第44話 クラネルト公爵
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今日は、クラネルト公爵との面会が予定されている。
朝食を済ませた僕たちは、一旦冒険者ギルドへ寄り、ギルド長のトビアスさんと合流した。
そしてギルドの馬車で、クラネルト公爵の屋敷へ向かう。
「ギルド長、公爵の屋敷は遠いのですか?」
「いや、馬車で20分くらいだ」
僕の質問にギルド長が答えた。
「それと、インフィニティの皆に、注意して欲しいことがある」
「何でしょうか?」
「公爵は忙しい方なので、面会も短時間となるだろう。返事をする際は、大きな声でハキハキと頼む。」
「「「「「はい!」」」」」
インフィニティのメンバー全員の返事がハモった。
「元気があってよろしい。その感じで、よろしく。あと、くれぐれも失礼の無いように注意してくれ」
「あの質問なのですが、帝都本部ギルド長のライナーさんの話では、冒険者ギルドは独立した組織であり、皇族、王族、貴族でも忖度せずタメ口で話すとのことでしたが、本当ですか?」
「わははは! それは、貴族家のボンボンとかに敬語を使いたくないときの、ギルド長の常套句だよ」
「そうなのですか?」
「ああ、ギルド長は貴族家のガキ共にはタメ口だが、貴族家当主と話すときは、さすがに敬語を使うよ」
ふむ、ライナーさんが言ってたのはギルド長の場合なのだろうな。
僕たちのような普通の冒険者は、貴族相手に敬語を使うべきなのだろう。
ギルド長とそんな話をしているうちに、クラネルト公爵の屋敷に到着したようだ。
そして僕たちは、すぐに公爵の待つ部屋へ通される。
「閣下、本日はお時間をいただきまして、ありがとうございます。こちらが300匹以上の巨大蜂を討伐した、Aランク冒険者パーティー『インフィニティ』のメンバーです」
ギルド長のトビアスさんが、公爵に敬語を使い丁寧に僕たちを紹介してくれた。
「ほお、Aランク冒険者パーティーと聞いておったから、筋肉ダルマの集団を想像していたのだが、十代の少年少女ばかりとは驚いた」
僕の叔父であるクラネルト公爵が、驚愕している。
金髪碧眼で身長は170センチメートルくらい、体型は普通で知的なインテリタイプ。
まずは、ステータスを確認してみようか。
【コンスタンティン・フォン・クラネルト】
ファルケ帝国 公爵 31歳 男
知力 96/97
武力 63/64
魅力 90/90
剣術 B/B
槍術 G/F
弓術 G/F
馬術 B/B
火魔法 A/A
話術 B/B
算術 S/S
芸術 S/S
料理 F/B
知力が高く何でも器用にこなす万能タイプ、とても優秀な人だ。
「閣下、お会いできて光栄です。Aランク冒険者パーティー『インフィニティ』のリーダーを務める、クリスと申します」
僕は、片膝をついて頭を下げた。
まあ、初めて出会ったときに師匠がとっていた行動を、真似てみただけなんだが。
「おお、なんと礼儀正しく美しい所作。私好みの少年ではないか。其方は本当に冒険者なのか?」
ん? 私好みとは、どんな意味だろうか?
「はい、冒険者にございます」
僕は、自分の冒険者カードを提示する。
まあ、遠く離れた位置に公爵が座っているから、カードに記載された内容は見えないだろうけど。
「ふむ、欲しいな。インフィニティに、この屋敷の警備を依頼したら、受けてくれるか? 住む場所の心配はいらんぞ、ここで一緒に暮らせばよい」
むむ? 欲しいとは、警備員のことだよね? 僕個人では、ないよね?
僕の後ろに4人の美少女が控えているのに、この人僕のことしか見てないんですけど!
僕は、思わず自分のお尻を、庇うようにおさえてしまった。
「大変光栄なお話ではありますが、僕たちインフィニティは、明日にもシーガルの町を離れる予定でして、ご期待に沿えず申し訳ございません」
「それは残念だな。もし、またこの町に来たときは、この屋敷を訪ねると良い。いつでも大歓迎するぞ」
巨大蜂の大群やら、シーガルの町には危険が多いようだ。
僕は、極力この町を避けて通ることに決めた。
「はい、ありがたき幸せにございます」
「うむ! では、巨大蜂の討伐報酬についてだが、300匹以上という数からも、BランクではなくSランク依頼とする。よって、討伐報酬は金貨20枚ではなく、金貨100枚とする。なお、予想外のことで危険な目にあわせたお詫びとして、金貨20枚を追加する」
ふむ、つまり合計金貨120枚の報酬ということか。
僕たちはギルド長と一緒に、お礼を伝えてから部屋を出た。
その後、屋敷を出て冒険者ギルドに戻り、必要書類にサインをして解散となる。
☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆
僕たちは、シーガルの町近郊にある草原に戻ってきた。
そして、合宿のときと同じ平家を複合魔法で作り、現在リビングのソファーに座り、くつろいでいる。
「皆、お疲れ様。シーガルの町における、インフィニティの収支報告会を始めます」
皆が拍手してくれる。
何かしら反応があるのは、嬉しいものだ。
しかも美少女4人の拍手である。
「巨大牛の討伐報酬が金貨20枚、巨大豚が金貨20枚、巨大鶏が金貨20枚、巨大蜂が金貨120枚、それと素材報酬が金貨30枚、合計金貨210枚のプラスです」
「この短期間で、すごい収支なのだわ」
エルが驚嘆している。
「当初の予定通り、一人あたり10パーセントである金貨21枚を支給し、残りの金貨105枚はパーティーの運営費とします」
「「「「異議なし!」」」」
全会一致で可決され、僕は皆に金貨を配った。
「うっひょ~! 自分これだけで、去年の年収超えたっす!」
カルラが小躍りして喜んでいる。
「でも、自分戦いに参加してないっすけど、本当に良いんすか?」
カルラが不安げに僕を見ている。
「前にも言ったけど、役割は人それぞれ違う。カルラだって解体場で、血まみれになりながら作業したじゃない。いずれ自分で解体できるようになったら、解体費用が浮くのでパーティーに貢献できる。それに解体は、カルラにしかできないでしょ」
「うん、そうだよね。クリスっち、ありがとう」
カルラが僕に微笑んでいる。
今日も茶髪のサイドテールが、良く似合っていて可愛らしい。
「よし、決めったっす! 頑張った自分に、ご褒美をあげるっす!」
シーガルの町でカルラが買い物をしたいと言うので、皆で向かうことにした。
☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆
風力車でシーガルの町に到着すると、僕たちは二班に分かれる。
カルラの買い物に、面白そうとクラウがついて行くことになった。
カルラの護衛も兼ねていて丁度良いので、先に送り出す。
残った僕とリゼとエルは、冒険者用の服を見て回る予定だ。
それと書店があれば全部入ってみて、大聖女関連の情報がないか調べることも忘れない。
しばらくして、買い物を済ませ集合場所に向かうと、すでにクラウとカルラが待っていた。
「「いえ~い!」」
「クラウもカルラもご機嫌だね、良い買い物ができたのかな?」
「クリスっち、見てこれ凄いっすよ!」
カルラを見ると、首からネックレスをつけていた。
紐の先端に、宝石のような奇麗な緑色のものが付いている。
「願いが叶うエメラルドっす! これで自分、すぐに料理適性Sになれるっすよ!」
「クリス、アタシのも見てくれ! 願いが叶うルビーだ!」
クラウも紐の先端に、赤い石のついたネックレスをしている。
「これで、ついにアタシも旦那様と結婚できる!」
クラウとカルラのテンションが異様に高い。
「ちなみに、いくらしたのかな?」
「たったの金貨1枚っす!」
「エメラルドもルビーも最後の1個でさ、もう少しで売り切れるところだった」
う~ん、金貨1枚は前世で10万円相当だ。
これが安い買い物とは、思えないが……。
すると、リゼが何か言いたいらしく、僕の耳に顔を近づけてきた。
「お兄様、二人とも騙されているのでは? 鑑定をした方が良いと思いますが」
「僕もリゼと同じ考えだけど、どうしようかな」
僕はクラウとカルラに、確認したいことがあるので聞いてみた。
「このネックレスは、どこの店で買ったのかな?」
「店じゃないっすよ、道路に座って布の上に置かれていたっす」
「売った人は、まだそこに居るのかな?」
「次の町に用事があるとかで、急いで出発してたっすね」
「……」
リゼが心配そうに、こちらを見ている。
「リゼ、鑑定するのは、やめておこう」
僕はリゼに近づいて小さな声で伝えた。
「それで良いのですか?」
「リゼ、『知らぬが仏』って言葉があるだろ? 知らなければ、クラウとカルラは平静でいられる」
「確かにそうですが」
「それにね、万が一本物かもしれないし」
「そうですね。私も本物と信じて、過ごすことにします」
こうして僕たちは、シーガルの町でたくさんの思い出を作ったのだった。




