第42話 ハチミツ
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巨大蜂を討伐した後、僕は死骸を箱に詰めた。
死骸は、素材として売れるらしく、討伐証明にもなる。
ちなみに箱は土魔法で作り、大きさは一辺が1メートルの立方体だ。
風魔法で死骸を運び、箱に投入する。
こうして巨大蜂の死骸が詰まった箱が、20箱出来上がった。
「リゼ、エルの看病をお願いしてもいいかな?」
「はい、任せてください」
戦いを経験し逞しくなったのか、リゼが頼もしく見える。
「小さめの平家を複合魔法で作るから、二人で休憩してね。結界だけ張って、認識阻害はかけないでくれるかな。後で僕とクラウが、探せなくなってしまうから」
「わかりました」
「僕とクラウは、ハチミツを取ってくるから、少し待っていてね」
「はい!」
あ、ハチミツと聞いて、リゼが目を輝かせている。
戦闘中の凛々しい顔から、いつもの超絶美少女なリゼの笑顔に戻ったようだ。
「リゼは体調大丈夫かな? 魔力切れを起こしそうになっていたりしない?」
「はい、平気みたいです」
やはり、リゼの魔力量は、かなり多いのかもしれない。
あれだけ結界を二重に張り続けても、へっちゃらなようだ。
まあ僕も上級風魔法を連発して、一時的に胸が苦しくはなったけど、魔力切れは起こらず今は元気一杯である。
「じゃあ行ってくるね。念のため結界は、二重に張っておいて」
「はい、お兄様」
あ、クリスからお兄様に戻ってる。
ちょっと残念な気はするけど、リゼにお兄様って呼ばれるのは、元々大好きなので問題ない。
クラウと一緒に、巨大蜂が飛んできた方へ行ってみたが、すぐに巣を発見できた。
「うわっ、なんなのだ、この数の多さは!」
クラウが驚いているが無理もない、そこには数多の巨大蜂の巣が存在していたのだ。
「とりあえずハチミツを集めてしまおうか」
「どうやって?」
「まずは、複合魔法で樽を作る。そして風魔法で巣を運び、分解してハチミツだけを抽出して、樽に入れて完成かな」
僕は、風魔法を駆使して巣を分解した。
ひたすら不純物を取り除き、ハチミツだけが残ると樽へ入れる。
最初は大変だったけど、慣れてきてからは早かった。
1つの巣で樽が丁度満杯になり、最終的に樽の数は30になる。
「樽が30ということは、巣も30あったのだよな」
クラウが顔をしかめている。
複数刺されて死にそうになり、巨大蜂には悪い印象しかないだろう。
「すごい数だよね、あれだけの大群になるわけだ」
僕とクラウは、リゼとエルの休憩している平家へ戻り合流すると、冒険者ギルドへ移動した。
☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆
冒険者ギルドに到着すると、僕は受付へ報告書を提出した。
「あら、おかえりなさい。無事に巨大蜂を討伐できたのですね。さすがBランクパーティーのインフィニティ」
受付嬢が微笑んで僕を見ている。
「いや~、大変でしたよ。危うく全滅するところでした」
「は? インフィニティの強さで、そんなこと起こるわけが……はあ!? 巨大蜂が300匹って本当なの!?」
報告書を見ながら発狂する受付嬢のヘルマへ、僕は先ほどの激戦について説明した。
「ちょっと待って、その話が本当なら、これはBランク依頼ではなくSランク依頼だわ」
受付嬢が喫驚している。
「少し待っていてね、ギルド長に報告してくるので」
受付嬢が走ってギルド長のところへ向かった。
そして、息を切らしながら、すぐに戻ってきた。
「ギ、ギルド長がお呼びです。ご案内します」
僕たち4人は、2階にあるギルド長の部屋へ通されて、4人全員が一つの長椅子に座った。
ローテーブルを挟んで正面には、ギルド長らしき人物が、大きめの椅子に鎮座している。
青髪紫眼で身長160センチメートルと、大人にしては小柄な感じだが、腕の筋肉だけが他の部位より異常に発達していた。
「ギルド長のトビアス・トンベックだ。ヘルマの話が本当なら大事件となる。討伐の証明になるものを見せてくれ」
僕は、巨大蜂の死骸が入った箱を、収納ボックスから次々に出していった。
「ちょ、ちょっと待て! 一体いくつあるんだ?」
「全部で20箱ですね」
「はあ!? 待て待て、床が抜けちまう! ここから移動して、解体場で見せてくれ」
僕は、出した物を全て収納ボックスにしまい、皆でギルド長の後をついて行く。
せっかくなので、移動中にギルド長の人物鑑定をしてみた。
【トビアス・トンベック】
ファルケ帝国 平民 冒険者ギルド、シーガル支部ギルド長 35歳 男
知力 75/75
武力 86/86
魅力 90/90
剣術 B/B
槍術 F/F
弓術 S/S
馬術 A/A
火魔法 A/A
話術 B/B
算術 B/B
芸術 F/F
料理 E/C
全体的に数値が高く優秀な人のようだ。
おお、弓術Sは初めてだな、どのように弓をひくのだろうか興味がある。
そして、解体場へ到着するとカルラの姿があった。
「クリスっち~、依頼は終わったんすか?」
全身血まみれのカルラに、リゼとエルが後ずさる。
「なんとかね。討伐の証明を見せるために、解体場へ来たんだよ」
僕は皆の前で収納ボックスから、巨大蜂の死骸が入った箱を20個、極上のハチミツが入った樽を30個取り出して床に置いた。
あまりの数に解体場内で、どよめきが起こる。
そしてギルド長が箱の中を確認した。
「20箱全部確認したが、びっしりと巨大蜂の死骸が入っているな。巣の数も30あったのだろう?」
「はい、一つの巣からハチミツが、樽一つ分取れましたので」
ギルド長の質問に僕が答えた。
「だとすると、総数は300を超えていたかもしれないな。いずれにせよ今回の依頼はBランクではなくSランクに変更となる」
「Sランク?」
「ああ、そんな数を一つの冒険者パーティーで、討伐できるわけないだろ。多数のAランク以上のパーティーで臨むか、軍隊の派遣を要請するか、どちらかだ」
ギルド長がキメ顔で答えた。
いや、そんなキメ顔されても困るんだけど……こっちは4人が死にかけたってのにさ!
「今回は申し訳ないことをした。死者が出てもおかしくないケースだ。それなのに全員が生還し、討伐までしてしまうとはな」
ギルド長が僕たちに頭を下げている。
「よって、冒険者パーティー『インフィニティ』をBランクからAランクパーティーへ昇格とする」
再びギルド長がキメ顔で言った。
いや、僕たちはパーティーランクとか、気にしてないのだけど。
「え~と、それはどうも」
「薄っす、反応薄すぎじゃない!?」
ギルド長がキメ顔を崩して、驚愕している……もはや変顔だ。
「あの、嬉しいです。ありがとうございます」
「本当に? まあ、いいけどさ……それはそうと、巨大蜂の素材20箱全部、ギルドに売ってくれないか?」
「はあ……」
「通常なら金貨20枚だが、ほどよく切られて良い感じの大きさになっている。うちの作業負担が減る分、色付けて金貨30枚でどうだろうか?」
自分たちで使う予定もなく、ギルドがボッタクリをするとも思えない。
「それでお願いします」
「おお! 助かるよ」
僕はギルド長とガッチリ握手を交わした。
「後は巨大蜂の討伐報酬だが、当初の金貨20枚では安すぎる。Sランク依頼相当の報酬に変更するよう、私が直接交渉しようと思う」
おお、ギルド長がいろいろと動いてくれるようだ。
「よろしくお願いします」
「任せてくれ。ただこれは、クラネルト公爵からの依頼なので、三日ほど待ってもらえるか。すぐに会える人では、ないのでな」
「承知しました」
こうして僕たちは、一旦冒険者ギルドを離れて、シーガルの町近郊にある草原へと移動する。
☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆
「この辺でいいかな」
僕は、人の往来のない適当な場所を選んで、いつものように平家を複合魔法で作った。
皆も疲れているようで、速攻中に入って各自風呂を済ませる。
今は、カルラの作った夕食を食べ終えて、リビングのソファーでくつろいでいるところだ。
「さあ、デザートっすよ」
カルラが、ワゴンにケーキを乗せて運んでくる。
女性陣から歓声が上がった。
「ハチミツを使ったケーキ?」
「そっすね。たくさんあるので、贅沢に使わせてもらったっす」
僕の質問にカルラが答える。
女性陣にも大好評なようだ。
いつかリゼに美味しいデザートを作って驚かせようと、ラノベのテンプレみたいなことを考えていたのだけど。
カルラの話を聞くと、この世界のデザート事情は、前世の日本と変わらないらしい。
おそらく前世でパティシエだった人が、この世界に転生して、すでにデザートのレシピを広めてしまったようなのだ。
残念だが仕方ない、また別の方法を探そう。
「あれ? クラウは?」
女性陣が美味しそうにハチミツケーキをおかわりする中、クラウの姿だけ見あたらないのだ。
「あ~クラウは……ちょっと見てくるっす」
カルラが苦笑しながらクラウを探しにいく。
そしてすぐに、カルラが戻ってきた。
「お待たせしたっす」
「……」
コイツ本当にやりやがった。
そこには体中にハチミツを塗りたくったクラウが、ワゴンに寝ていたのだ。
まあ水着を着ているから、一応冷静さは残っているようだが。
「いや~、アタシは裸で構わないって言ったら、カルラが水着を着けろってしつこくて」
「……」
「さあ、ご主人様、アタシを召し上がれ!」
たくさんあるからって、食べ物で遊ぶのは、感心しないな。
ここは、後でスタッフが責任もって食べました的な感じで、僕が舐めるべきか。
「ハチミツが勿体ないから食べるけど、二度としたらダメだからね」
「は~い、ご主人様」
クラウには、お仕置きが必要だな。
世界中の皆が、くすぐったいと笑い転げる場所を、徹底的に舐めてやろう。
僕は、迷わずにヘソの周りを舐めまくった。
「ちょ、そんないきなり……ギャハハハ! ちょ、やめ、イ~ヒッヒッヒッ! 待って、待って、アヒャヒャヒャ!」
笑い疲れたクラウがワゴンの上で、ぐったりしている。
うむ、これでクラウも反省しただろう。
「もう、ご主人様、オヘソの周りは禁止だぞ」
「……」
「ハチミツが勿体ないから、最後にもう一回だけ、別のところを舐めて欲しい」
「本当に最後だよ?」
「ああ、約束しよう」
確かにハチミツが勿体ないので、あと一回だけ。
さて、どこに行こうか……足はシャワー魔法のときに、クラウが新しい扉を開きかけたからダメだな。
とすると、ヘソから上に行くしか道がない。
「じゃあ、行くよ~」
「ああ、どんとこい!」
僕はヘソの上あたりからスタートして、お腹、胸の谷間、首へと到達した。
すると、クラウの様子がおかしい。
頬を朱に染め、息が荒いのだ。
「ちょっ、ご主人様、そこでやめないで……」
「……」
「もう少しで、新しい扉が開きそうなんだ」
僕は風魔法を使って、クラウをワゴンから持ち上げて、浴場へ運ぶ。
そして、浴槽の中にお湯を張り、クラウを放り込んだのだった。




