第29話 インフィニティ
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カルラの家を出てから冒険者ギルドへ向かう途中、僕は帝都の街並みを見ていた。
転生して前世の記憶が戻ってから、一度も城を出たことが無かったので、初めての経験である。
帝都というだけあって道路は整備されており、等間隔に敷き詰められた石畳が、朝陽に照らされ輝いていた。
道路の両側には、レンガ造りの建物が立ち並び、中世のヨーロッパを思わせる風景が広がっている。
しばらくして、周囲よりもひときわ高い建物の前で、馬車が停車した。
ここが冒険者ギルド帝都本部か……。
僕たち五人が馬車から降りると、一人の冒険者風の男が近づいてくる。
まさか、皇后様の刺客じゃないよな?
僕は、皆の前へ出て警戒する。
「馬車の扉にリートベルク侯爵家の紋章……、剣聖の推薦者で間違いないか?」
「はい、こちらが剣聖である父が、推薦している御方たちで間違いありません。お久しぶりです、ライナーさん」
冒険者風の男に、クラウディア嬢が挨拶した。
今のクラウディア嬢は、クールビューティーで仕事のできる女性に見える。
昨日の初対面が戦闘狂モードだったため、誤解しそうになるけれど、本来は伯爵家の淑やかな令嬢なのだ。
「おお、クラウディアか? 大きくなったな」
「はい、ライナーさんもお元気そうで。いつの間にか、ギルド長になっていたのですね」
「まあ、いろいろあってな。さあさあ、目立たないように裏口から入ってくれ」
どうやらこの人が、ギルド長らしい。
こうして僕たち五人は、冒険者ギルド帝都本部の裏口から、建物の中に入れてもらう。
階段で二階へ上がりしばらく歩いて、廊下の一番奥にある部屋へ移動した。
どうやらここがギルド長の部屋らしい。
「とりあえず全員座ってくれ」
広い部屋の中で、応接室のようになっているスペースに、長方形のローテーブルが一つある。
そのテーブルを取り囲むように長椅子が四つ置かれている。
10人くらいは座れるだろうか、僕たちは適当に座ってギルド長の話を待った。
「まずは自己紹介から、俺は冒険者ギルド帝都本部でギルド長を務めるライナー・トレンメルだ」
茶髪で茶眼、身長は170センチメートルくらいの筋肉質でガッチリした体型である。
僕は興味があったので、ギルド長のステータスを確認してみた。
【ライナー・トレンメル】
ファルケ帝国 平民 冒険者ギルド帝都本部ギルド長 35歳 男
知力 70/72
武力 93/93
魅力 90/90
剣術 A/A
槍術 S/S
弓術 F/F
馬術 A/A
火魔法 A/A
話術 C/C
算術 C/C
芸術 F/F
料理 F/E
武力93に槍術S、かなり優秀な人だ。
剣聖様に続き二人目の槍術Sだけど、どんな戦い方をするのだろうか。
おまけに火魔法Aまである、わずか35歳でギルド長になったのも、わかる気がする。
「今日は冒険者登録に来たそうだが、その前に注意事項を聞いてくれ」
僕たち五人全員が、ギルド長の言葉に頷いた。
「まず冒険者についてだが、冒険者に国境は無い。冒険者登録した者に支給される冒険者カードがあれば、世界中のどこへでも行ける」
なるほど、冒険者カードは前世のパスポートみたいなものか。
「また、冒険者ギルドは独立した組織であり、皇族、王族、貴族などから依頼は受けるが、仕事上対等な立場であるため、一切の忖度はしない」
ふむふむ、冒険者に身分の上下は関係ないと。
「よって、帝国の皇子、皇女、貴族家の子女であってもタメ口で対応するので、不敬だとか言わないように」
「承知しました、ギルド長」
「いやあ、素直で理解の速い皇子でよかったよ。貴族家のボンボンとかが、不敬だって騒ぐことが多くてね」
「苦労されているのですね」
「そうなんだよ、困ったもんだよ本当に……。さて、時間もないだろうから、早速始めようか」
「はい、よろしくお願いします」
僕は、昨日剣聖様に書いてもらった推薦状を、ギルド長に渡した。
「どれどれ、皇子が12歳で皇女が11歳か……、ステータスを見てみないと判断できないな。他の三人は、15歳以上で間違いないか?」
「「「はい」」」
ギルド長の質問に、エルネスタ嬢、クラウディア嬢、カルラがハモるように答えた。
「では、最初に皇女からいこうか。この水晶玉に手を触れてみてくれ」
リゼが水晶玉に手で触れると、ステータスが浮き上がる。
魔道具みたいなものか……。
【リゼット・ブレイズ・ファルケ】
ファルケ帝国 第1皇女 11歳 女
知力 85
武力 29
魅力 100
光魔法 S
話術 A
算術 A
芸術 A
「おお、魅力100なんて初めて見たぞ。てか、光魔法がSだと!?」
驚くギルド長の横で、リゼが照れながら微笑んでいる。
うん、リゼは今日も超絶可愛いな。
それと、予想通り現在の実力がGの技能適性は、表示されていない。
「皇女は、聖女様でしたか。これは、とんだご無礼をいたしました。ステータスは問題ありませんので、11歳ですが特別に冒険者登録を認めます」
リゼは問題ないようだ。しかし、聖女とわかったらギルド長の態度が変わったな。一切の忖度は、しないと言っていたが……。
「我々冒険者は怪我が多く、いつも聖女様に助けていただいている。これからもどうぞ、我々冒険者をお救いください」
なるほど、そういうことだったのか。
「では、次は皇子だな」
僕は、水晶玉の上に左手をそっと置いた。
【クリストハルト・ブレイズ・ファルケ】
ファルケ帝国 第3皇子 12歳 男
知力 95
武力 70
魅力 99
剣術 C
火魔法 S
水魔法 S
風魔法 S
土魔法 S
光魔法 A
話術 S
算術 S
芸術 B
「武力70の剣術Cか、ギリギリ及第点かな……って、なにこの魔法!」
ギルド長が驚嘆している。
「火、水、風、土の魔法が全部Sだと! しかも光魔法Aまであるのか!」
ギルド長が剣聖様の推薦状を、食い入るように見ている。
「皇子の魔法については、秘匿せよか……確かにこりゃ大騒ぎになるな。わかった、秘密は守ろう。そして合格だ」
他の三人については、15歳以上なのでステータスを見る必要はないそうだ。
「後は、この五人でパーティーを組むのかな?」
「はい」
「では皇子、冒険者登録料が一人銀貨1枚なので五人で銀貨5枚、パーティー登録料が銀貨1枚で合計銀貨6枚必要になるが問題ないか」
銀貨1枚は、前世でいうと1万円くらいだ。
全部で6万円の出費だが、予算もあるので問題ない。
「問題ありません。よろしくお願いします」
「では、パーティー名を決めてくれ」
僕が皆に確認を取ると、僕に任せるとのことだった。
僕は、ギルド長に迷わず宣言した。
「パーティー名は、『インフィニティ』でお願いします」
「了解、ちょっと待ってくれよ。今、魔道具で検索かけるから」
「検索?」
「ああ、パーティー名は重複できないからな」
「そうなのですか?」
「だって、同じパーティー名が存在したら、パーティー名と人名で個人を特定できないだろ?」
「なるほど」
魔道具で『インフィニティ』を検索してもらっているが、大丈夫だろうか……ドキドキするな。
「お、大丈夫だな。じゃあ『インフィニティ』で登録するぞ」
「お願いします」
良かった、無事パーティー名が決まった。
「それからパーティーランクだけど、特別にCランクパーティーからスタートできるようにしておくな」
「ギルド長、ありがとうございます。ちなみに、パーティーランクの種類って、どうなってますか」
「一番下からG、F、E、D、C、B、A、S、SSの9種類だな」
「Cは丁度真ん中ですね」
「そうなるな。本来はGからスタートなんだが、優秀なパーティーの場合は特別にCからスタートさせている」
「なるほど」
「後は、3か月に1回は必ず依頼を受けて成功させること。クリアできないとDランクに降格するからな」
「はい」
「Dランクになると、1か月に1回依頼を成功させないといけなくなるので、注意が必要だ」
ギルド長から注意事項を確認した後、銀貨6枚を支払い、最後に冒険者カードの作成である。
「では最初のカードは、聖女様どうぞ」
リゼが呼ばれて、魔道具の前に移動した。
ローテーブルの上に球状の魔道具が設置され、魔道具の上に冒険者カードが置いてある。
「では聖女様、冒険者カードに血を垂らすか、舐めて唾液を付けてください」
ギルド長に言われ、リゼは迷いなくカードをペロリと舐めた。
冒険者カードの完成である。
次に呼ばれたのは、カルラだ。
「痛いのはイヤっすね。自分もペロっと舐めます」
カードが低い位置にあるため、カルラは椅子に座りながら前かがみになる。
すると、ブラがチラリと見えた。
さらにカードを舐めようとすると、髪が邪魔になるようだ。
「髪が邪魔っすね」
カルラは、左手で髪を抑えながら冒険者カードをペロっと舐めた。
瞬間、僕に衝撃が走る。
これは、斜め45度くらいの角度から観戦するのが極上なのでは?
僕がその位置へ移動すると、すでにギルド長が先着していた。
男同士考えることは一緒らしい、僕とギルド長は無言で頷くと固く握手を交わす。
「次は、クラウディア」
ギルド長が宣言すると、クラウディア嬢が椅子に座る。
僕とギルド長が今か今かと待っていると、クラウディア嬢は迷いなく剣に指先を軽くあて、カードの上に血を一滴垂らした。
「これでよいか」
「あ、ああ、それで完成だ」
ギルド長が酷く落胆している。
迷いなくそっちを選択するなんて、クラウディア嬢、男前すぎるよ……。
慌ててリゼが、クラウディア嬢の指にヒールをかけていた。
でも、最後に大本命が残っている!
エルネスタ嬢が呼ばれて、椅子に座った。
金髪ロングウェーブに碧眼、白く透き通るような肌、奇麗な美少女代表、おまけにHカップ。
「やっぱり痛いのは嫌なのだわ」
この一言で、勝利が確定した。
エルネスタ嬢が前かがみになると、Hカップが大きく揺れる。
僕の目もHカップを追いかけるように大きく上下した。
そして無防備な胸元からは谷間がチラリと見える。
「髪が邪魔なのだわ」
エルネスタ嬢は、左手で髪を抑えながら冒険者カードをペロリと舐めた。
エルネスタ嬢、今日もありがとう。
ご馳走様でした……。
「か、完成だ……」
ギルド長が声を震わせて宣言する。
エルネスタ嬢の魅力によって、完全にノックアウトされたようだ。
僕たちは、真っ白に燃え尽きて椅子に座るギルド長に別れを告げると、帝都の検問所を目指すのだった。




