第53話 アメリアの贈り物
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千秋楽が終わって、今はメーベルト劇場の事務所で、インフィニティのメンバー、フランクさんとアメリアの7人が集まっている。
「インフィニティのメンバーには、感謝している。劇団の借金も完済できるし、代々受け継いできたこの劇場を手放さずに済んだ。本当にありがとう」
フランクさんとアメリアが深々とお辞儀をしている。
「いえいえ、僕たちも貴重な経験をさせてもらい感謝しています」
公演の30日間アメリアは、舞台下で他の楽器奏者と一緒にバイオリンを演奏していた。
本格的な指導も受け始めており、バイオリンの演奏技術もメキメキと上達しているらしい。
僕は、アメリアのステータスを確認してみた。
【アメリア・メーベルト】
ファルケ帝国 平民 15歳 女
知力 71/80 (70から71へ上昇)
武力 50/51
魅力 90/90
剣術 G/F
槍術 G/F
弓術 G/F
馬術 F/C
話術 A/A
算術 C/A
芸術 A/S (BからAへ上昇)
料理 D/C
おお! 芸術がAに上がってる。
これで、バイオリン適性Aは確定した。
後は、Sまで無事に上がるといいな。
「アメリア、バイオリンの調子は、どう?」
「すごく良い感じね。自分でも上手くなってるのが実感できているし、何より毎日が楽しいの!」
アメリアが、弾けるような笑顔で僕たちを見ている。
このまま順調に行けば、シアターの町に美少女バイオリニストが爆誕するだろう。
「アメリア、これからは自分の好きなバイオリンの道で、成功することを祈ってる」
「お父さん、ありがとう。私頑張るね!」
アメリアがフランクさんの胸に飛び込むと、二人は親子の絆を確かめ合うように、優しく抱きしめあった。
そして抱擁を解くと、フランクさんが僕たちの方へ向き直る。
「インフィニティの皆さん、本当にありがとう。俺は今回の公演で、演劇の新しい可能性を見た気がする。これからの劇団メーベルトは、実力のある若手を積極的に使っていこうと思う。今までのように、実績や知名度を重視したやり方だけでは、限界があると知ることができた」
「まあ、インフィニティのメンバーはちょっと特殊なので、あまり参考にしない方が良いと思いますが。でも、若手にもチャンスがあるのは、劇団内が活性化して良いかもしれませんね」
「そうだな。それと忘れないうちに、報酬の5冊の本だが、明日書き写しに来るかい?」
フランクさんが穏やかな表情で、僕を見つめている。
「いえ、魔法を使うので、それほど時間はかからないと思います。ここで作業しても構いませんか?」
「別に問題ないが、面白そうなので見学してもいいかな?」
「どうぞどうぞ」
僕は、フランクさんから5冊の大聖女関連の本を預かると、コピー魔法を使って本を複製した。
リゼ、エル、クラウ、カルラがそれぞれの本を1ページずつめくって協力してくれる。
最終的には、フランクさんとアメリアも手伝ってくれて、無事に作業を終了した。
「ありがとうございます。確かに大聖女関連の本を5冊、写させていただきました。勿論、自分たちだけで活用し、他者には見せないことを誓います」
「ああ、よろしく頼む。それと公演中、観客によるファン投票を実施していたのだけど、昨日までの結果を見るかい?」
へえ、そんなことをやっていたのか。
僕もランキングに、入っていたりするかも。
「是非、教えて欲しいです」
「はいよ、いろんな種類があって面白いと思うぞ」
僕はフランクさんから、公演29日目までの集計結果を見せてもらった。
リゼが、妹にしたいキャスト第1位。
これは、分かるような気がする。
僕の妹は、超絶美少女だからね。
エルが、彼女にしたいキャスト第1位。
これも妥当だろう。
Hカップの奇麗系美少女代表だ、一緒に歩いてデートしたら、他の男性から羨ましく思われるに違いない。
クラウが、彼氏にしたいキャスト第1位。
ん? 彼氏!? なぜ僕じゃないんだ!
ぐぬぬぬ、まだ12歳じゃ男としての魅力が足りないか……
それに、ほとんどが握手会に並んだ女性たちの票だろうね。クラウの人気は、凄いな。
カルラが、お嫁さんにしたいキャスト第1位。
激うまケーキで、観客の胃袋をがっちり掴んだようだ。
おまけにサイドテールの似合うGカップ美少女とくれば、文句のつけようもない。
「フランクさん、僕も何かランクインしてるものは、ないですか?」
女性陣は皆、第1位を獲得しているのだ。
せめて僕も入賞くらいは、したいのだけど。
「ああ、そっちの紙には載ってないか。えーと、ああこれこれ。クリスが1位に選ばれているぞ」
「本当に!?」
「おう、えークリスが選ばれたのは『弟にしたいキャスト第1位』だな、おめでとう」
「……」
僕としては、彼氏にしたい男、結婚したい男、兄にしたい男のいずれかが良いのだけど。
まあ、まだ12歳だし仕方ないか。
僕は、男を磨くと決めた。
「お兄様は、弟って言われるのが嫌いですよね」
「まあね、男としては悔しいというか何というか、複雑な気持ちなんだ」
「でも、私の中で彼氏にしたい男第1位は、お兄様ですよ」
リゼが、微笑みながら嬉しいことを言ってくれる。
僕は、リゼをギュッと抱きしめた。
こうして僕たちインフィニティは、フランクさんとアメリアに別れを告げて、メーベルト劇場を後にする。
☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆
シアターの町郊外に複合魔法で平家を作り、帰宅した僕たちは、打ち上げパーティーをすることにした。
「皆、お疲れ様ー」
「「「「お疲れ様ー!」」」」
今日もインフィニティ女性陣の声が奇麗に揃う。
「今日は、皆の大好きな焼肉パーティーっす」
カルラが特上の牛肉、豚肉、鶏肉を皿に盛りつけて出す。
僕たちは、庭で次々に焼いて食べていく。
そして、ある程度満腹になったところで、室内へ移動しジュースで乾杯をする。
「「「「「乾杯ー!」」」」」
皆、良い笑顔である。
30日間の公演が、僕たちを大きく成長させてくれた。
「さあ、お待ちかねのデザートは、日替わりケーキ全30種類食べ放題っす!」
室内が歓声に包まれる。
劇場で出していたサイズを半分以下にして、沢山の種類が食べられるように工夫したらしい。
「そして、お嫁さんにしたいキャスト第1位の自分が、クリスっちを元気にしちゃうっす」
「へ? あー弟の件は、もう気にしてないけど」
「まあまあ、そう言わずに。アメリアに教えてもらった、奥さんが旦那さんを喜ばせる秘策を披露するっす」
そう言ってカルラは着替えに行くと、すぐに戻ってきた。
「ジャーン! 旦那さんが泣いて喜ぶ、裸エプロンっすよー」
「ブホッ!」
僕は、思わずジュースを噴き出してしまう。
リビングには生まれたままの姿に、エプロンをつけただけのカルラが立っていた。
僕は、あまりの衝撃に、どうしていいのか分からなくなる。
いや、これは三角ビキニのリベンジをすべきなのでは?
僕は任務を遂行するために、さりげなくカルラの真横に移動する。
するとカルラが下に、水着を着用していた。
「あー、さすがに下は水着をはいてるっすよ。でも、上は水着をつけてないっす」
一瞬ガッカリしたが、問題はクリアになった。
任務続行である。
僕は平静を装いソファーに座ると、カルラの動きを監視した。
しかし、三角ビキニのときと同じで、見えそうで見えないのだ。
僕が悶々としていると、カルラが近づいてきて僕に微笑む。
「そろそろ種明かしっすね」
「へ? 種明かし?」
僕が首を傾げていると、カルラが胸の辺りのエプロンをペロンとめくった。
ちょっ、何自分から見せてるの!
僕は、反射的に顔を反らして両目を手で覆った。
「アハハ、大丈夫っすよ。これもアメリアにもらったっす。ニップレスとかいうらしいっすね」
僕は、恐る恐る手の隙間から覗いてみると、カルラのGカップに少し大きめな肌色のハート型シールがついていた。
まったく、アメリアってば……しかし、劇団ってすごいな、こんなものまで用意しているのか。
その後僕たちは、カルラのケーキで疲れを癒し、旅の再開へ向けて英気を養うのだった。




