第45話 芸術都市
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僕たちは、クラネルト公爵に面会した翌日、シーガルの町を離れて北上し、隣接するゴルトベルク侯爵領へ移動した。
そして、中心都市であるシアターの町郊外に、いつものように平家を複合魔法で作り拠点とする。
今は朝食を食べ終えて、紅茶を飲みながら皆で雑談をしているところだ。
「クラウ、武力の数値って何を現していると思う?」
「ん? 単純に強さじゃないのか?」
クラウが僕の質問に首を傾げた。
今のクラウは、クールビューティーモードなようで、眼鏡をかけて本を読ませれば、文学少女に見えなくもない。
「本来なら武力は、パワーとスピードに分類すべきだと思う」
「あ~確かに」
「例えば剣聖様は、パワー99のスピード90で、クラウはパワー85のスピード97みたいな感じ」
「ふむ、そのように表示されれば、相手の特徴が分かりやすいな」
クラウが腕組みしながら頷いている。
「でもステータスには、武力としか表示されない。僕の予想では、武力はパワーとスピードの平均値ではなく、どちらかの数値の最高値だと思うのだけど」
「なるほどな、そう考えるとアタシの武力が97と表示されることに納得できる」
クラウが二度頷く、僕の予想に賛同してくれたようだ。
なぜ能力値が詳細に分類されていないのか……僕の予想は、この世界を管理する女神パラスが原因だと思っている。
魔物の名称にただ『巨大』とつけたり、適当な感じがハンパない。
『もう面倒だから、これでいいっしょ』とか言いながら決めた、パラスの姿を簡単に想像できてしまう。
もしかしたら、あえて曖昧な設定にして、ドキドキ感を演出しているのかもしれないが……。
「それとエル、知力については内政を行う政治力と、純粋に知恵を現す智力に、分類すべきだと思うのだけど、どうかな?」
「そうね、政治力と智力に分類されていれば、相手の力量が明確になるのだわ」
「でも、知力としてだけ表示されるので、武力と同じように分類された項目の中での最高値が、知力なのだと思う」
「確かに、そう考えるのが自然よね。同感なのだわ」
エルが微笑みながら頷いた。
今日もロングウェーブの金髪が、キラキラと美しく輝いている。
まあ、僕が毎日シャンプーして、シャワー魔法とドライヤー魔法を駆使した成果なのだけど。
「そしてリゼ、魅力の数値についてずっと疑問に思っていたことがあってね。知力と武力は経験を積むことによって上昇するけど、魅力は生まれたときから最高値なのではないかと」
「確かに、私が6歳のときに100だったことを考えると、上昇した結果とは考えづらいですもんね」
「うん、それでシーガルの町で赤ちゃんを何人か見かけたので、鑑定したら全員が最高値だったよ」
「やっぱりそうだったのですね。なんかスッキリしました」
リゼが、とびきりの笑顔を僕に向けている。
最近は、エルに髪型を整えてもらうことが多く、今はツインテールにしていて、とても可愛らしい。
僕が超絶美少女なリゼを堪能していると、カルラが背中をつついてきた。
「ん? カルラどうしたの?」
「クラウ、エル、リゼときたら次は自分っすよね」
カルラが、自分自身を指さしながら微笑している。
別に順番に聞いていたわけではなく、単に武力、知力、魅力で関わりの深い人を指名していただけだ。
これ以上聞くことも、ないような気がする。
「いや、別に順番に聞いていた訳じゃないんだ。もうこれ以上聞くこともないし、なんかゴメン」
あ、カルラが膝をついて絶望しているようだ。
「ヤダヤダ、自分にも何か聞いて!」
カルラが必死になって、僕のズボンにすがりつく。
ちょっ、待って待って、そんなに強く引っ張ると、ズボンが脱げちゃうから!
「わかった! わかったのでズボンから手を離してくれ!」
「ふえ、ほんとに?」
「うんうん、ほんとほんと」
「えへへ」
カルラが微笑みながら手を離したので、僕はすかさず距離を取った。
さて、一体何を聞けばよいのやら……ああ、せっかく芸術都市に来たのだから、芸術適性について考察しようか。
「え~と、芸術適性について聞こうかな」
「芸術っすか?」
「うん、カルラは芸術の素質がAでしょ? でも芸術といっても、たくさんの種類がある」
例えば、歌唱、絵画、演技、楽器など……楽器の種類もかなりの数があるが、楽器ごとに適性が違う可能性が高い。
「あ~、自分の芸術の素質Aも、たくさんある中での最高値ってことっすかね?」
「うん、だから芸術に関するものが溢れるこのシアターの町で、各自一番得意な芸術適性を、見つけるのもいいかなって」
「なにそれ、めっちゃ楽しそうじゃないっすか!」
機嫌を直したカルラが、満面の笑みを浮かべて、僕に飛びついてきた。
カルラのGカップがグニグニと僕に当たる……まあ有難いので、やめろとは絶対に言わない。
「では、冒険者パーティーの依頼も達成したばかりなので、少しゆっくりしようか」
「「「「賛成~!」」」」
女性陣全員の声が揃った。
その後、全員の準備が整い、僕たちは芸術都市シアターの町へ風力車で移動する。
☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆
シアターの町に到着すると、そこはまるで別世界だった。
美術館にコンサートホール、劇場などがメインストリートにひしめいている。
小さな建物があると思えば、そこでは何かの個展が開かれていた。
とにかくどこへ行っても、芸術に関係があるものばかりなのだ。
「「「「「おお~!」」」」」
あまりの迫力に、皆の感嘆する声がハモった。
「見てください、お兄様! 大聖女リーゼロッテ様の演劇をやっているようです!」
リゼが、とある劇場の前で立ち止まる。
「皆、見てもいいかな?」
僕が問いかけると、全員が頷いてくれた。
シーガルの町では、大聖女に関する新しい情報を、得ることができなかった。
でも、芸術都市シアターなら、何らかの手掛かりが掴めるのではないか。
僕は、期待に胸を膨らませるのであった。




