り下ろそうとしている。
「クラウ! 倒しちゃダメ!」
僕のセリフと同時に、風魔法で高く跳躍したクラウの袈裟切りが、巨大蛙に襲い掛かる。
そして頭部を一刀両断すると、巨大蛙は絶命し爆散した。
「うわ! なにこれ!? 超クサイ!」
クラウが全身ヌルヌルになりながら、助けを求めている。
突然のことで、リゼの結界も間に合わず、僕たちも全員がヌルヌルまみれだ。
リゼ、エル、カルラと美少女たちの顔にも、白いヌルヌルが付着して大変なことになっている。
10分以内に全員の洗浄を、完了しなければならない。
「皆、10分以内に石鹸やシャンプーでヌルヌルを落とさないと、一週間くらいクサイままになる! 平家の中に浴場を5個作るから、各自急いで体から洗って!」
僕がその場に複合魔法で平家を作ると、皆がダッシュで入っていく。
各浴場には複数の浴槽を作り、お湯をはってある。
もちろん石鹸やシャンプーも配布した。
収納ボックスから皆の着替えの入った荷物を、それぞれ渡す。
「皆、急いでね!」
僕も石鹸で体を手早く洗い、緊急事態なので、そのまま浴槽に飛び込んだ。
次に、髪をシャンプーで洗い、シャワー魔法で洗い流す。
よし、3分くらいで終わった。
後は女性陣が心配だけど……手伝いが必要な人は、いるだろうか。
僕はサッと着替えると、自分の浴場を出て廊下を見た。
「手が空いたので髪を洗えるよー! 希望する人は、僕に声をかけてねー!」
僕が呼びかけると、体にバスタオルを巻いたリゼが現れる。
いつも水着姿だから、バスタオル一枚というのは新鮮だ。
「お兄様、自分では間に合いそうもないので、助けてください!」
僕は、急いでリゼの浴場へ入り、シャンプーで髪を洗った。
そして、シャワー魔法で洗い流す。
「間に合って良かったね、リゼ」
「はい! ありがとうございます、お兄様」
リゼが弾けるような笑顔を僕に向けている。
ああ、今日のリゼも超絶可愛い。
僕は、思わずリゼを抱きしめそうになるが、今は緊急事態だ。
我慢我慢……僕は、リゼの浴場を出て廊下を見た。
「手が空いたので髪を洗えるよー! 希望する人は、僕に声をかけてねー!」
僕が呼びかけると、体にバスタオルを巻いたカルラが現れる。
少しドキッとしたが、先日の裸エプロンほどではない。
慣れとは、恐ろしいものだ。
「クリスっち、助けて! 間に合わないかもっす!」
僕は、急いでカルラの浴場へ入り、シャンプーで髪を洗った。
そして、シャワー魔法で洗い流す。
「ふー、間に合って良かった」
「マジ感謝っす。ありがとうクリスっち」
カルラが満面の笑みで僕を見つめている。
僕は、カルラの浴場を出て廊下を見た。
「手が空いたので髪を洗えるよー! 希望する人は、僕に声をかけてねー!」
僕が呼びかけると、体にバスタオルを巻いたエルが現れる。
これは、さすがにドッキドキだ。
クラウやカルラと違って、いつも隙のないエルが、タオル一枚巻いただけの姿なのである。
「クリス君! 助けて欲しいのだわ!」
じっくりこの姿を堪能したいが、残り時間があと少ししかない。
僕は、急いでエルの浴場へ入り、シャンプーで髪を洗った。
そして、シャワー魔法で洗い流す。
「ふー、ギリギリ間に合ったね」
「クリス君、ありがとうなのだわ」
エルが美少女スマイルで僕を見つめた。
濡れたバスタオルが体に張り付いて、Hカップが激しく主張している。
僕は、ドキッとして反射的に視線を逸らしてしまった。
「じゃあエル、またあとでね」
僕は、エルの浴場を出て廊下を見る。
するとそこには、クラウが笑顔で立っていた。
「クラウは大丈夫? きちんと洗えたのかな?」
「ああ、時間内に洗えた」
良かった、全員無事なようだ。
ところが、クラウから何かにおう。
いや、におうなんてもんじゃない、超クサイ!
「ちょっ、クラウきちんと洗ったの!?」
「ああ、ちゃんと10分以内に洗った」
「……」
おそらく、至近距離で巨大蛙の爆散を浴びた影響かもしれない。
あの距離だと洗っても落ちないのか。
覚えておこう……。
クラウが大好きなエルでさえ、あまりのニオイに近づこうとしない。
とりあえず僕たちは、冒険者ギルドへ戻り討伐報告書を提出した。
そして、マーメイドの町郊外に複合魔法で平家を作り宿泊する。
しかし、巨大蛙の呪いを受けたクラウが超クサイので、仕方なくもう一つ平家を作り、そこにクラウを隔離したのだった。




