第43話 皇子の評価
たくさんある作品の中から
見つけてくれて、ありがとうございます♪
ギルド長のトビアスさんが、クラネルト公爵に巨大蜂の討伐報酬について、交渉してくれている。
その間僕たちは、自主練をして過ごしていた。
僕は、剣術の稽古とエルの授業と社交ダンス。
リゼは、エルの授業と社交ダンス。
エルは、水魔法の訓練。
クラウは、風魔法の訓練。
カルラは、火魔法と水魔法の訓練。
お互いに、教えたり教わったりしながら、インフィニティの結束がさらに深まった気がする。
そして、ついにギルドから連絡があり、明日の午前中にクラネルト公爵の屋敷へ行くことになった。
「クリス君、クラネルト公爵はクリス君にとって叔父にあたるけど、面識はあるのかしら?」
「へ? クラネルト公爵って、僕の叔父だったの?」
「ええ、クラネルト公爵は皇帝陛下の弟で、前皇帝陛下の三男なのだわ」
「へ~、さすがエルは何でも知っているね」
「何でもは、知らないかな。知っていることだけなのだわ」
さて、どうしよう。
明日、第三皇子か冒険者、どちらの立場でクラネルト公爵に会うべきか。
第三皇子として会えば、リゼのことも知られてしまう。
もし、クラネルト公爵が皇帝陛下の味方ではなく、皇后様の派閥だった場合、最悪命を狙われる危険性がある。
「エル、明日は第三皇子とは名乗らずに、冒険者として会おうと思う」
「それは、クラネルト公爵が皇后様の味方かもしれないから?」
「そうだね、皇帝陛下の味方である確証が、今のところ無いからね」
「私も賛成なのだわ」
師匠が長女のエルを薦めてくれたのは、僕が魔法の訓練に明け暮れていて、皇族や貴族間の情報に疎いのを考慮していたのかも。
こうして相談に乗ってくれて、的確な助言をしてくれるのでとても助かる。
「しかし、これからの帝国は、どうなるのかしらね。第一皇子が皇太子になると、皇后様にすり寄る貴族が更に増えるのだわ」
「う~ん、普通の流れならレオンハルト兄様が皇太子になるだろうね」
「そうなると、いずれ皇帝派と皇后派で、分裂するかもしれないのだわ」
エルが憂鬱そうにして、帝国の未来を心配している。
「皇后派は、第一皇子のレオンハルト兄様としても、皇帝派って誰かいたかな?」
エルが苦笑して僕を見ている。
「クリス君は気付いていないのね。皇帝派は、第三皇子のクリス君なのだわ」
エルが、美しいロングウェーブの金髪をかきあげながら、じっと僕を見つめている。
「へ? 僕?」
「そうよ、魔術訓練場の事故での行動が、周囲に与えた衝撃は、思った以上に大きかったのだわ」
「う~ん、確かに僕は救助活動はしたけど……」
「勿論、上級風魔法を複数同時に使っての救助は、皆が衝撃を受けたと聞いているわ。でも、それだけではないのよ。魔力切れを起こした見習い聖女の子たちへ見せた、気遣いと配慮。見ている人は、見ているものなのだわ」
「あ~あの子たちも災難だったよね。たまたま上級聖女が出払っているときに、事故が起きて」
「そういうふうに考えてあげられるのが、クリス君の良いところなのだわ」
エルが美少女スマイルで僕に微笑む。
う、可愛すぎて視線を合わせられない。
「そうかな?」
「ええ、それにこの前私も、見習い聖女の子たちと同じ体験をしたもの。クリス君は、魔力切れを起こしそうになった私を叱責せず、むしろ自分の責任だと謝罪までしてくれたのだわ」
「あ~、あれは僕の予測が甘かったから」
「通常10~20匹の巨大蜂が300匹以上いるなんて、誰にも予測できないのだわ」
「まあ、確かにね」
「今なら、お父様がこの旅に私を同行させた理由がわかるもの。帝国の未来を守りたい、お父様も同じ考えなのだわ。もちろん皇帝陛下と剣聖であるオルレアン伯爵もね」
エルと真面目な話をしていると、自主練の休憩中なのか、クラウがこちらに手を振りながらやってくる。
僕とエルが手を振り返すと、クラウは迷わず僕の隣に座った。
「何の話をしているのだ?」
「帝国の第一皇子と第三皇子の話なのだわ」
クラウの質問にエルが答えた。
「あのクソ野郎とクリスの話か」
クラウが苦虫を嚙み潰したような顔つきで、レオン兄様のことを非難している。
いったい二人に、何があったのだろうか。
「クラウは昔、レオンハルト兄様と何かあったの?」
「ああ、貴族学校でのことなんだが、アタシとエルと第一皇子は同学年でな、校内の剣術大会で優勝して箔をつけたいから、アタシに出場を辞退しろと言ってきた」
「あ~言いそうだね」
「毎年、毎年しつこく言ってきたので、全部出場してアタシが全部優勝してやった」
クラウが得意気にしている。
「それと、特に酷かったのが、女性への態度なのだわ」
「ああ、何人もの女生徒が、あのクソ野郎にキズモノにされて、貴族の親が抗議に行くと皇后様が出てきて、慰謝料を払ったり、貴族家に圧力をかけたりしてもみ消していたらしい」
う~ん、簡単に想像できてしまうのが悲しい。
レオン兄様は、僕にもキツク当たってきていたし、優しくされた記憶がないのだ。
「エルにも迷惑かけていたのかな?」
僕は、恐る恐る尋ねてみた。
「ええ、毎日毎日しつこく押しかけてきたのだわ」
「だからアタシが常にエルを護衛していたのだ。指一本触れさせなかったぞ」
クラウが誇らしげに胸を張っている。
「3年間、毎日私を守ってくれて、本当にありがとう。クラウ、大好きなのだわ」
エルがクラウにギュッと抱き着いた。
なるほど、エルがクラウを大好きな理由が今わかった。
「まあ、そんなこともあって、第一皇子が皇太子になるのを、不安に思う貴族家が多いのだわ」
「あのクソ野郎が皇帝になったら、帝国に未来はないぞ」
まったくレオン兄様は、何をやっているのか……あ、もう一人、兄様がいるじゃないか。
いっそ、第二皇子のエーベ兄様を、皇太子にした方が良いのでは?
「え~と、第二皇子のエーベルハルト兄様も、二人の二学年下にいたはずだけど……」
「あれも同類なのだわ」
「あのクソ野郎の弟も、兄に負けないくらいのクソ野郎だぞ」
エーベ兄様、お前もか……




