第54話 運命
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打ち上げパーティーの翌日、僕たちは溜まった疲れをとるために、複合魔法で作った平家で休養することに決めた。
「リゼ、コピーした5冊の大聖女関連の本、好きな順番で良いから読んでみてね」
「はい、お兄様。絵本から読んでみますね」
「うん、よろしく。それと、エルも手が空いたときに目を通して欲しい」
「承知したのだわ」
僕とリゼ、エルの3人で5冊の大聖女関連の本を熟読する。
そして、ある程度の新しい情報を得ることができた。
「やはりこの大陸の北方に、大聖女が暮らしていた場所があるのは間違いないね」
「そうですね、お兄様。ただ、本に出てくる地名が複数あるので、定住していたのではなく、各地を転々としていた可能性が高いですね」
「それに複数ある地名も現在には存在しないものもあるから、他の書籍に出てくる情報と、照らし合わせる必要があるのだわ」
僕、リゼ、エルの順に意見を述べた。
「これ以降もこの3人で、大聖女についての情報を分析していきたいので、よろしくね」
「任せてください、お兄様」
「頑張るのだわ」
僕とリゼとエルの3人は、心を一つにして大聖女の謎を解明すると誓い合う。
昨日までの30日間、公演でずっと気持ちが張り詰めていた影響か、精神的な疲労がすごい。
皆がだるそうにしているので、僕は明日も休養日にすることを決めた。
☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆
公演の千秋楽が終わって2日間の休養をとったインフィニティのメンバーは、皆元気を取り戻したようだ。
朝食後、リビングのソファーに座り、紅茶を飲んでリラックスしている。
「お兄様、何か忘れているような気がするのですが」
「ん? 何かあったかな?」
リゼに言われて考えるが、すぐに思いつきそうにない。
「クリス、アタシのことを忘れているんじゃないか? これから剣術の稽古をしよう」
「きっと自分へのご褒美を、買い忘れたとかじゃないっすか? シアターの町まで買い物に行くっす」
クラウとカルラが適当なことを言っているが、これはスルーで良いだろう。
「クリス君!」
「どうしたのエル、そんなに慌てて」
「冒険者ギルドの依頼って、3か月に1回成功させないと降格になったような……」
「あー!」
エルに言われて思い出す。
公演のことで頭がいっぱいになっており、すっかり忘れていた。
残り1か月を切っているはずだ、急がねば。
「皆、シアターの町の冒険者ギルドへ行って、依頼を受けよう!」
僕たちは急いで冒険者用の服装に着替えて、風力車でギルドへ向かった。
☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆
シアターの町の冒険者ギルドへ到着すると、受付カウンターへ直行する。
「魔物討伐依頼を受けたいのですが」
「冒険者カードの提示をお願いします」
僕がカードを見せると、受付嬢が驚愕した。
「この若さでAランクパーティー!?」
しかし、受付嬢はすぐに我に返り、引き出しから書類を出して僕に見せてくる。
「現在ある魔物討伐依頼は、巨大蛙のみです」
あー、シーガルの町でも残っていた依頼だな。
僕は、女性陣の方を見た。
すると全員が仲良く首を横に振って、拒絶している。
「申し訳ないが、またの機会に」
僕が受付カウンターを離れようとすると、受付嬢が僕の腕を掴んで離してくれない。
「ずっと残っていて、困ってるんです。どうか助けると思って」
うーん、このパターンで前回の巨大蜂では、ヒドイ目にあったのだ。
残っているということは、皆が避けているわけで、きっと悲惨なことになる気がする。
僕は、女性陣の安全を第一に考えないといけないのだ。
「ごめんね、パーティーメンバーを守るためにも、今回は遠慮させて欲しい」
僕以外が全員女性であることを理解した受付嬢が、諦めたように僕の腕を離してくれた。
ちなみに、ギルドのガイドブックによると、Aランクパーティーは、Bランク以上の依頼を受けなければならない。
そしてBランク以上の依頼は、ほとんどが魔物討伐である。
Bランク以上の依頼が無いときに限りCランク以下の依頼を受けることができるらしい。
僕たちは、先を急ぐことにして、風力車に乗り次の町を目指す。
「エル、次の町はどこになるのかな?」
「このまま北上すると、エンデルス伯爵領のドルフィンの町なのだわ」
僕は以前買った、冒険者ギルドのガイドブックを確認する。
「じゃあ、ドルフィンの町にしようか。丁度、冒険者ギルドもあるみたいだし」
僕たちは、約2か月滞在したシアターの町に別れを告げて、ドルフィンの町を目指した。
帝都から離れると森が増えてきて、いくら風力車といえども時間がかかるようになってくる。
とにかく障害物が多いのだ。
僕が風力車を連続で動かせる限度時間が分かれば、いずれ空を飛ぶことも考えないといけないかも。
「やっと着いたね」
「大変でしたね、お兄様。今ヒールをかけますね」
リゼにヒールをかけてもらい復活した僕は、今後のことを考える。
すでに昼を過ぎており、これから討伐依頼を受けるには、時間的な余裕がない。
「依頼は明日受けることにして、先にドルフィンの町で大聖女関連の情報を集めよう」
皆が頷いてくれたので、僕たちはドルフィンの町へ入り遅い昼食をとった。
ドルフィンの町は、シーガルやシアターの町と比べると、人が少ないように思える。
僕たちは、不足していた物資を購入しながら、大聖女関連の情報を集めたが、新しい書物などは発見できなかった。
その後僕たちは、ドルフィンの町郊外に複合魔法で平家を作り、一泊する。
☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆
翌日、朝食を済ませた僕たちは、朝一で冒険者ギルドを訪れた。
一直線に受付カウンターへ向かい、受付嬢に冒険者カードを提示する。
「魔物討伐依頼を受けたいのだけど、何があるかな?」
僕の冒険者カードを確認した受付嬢が、目を輝かせながら討伐依頼書をテーブルの上に置いた。
「Aランクパーティー『インフィニティ』の皆様、ようこそお越しくださいました。現在残っている魔物討伐依頼は、巨大蛙のみになります」
それはもう良い笑顔で、受付嬢がハキハキと答える。
「「「「「……」」」」」
僕たちは、全員無言で顔をひきつらせた。
シーガル、シアター、ドルフィンと全ての町で依頼が残る巨大蛙とは、いったい何者なのか逆に興味がわいてくる。
「ちなみに巨大蛙って、どんな魔物なんですか? シーガルやシアターの町でも、これしか残ってなかったけど」
受付嬢が、困ったように僕を見て苦笑している。
「巨大蛙は、一言でいえば『クサイ』です。カエルが巨大化した魔物で、表面がヌルヌルしていて、このヌルヌルが臭いの原因とされています」
僕が女性陣の方を見ると、全員が激しく首を横にブンブン振っている。
うーん、困ったな……僕は女性陣を説得してみることにした。
「えーと」
「クサイのは嫌です」
「ヌルヌルは嫌なのだわ」
「いくらアタシでも、苦手なものはある」
「珍味に興味はあるっすけど、生理的に受け付けないっすね」
リゼ、エル、クラウ、カルラの順に全員が拒否である。
「じゃあここはスキップして、次の町でも同じ状況だったら、諦めて討伐するけど良いかな?」
「うー、仕方ないですね」
「むー、我慢するのだわ」
「旦那様、アタシ頑張ってみる」
「珍味のために覚悟をきめるっす」
女性陣から一応最悪の事態が起きた時の承諾は得られた。
僕たちは、ドルフィンの町をスルーして、北上することに決める。
「エル、次の町はどこかな?」
「北上するならば、リンデマン伯爵領、マーメイドの町なのだわ」
冒険者ギルドのガイドブックで確認すると、マーメイドの町にもギルドがあるようだ。
「了解、マーメイドの町へ移動しよう」
ドルフィンからマーメイドへの移動は、道もよくスムーズだった。
風力車で1時間くらいの道のりで、まだ午前中の早い時間である。
僕たちは、急いでマーメイドの冒険者ギルドへ移動した。
今度こそと、僕は冒険者カードを受付嬢に提示する。
「魔物の討伐依頼は、何がありますか?」
女性陣が祈るように受付嬢を見つめた。
「現在、マーメイドの町にある魔物討伐依頼は、巨大豚と……」
「巨大豚でお願いします!」
頑張って移動して良かった。女性陣が抱き合って喜んでいる。
すると、横からから別の受付嬢がやってきて、僕たちの担当受付嬢に何やら耳打ちをした。
「えー、インフィニティの皆様。大変申し上げにくいのですが、こちらの手違いで、先ほど別の冒険者パーティーが、巨大豚を討伐しました。残っている魔物討伐依頼は、巨大蛙のみとなります」
僕が恐る恐る女性陣の方を見ると、全員が膝をついて絶望している。
こうして僕たちインフィニティは、巨大蛙の討伐依頼に挑戦するのであった。




