第28話 家族
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クラウディア嬢の説得に成功した僕とリゼは、師匠の屋敷で一泊して、翌日の早朝を迎えていた。
「師匠、おはようございます」
「おはようございます、殿下。寂しくなりますね」
そう言いながら師匠は、腰をトントンと叩いている。
ん? どうしたのかな? 腰痛だろうか……。
「殿下、おはようございます」
「おはようございます、侯爵夫人」
師匠の奥さんであるコルネリアさんがやってきた。
師匠と比べて、こちらは元気一杯なようで、お肌もツヤツヤとしている。
きっと昨夜は、良いことがあったに違いない。
僕は師匠の腰に、優しくヒールをかけてあげた。
「おお、これは助かります、殿下」
「いえいえ、僕も師匠の役に立てて嬉しいです」
そのとき、コルネリアさんの瞳がキラリと光った。
あっ、もしかしたら僕は、余計なことをしてしまったのかもしれない。
明日の師匠が、無事でありますように……。
それはそうと、師匠とコルネリアさんに、渡したいものがあったのを思い出した。
「これを師匠と夫人に渡しておきますね」
僕は、師匠とコルネリアさんのステータスが紙に書かれたものをプレゼントした。
「おお、これはありがたいですね」
「殿下、私にまでこのような貴重なものを、ありがとうございます」
師匠とコルネリアさんからお礼を言われた。
「それと娘をどうか、よろしくお願いいたします」
二人が揃って頭を下げている。
親としては、娘が心配だよね。
「お任せください。僕とクラウディア嬢で、お守りいたします。もしものときでも、妹の光魔法がありますので安心ですよ」
僕の一言で安心したのか、その後は出発まで親子三人で抱き合っていた。
途中リゼが、エルネスタ嬢に何か耳打ちをしていたが、忘れ物がないかの確認だったようだ。
収納ボックスに、いくらでも入るとエルネスタ嬢に伝えたら、部屋中の荷物を入れる羽目になった。
師匠の屋敷にエルネスタ嬢の物は、何も残っていない気がする……。
こうして師匠の屋敷を出発した僕とリゼとエルネスタ嬢の三人は、馬車で剣聖様の屋敷に向かった。
☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆
「剣聖様、おはようございます」
「おはようございます、殿下」
「殿下! おはようございます!」
僕の挨拶に、剣聖様とフォルカー隊長が反応する。
「殿下! 妹に勝ったそうじゃないですか!」
「ええ、大変でしたけどね」
「是非! 私とも決闘形式で、試合をお願いします!」
「え? 今じゃないよね?」
「お時間があるようでしたら、是非!」
今日もフォルカー隊長は、元気一杯だな。
最初、剣聖様にフォルカー隊長を護衛として推薦されたけど、クラウディア嬢にして正解かも。
悪い人じゃないけど、体育会系すぎて疲れる。
「申し訳ないのだけど、今日は時間がなくて……。今回の旅で、もっと強くなって帰ってきますので、そのときに相手をしてもらえると嬉しいです」
「はっ! そのときは是非!」
「ワシも殿下と対戦してみたいのじゃが」
「僕もですよ、剣聖様」
そんな話をしていると、クラウディア嬢が荷物を抱えてやってきた。
「殿下、お待たせして申し訳ありません」
クラウディア嬢がリュックを背負い、大きなボストンバッグを肩にかけている。
「クラウディア嬢、荷物少なくない?」
「アタシは剣だけあればいいので、こんなものです」
すると、リゼがクラウディア嬢に近づいて、何やら耳打ちをしている。
先ほどのエルネスタ嬢と同じで、忘れ物の確認だろうか。
「そうでありましたか、直ぐに取ってまいります」
しばらくすると、忘れ物を取りに行ったクラウディア嬢が戻り、いよいよ出発だ。
「殿下、娘をよろしくお願いいたします」
剣聖様とフォルカー隊長が頭を下げている。
師匠と同じで、剣聖様も娘さんが心配なようだ。
「大丈夫ですよ。クラウディア嬢は強いですし、僕や妹もおりますから」
「ああいや、娘の身は全く心配しておりません。ワシと息子以外で娘を倒せるとしたら、殿下ぐらいでしょうからな」
「では、何を心配されているのですか?」
「旅先で娘が何かやらかさないか、心配でなりません」
そっちか……。
確かに、戦闘狂モードに入ったクラウディア嬢は、心配だよね。
「殿下、娘の手綱を決して離さぬよう注意してください」
「善処します……」
この後、剣聖様にステータスが紙に書かれたものをプレゼントした。
一緒にフォルカー隊長の分も剣聖様に預けたが、僕の秘密について説明をした後に渡すそうだ。
こうして剣聖様の屋敷を出発した僕たち四人は、馬車でカルラの家に向かった。
☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆
カルラに貰った地図を師匠の御者に見せると、問題なくカルラの家に到着できた。
「「殿下、おはようございます」」
料理長とカルラが笑顔で挨拶してくれた。
僕たちが見つけやすいように、外で待ってくれていたのかもしれない。
「おはよう、料理長、カルラ」
「殿下、どうぞ娘をよろしくお願いいたします」
料理長がペコリと頭を下げている。
「親父! 自分は、この旅で大きく成長するつもりっす。帰ってきたら宮廷料理長の座は、自分がいただくっす」
カルラが宣戦布告すると、料理長は嬉しそうに微笑んでいた。
カルラも帝城にいたときと話し方が変わっているので、エルネスタ嬢のように猫をかぶっていたのだろう。
ちなみにカルラの荷物は、リュックと大きなボストンバッグで、クラウディア嬢と一緒だった。
やはり、エルネスタ嬢の荷物は、多すぎるのだろう。
すると、リゼがカルラに近づいて、何やら耳打ちをしている。
その後、慌ててカルラが忘れ物を取りに行って、すぐに戻ってきた。
カルラが加わり五人となったが、今日の馬車は六人乗りである。
師匠が気を利かせて、準備してくれていたのだ。
こうして宮廷料理長の家を出発した僕たち五人は、冒険者ギルド帝都本部へと向かうのだった。




