第31話 ニックネーム
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僕たちは帝都の検問所を、エルネスタ嬢の迫真の演技で、無事通過した。
そして、検問所から500メートルくらい離れた場所で、馬車を降りる。
「お兄様、こんな所で馬車を降りて、大丈夫なのですか?」
「うん。インフィニティとして活動する前に、合宿をしようと思ってね」
「「「「合宿?」」」」
女性陣全員の声がハモった。
「説明は後でするから、とりあえず森の近くまで移動するよ」
馬車で降りた道路から200メートルくらい離れた所に森の入口があった。
僕たちは、そこまで徒歩で移動する。
「ここら辺でいいかな。危ないから皆離れていてね……ビルド!」
僕は、複合魔法で大きな平家を作った。
間取りは、個室が5部屋、図書室、研修室、LDKがある。
「マジっすか、魔法で家ができるなんて……」
カルラが驚いているが、迎賓館の旧館で5年間ずっと訓練してきたのだ。
毎日失敗しては壊して、また挑戦することを、ひたすら繰り返す。
最近は、ほとんど失敗することが無くなった。
「あとは庭部分を確保して、ここら辺に外壁を作ってと、はい完成」
「「「おお~」」」
リゼは見慣れた光景なので平常運転だが、リゼ以外の女性陣三名は、衝撃を受けたようだ。
「じゃあ後は仕上げだね。リゼ、まずは結界を張って、次に認識阻害をかけてくれるかな」
「はい、任せてくださいお兄様!」
リゼが、藤色のワンピースのポケットを探っている。
「あっ、お父様にステッキをあげたのでしたね。いつものクセで、つい探してしまいます」
ステッキがないと、完コピした大聖女リーゼロッテ様のキメポーズを披露できないよね。
「リゼ、新しいステッキを作ろうか?」
「本当ですか、お兄様!」
「また、同じのでいいのかな?」
「う~ん、できたら杖が欲しいです」
11歳だし、そろそろステッキは卒業か。
「少女用のやや短めの杖でいいのかな?」
「そうそう、それです!」
僕は収納ボックスから、リーゼロッテ様の絵本を取り出した。
「この挿絵の杖かな?」
「はい!」
リゼが満面の笑みで答えた。
「じゃあ、いくよ~、クラフト!」
地面にカランと杖が落ちてきた。
僕は杖を拾い上げて、出来栄えを確認する。
うん、完璧だな。
地面に立てると、リゼの肩より少し上くらいだ。
「はい、リゼにプレゼント」
リゼは、目をキラキラと輝かせている。
5年前の出会ったころも、同じような場面があったよな。
まあ、5年前と比べると、リゼの背が伸びて、胸が成長しているけど。
「ありがとうございます、お兄様!」
リゼが僕の胸に飛び込んできたので、ギュッと抱きしめた。
うん、今日も良い感じにAカップがプニプニと当たっている。
「じゃあリゼ、結界と認識阻害をよろしくね」
「はい!」
リゼが新しい魔法の杖を右手に握り魔法の準備に入った。
右足をくの字に曲げながら上げると、右手に持った杖を前方斜め45度に突き出す。
さすが、5年間練習を重ねた成果が出ている。
完コピだ!
「バリア! からの~インヒビション!」
リゼがキメポーズをしながら満足そうに破顔した。
「「「「おお~」」」」
見ていた全員が感嘆の声をあげている。
「すごいっすね! 完コピじゃないっすか、絵本から飛び出てきたみたいっす!」
カルラも大聖女の絵本は、幼少期から見ていたらしく、リゼのことを絶賛していた。
その後、皆で結界の外へ出て確認すると、そこには何も存在しないように見える。
そして、侵入しようとすると、すり抜けて反対側へ抜けた。
「すごいものだな、まるでここに何も無いみたいだ」
クラウディア嬢が驚嘆している。
その後、僕たちは結界の中に戻り、僕が建てた平家へ入った。
「広くて奇麗なのだわ」
「なんか良い匂いがするな」
「ヒャッホー」
エルネスタ嬢とクラウディア嬢にも好評なようだ。
カルラは、よくわからないことを口走っているが、喜んでいるように見える。
僕たちは、リビングに移動して、皆がソファーに座った。
「それでは、これより冒険者パーティー『インフィニティ』の合宿を始めます」
皆からパチパチと拍手が起こる。
皇子ということもあり、僕がパーティーリーダーを務めることになった。
皆が安全で快適に、楽しく過ごせるようにしていきたい。
「じゃあ、インフィニティのルールを説明するね。まず最初に、パーティーメンバーは対等の立場とします」
「対等っすか?」
「うん、対等つまり身分の差はないということ。皇子である僕も、平民であるカルラも対等で、同じチームの仲間ってことだね」
「マジっすか! 自分、皇子とタメ口でいいんすね! 最高じゃないっすか!」
「ああ、でも公の場に出たら、今まで通り皇子として振る舞わないといけないので、注意して欲しいかな」
「了解っす!」
ルールに関しては、カルラも納得してくれたようだ。
「次に、名前の呼び方についてだけど、依頼遂行中の緊急時にフルネームで呼び合うのは効率が良くないので、各自ニックネームをつけます」
「ニックネームって、なんかカッコイイっすね!」
「僕を含めて長い名前の人もいるので、4文字以上の人は僕が考えた3文字以内のニックネームで、呼び合うことにします」
「良い考えなのだわ」
「良い案だと思う、さすが私の旦那様」
エルネスタ嬢も同調してくれて、クラウディア嬢は最後に意味不明なことを言っていたが、まあいいか。
「まずは僕から、クリストハルトは『クリス』でよろしく」
「了解っす! クリスっち!」
「いや、せっかく3文字にしたのだから、長くしないで欲しいかな」
「わかったっす! 作戦行動中は『クリス』って、ちゃんと呼ぶっすよ!」
カルラは、ずっとテンションが高いな。
まあ、明るくて楽しいキャラだから、インフィニティのムードメーカーみたいな感じになりそうだ。
「次、リゼットは『リゼ』でよろしく」
「はい、お兄様! あっ、作戦行動中は『クリス』って呼びますね」
リゼにクリスと呼ばれるのは、何だかドキドキするな。
まるで恋人同士のような……ニックネーム最高じゃないか!
「次、エルネスタ嬢は『エル』でよろしく」
「承知したのだわ」
「いいじゃないか、エル……良い響きだ」
「きゃー、クラウディアありがとう!」
エルってクラウディア嬢のこと大好きなんだろうな。
まあ、二人の貴族学校での話とかは、後で是非聞いてみたいものだ。
「次、クラウディア嬢は『クラウ』でよろしく」
「クラウ……なんかクールでカッコイイのだわ」
「いいっすね! 皆カッコイイっすよ! ニックネーム最高っす!」
エルとカルラも納得したようだ。
「では、最後にカルラ」
「はいっす! 自分のニックネームは、なんすかね~? ドキドキしてきたっす!」
「カルラは……『カルラ』でよろしく」
「ほえ?」
カルラがフリーズしている。
「自分の聞き間違えっすかね? クリスっち、もう一度よろしくっす」
「はいはい、カルラは『カルラ』でよろしく」
「……そのまんまじゃないっすか!」
「いや、ニックネームがつくのは4文字以上の名前だと、最初に言ったはずだが」
「ほえ?」
「3文字以内で元から短い名前の人は、そのままで良いと思うぞ」
「でもでも、自分もニックネームが欲しいっす! ヤダヤダヤダヤダ!」
カルラが手足をジタバタさせて抗議している。
まるで前世のおもちゃ屋で、母親に今日は何も買わないと言われ、床に寝転がって手足をジタバタさせてる子供みたいだ。
でも、違いがあるとすれば、カルラが手足をジタバタさせると、Gカップがプルンプルンと揺れるのだ。
このまま放置していても、よいのでは?
いやいや、まだ議題が残っているので、話を進めないといけないな。
「えー、埒が明かないので多数決で決めたいと思います。カルラはカルラで良いと思う人、挙手してください」
カルラ以外の全員が挙手した。
「はい、4対1で賛成多数のため、カルラは『カルラ』のままでよろしくね」
「そ、そんなぁ……」
カルラでも落ち込むことがあるのだな。ちょっと意外だった……。




