第49話 賭け
たくさんある作品の中から
見つけてくれて、ありがとうございます♪
どうしたら、本の内容を写させてもらえるだろうか……フランクさんが、この申出を断りづらい状況を、作れば良いのでは?
そのためには、何か大きな恩を売ること、相手が困っていることを解決してあげることだろうか。
となると代々受け継いできたこの劇場を、手放さずに維持すること。
そのためには、借金を全て返済する必要がある。
今ある手駒は、インフィニティのメンバーが5人、アメリアとフランクさん、メーベルト劇場、劇団メーベルト。
ふむ、僕としては自信あるのだけど、果たしてフランクさんを、納得させられるかどうか……。
「フランクさん、最後になるかもしれない、次の公演内容は、もう決まっていますか?」
「いや、今回が失敗に終わって、次もやるだけ無駄じゃないかと、悩んでいるところだ」
フランクさんが苦笑している。
「なら、僕たちインフィニティに賭けてみませんか?」
「君たちに何を賭けろと?」
「次の公演は、僕が台本を書いて、主演は僕たち5人です」
「はあ!?」
フランクさんが驚きのあまり、ソファーからずり落ちた。
「アメリアは、舞台下でバイオリンの演奏をお願い」
「うん、別にいいけど。私は舞台に立たなくていいのかな?」
「出たいのなら、何か役を考えるけど?」
「いやいや、バイオリンがいいです」
アメリアが苦笑いしている。
「待って待って、どんな内容なのか、聞かせてくれないか」
フランクさんがソファーに座り直して、僕をジッと見つめた。
「タイトルは、『大聖女リーゼロッテの逆襲~不遇な民は私が救済します~』です」
「ほお、どんな内容なのかな?」
「大聖女リーゼロッテの死因は、老衰説、病死説、暗殺説など定かではありません。今回は暗殺説を採用し、死亡後に大聖女が転生を果たします」
「転生?」
フランクさんが、不思議そうに首を傾げている。
「生まれ変わりです。大聖女は女王に暗殺された後、とある公爵家の長女に転生します。その家は、自分を暗殺した女王の夫、つまり国王の弟の家だった。そして6歳になったとき、自分の家族全員が女王に殺される。そのショックで、自分の前世が大聖女だったことを思い出す。しかし6歳の自分には、大聖女の力が使えない。国王に養女として引き取られ、仲良くなった第二王子と5年間必死に魔法の訓練をして、やっと大聖女の力を取り戻す。復讐の準備を始めたとき女王は、重税や悪政により民を苦しめていた。民が生きる希望を失っていたとき、大聖女が女王を打倒し、民を救済するという話です」
「なるほど、大聖女が自分の復讐を果たすと同時に、虐げられた民を救済する話か。悪くない」
フランクさんが納得するように頷いた。
「だけど、君たちは演技をしたことがあるのかい?」
「いいえ、準備期間はどのくらいありますか?」
「約1か月かな、その後30日間の公演だ」
「とりあえず明日から1週間、僕たちに演技の稽古をつけてください。その成長を見て、判断していただければと思います」
「分かった」
なんとか、話がまとまったかな……後は、本を写させてもらう約束を、取り付けないといけない。
「フランクさん、公演が成功して借金が返済できたときは、大聖女関連の本5冊を書き写させてほしいのですが、良いでしょうか?」
「ああ、自分たちで読んで、決して他人に見せたりしないと、約束できるなら構わないよ」
「勿論、約束は守ります」
僕とフランクさんは固く握手を交わして、また明日僕たちが劇場を訪問することになり、解散となった。
☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆
シアターの町郊外に、いつものように平家を複合魔法で作り拠点とし、リゼに結界と認識阻害をかけてもらう。
人目に付く可能性がある場所では、出かけるたびに壊してはまた作るを、繰り返すようにしている。
「皆、お疲れ様~」
「ふう、疲れましたが、今日は色々楽しかったです」
「盛りだくさんの一日だったのだわ」
「アタシは、ナンパ男を撃退して、スッキリ良い気分だ」
「出店の料理も、初めて見るものがあったりして、参考になるっす」
リゼ、エル、クラウ、カルラの順に今日の感想を述べているが、各々収穫があったようだ。
「では夕食前に、明日から稽古に入る劇の配役と注意点などを、伝えておきたいと思います」
皆が僕に注目している。
「ではまずリゼから。リゼには主役『大聖女リーゼロッテ』を演じてもらいます」
「私がリーゼロッテ様を……なんか緊張しますね」
リゼが胸に手を当てて、自分を落ち着かせているようだ。
「大丈夫だよリゼ、いつも通りにキメポーズを、完コピしてくれれば問題ないから」
「それでいいのですか? なら大丈夫ですね、任せてください!」
不安も解消され、リゼが天使のように微笑んでいる。
うん、今日も超絶可愛い!
「次にエル、大聖女と第二王子の家庭教師を、演じてもらいます」
「家庭教師……」
エルが視線を上に向けて、考え込んでいるようだ。
「今の立場と変わらないよ。大聖女はリゼ、第二王子は僕がやるから、いつも通りに勉強を教えてくれれば大丈夫」
「なるほど、それなら問題ないのだわ」
エルが、こぼれるような笑顔で僕を見つめている。
最近ようやく慣れてきたが、相変わらずの破壊力だ。
「次はクラウ、大聖女を守る聖騎士を、演じてもらいます」
「承知した」
おお、クラウが一番落ち着いている。
「何をどう演じるか、分かっているのかな?」
「ああ、敵を斬って斬って、斬りまくれば良いのだろ?」
「う~ん、まあそうなんだけど、本当に当てたらダメだからね、あくまで劇なので」
「おお、そうだったな。うっかり、本気を出してしまうところだった」
アハハと笑っているけど、なんか心配だ。
剣聖様に言われた通り、僕がしっかり手綱を握っておかないと、いけないな。
「最後にカルラ、大聖女と第二王子に、いつも美味しいケーキを焼いてくれる料理人を、演じてもらいます」
「了解っす」
緊張した様子もないので、カルラは問題なさそうだ。
「それとカルラには、重要な任務があります」
「ふえ? なんすか?」
「演劇の前半が終わった後の休憩中に、お客さんに出すケーキを、毎日焼いてもらいます」
「毎日っすか!?」
「うん、公演中の30日間、日替わりで毎日違うケーキを出したいと思ってる」
「30種類は難しいかもしれないっすね」
カルラが腕組みをして、首を傾げている。
「いや、完全に違う種類じゃなくていいよ。かけるソースが違うだけでも大丈夫」
「それなら、いけるかもっすね」
「うん、考えておいてね」
「了解っす!」
その後、僕たちは庭でバーベキュー大会を開き、牛肉、豚肉、鶏肉を食べまくった。
僕は、少し早めに切り上げて自室に移動すると、風魔法を使って台本を書きあげる。
そして、焼肉を食べ終わった皆と合流し、いつものように水着を着て、一緒にお風呂に入った。
ドライヤー魔法で皆の髪を乾かして、今は寝室で5人揃って、いつものように眠っている。
左隣のリゼが、僕の左腕に抱きついて、すでに熟睡中だ。
右隣のカルラも僕の方に寝返りをうち、僕の右腕を抱き枕にしている。
AカップとGカップに挟まれて、僕の両腕は幸せいっぱいだ。
僕は明日の稽古で、フランクさんに納得してもらえるよう頑張ろうと、誓うのだった。




