第26話 クラウディア・フォン・オルレアン
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師匠の屋敷で昼食をご馳走になった後、僕たちは剣聖様の屋敷へ馬車で向かっていた。
馬車の中には、僕の左にリゼが座り、真正面に師匠、師匠の隣にエルネスタ嬢が座っている。
「なんで、エルネスタ嬢が一緒に?」
「殿下、それは私とクラウディアが親友だからなのだわ」
クラウディアとは、これから説得する人。
剣聖様のお嬢さんのことだ。
馬車に乗る前に、エルネスタ嬢が教えてくれた。
「そうなの?」
「ええ、貴族学校でも私とクラウディアは、常に一緒に行動していたのだわ」
エルネスタ嬢が自信満々に宣言している。
親友か……使えるな。
カルラとエルネスタ嬢の説得は、マイナスからのスタートを余儀なくされて苦労した。
最後くらいは、楽をさせて欲しいものだ。
エルネスタ嬢がクラウディア嬢に一緒に行こうと誘えば、それで終わるのでは?
なんといっても二人は親友なのだから。
「エルネスタ嬢にお願いがあるのだけど、いいかな?」
「私にできることであれば、協力するのだわ」
「クラウディア嬢を、旅に同行するよう説得して欲しい」
「まかせてほしいのだわ」
さすが親友、頼もしいな。
でも、何か違和感があるのだけど、なんだろうか……。
あっ、エルネスタ嬢の口調が変わっているのか。
「えーと、エルネスタ嬢。先ほどまでとは、口調が変わっているようだけど?」
「殿下、エルネスタは本来この口調です。先ほどまでは、猫をかぶっていただけかと」
僕の質問に師匠が答えてくれた。
そして、エルネスタ嬢が僕をじっと見据えて微笑んだ。
うっわ、奇麗な人だな。
リゼが可愛い美少女代表だとすれば、エルネスタ嬢は奇麗な美少女代表といった感じだ。
おまけに迫力のHカップがついてくる。
最強じゃないか……。
「殿下、これから旅に同行するとなると、ずっと猫をかぶり続けるのは大変なのだわ」
「確かに、そうかもしれないね」
そんな話をしていると、剣聖様の屋敷に馬車が到着したようだ。
僕たちは馬車を降りると、応接室ではなく庭に通される。
どうやら剣聖様とクラウディア嬢は、庭で剣術の稽古をしているようだ。
「剣聖殿! 稽古中に申し訳ないが、クリストハルト殿下とリゼット殿下が到着された!」
師匠が大きな声で叫ぶと、激しくぶつかり合っていた剣戟がやむ。
そして剣聖様が僕とリゼの前にやってきた。
「クリストハルト殿下、リゼット殿下、ようこそ我が屋敷へ」
剣聖様が片膝をついて、丁重な挨拶をしてくれた。
「剣聖様、稽古中に申し訳ありません」
「いえいえ、お気になさらず。早速ですが、我が娘を紹介いたします。クラウディアよ、殿下に挨拶せよ」
「はっ!」
クラウディア嬢が僕とリゼの前で片膝をついている。
長く美しい赤髪をポニーテールにまとめ、紫眼には強い意志が宿っている。
背丈はエルネスタ嬢とカルラよりやや高め、無駄な肉のない均整の取れた体つきだ。
顔立ちも整っており、クールビューティーと呼ぶのがふさわしいだろう。
胸は、カルラより一回り、いや二回り小さいので、おそらくEカップだ。
それでも平均よりは大きな胸だと思う。
エルネスタ嬢とカルラが規格外なのだ。
「クリストハルト殿下、リゼット殿下、お初にお目にかかります。オルレアン伯爵家長女クラウディア・フォン・オルレアンと申します」
「クラウディア嬢、丁寧な挨拶をありがとう。僕は、ファルケ帝国第三皇子クリストハルト・ブレイズ・ファルケです。こちらは妹のリゼット」
「ファルケ帝国第一皇女リゼット・ブレイズ・ファルケです」
お互いの挨拶が終わると、僕たちは庭にある東屋へ移動した。
そこには円卓があり、僕の左にリゼ、右にエルネスタ嬢が座る。
僕の正面には、剣聖様とクラウディア嬢、そして最後に師匠が剣聖様の近くに着席した。
「これよりクリストハルト殿下から、重要なお話があります。では、殿下どうぞ」
師匠が進行役を務めてくれて、説得の開始である。
まずは、情報収集だな。
えーと、クラウディア嬢のステータスは……。
【クラウディア・フォン・オルレアン】
ファルケ帝国 オルレアン伯爵家長女 15歳 女
知力 25/60
武力 97/99
魅力 95/95
剣術 S/S
槍術 B/A
弓術 G/B
馬術 B/A
風魔法 G/S
話術 D/D
算術 F/E
芸術 E/D
料理 F/D
さすが剣聖様の娘、武力97に剣術S、他の武術系の素質も高い。
おまけに風魔法の適性もある、しかも素質S!
これは、是非とも欲しい人材だ。
それに今日は、頼もしい援軍も控えている。
「クラウディア嬢、僕と妹は明日魔法修行の旅に出るんだ。これは国家プロジェクトとして予算もついていてね、あなたの親友であるエルネスタ嬢も同行する。ではエルネスタ嬢、後はよろしく」
「はいっ! お任せください、殿下」
エルネスタ嬢が自信満々に返事をした。
「クラウディア、殿下たちの魔法修行に私も同行するの。親友のあなたにも、一緒に行ってほしいのだわ!」
「申し訳ないが、お断りする」
あれれ? 取り付く島もない……。
エルネスタ嬢が、ひどく落ち込んでいる。
やはり、帝都を離れたくない気持ちが強いのだな。
仕方ない、自分で説得するしかないか。
「クラウディア嬢、行きたくない理由を、聞かせてもらえるだろうか」
「アタシには、剣聖である父を超えるという目標があります。毎日、父と兄と稽古ができるこの帝都を、離れる気はありません」
剣聖様に聞いていた通りか。
つまり、自分より強い相手と、毎日稽古がしたいと……。
ふむ、僕がクラウディア嬢より強いと、証明できればいいのでは?
ただ真正面から剣術勝負では、100回勝負しても100回負けるだろうな。
今の僕は、武力70の剣術Cで、クラウディア嬢は武力97の剣術Sだ。
何か弱点はないだろうか……あっ、知力が25しかない!
素質は60あるのにどうして……貴族学校に三年も通っていたのに。
おそらく極度の勉強ぎらいなのかもしれないな。
「クラウディア嬢、あなたは自分より強い相手と、毎日稽古がしたいのでしょう?」
「そのとおりです」
「なら、僕がクラウディア嬢に勝利できたなら、僕たちの魔法修行に同行してくれるだろうか?」
「殿下がアタシに勝てると?」
「これでも剣聖様に鍛えてもらって、今の僕は武力70の剣術Cだ」
「ふっ、アタシは武力97の剣術Sですよ。やめておいた方が身のためです」
クラウディア嬢が不敵に笑う。
「確かに剣術の実力差は歴然としているね。それなら決闘形式でどうだろうか」
「決闘形式ですか?」
「そう、なんでもありの決闘形式。本来戦場では、何でもありが当たり前だよね。相手に剣術だけでお願いしますとは言えないでしょ?」
「ふっ、おもしろい。その勝負受けましょう!」
僕とクラウディア嬢は、庭の中央付近に移動した。
剣聖様が審判を務めるべく、僕に近づいてくる。
それ以外の人は、邪魔にならないよう庭の隅で、立って観戦するようだ。
「クラウディア嬢、僕は剣術よりも魔法が得意なんだ」
「殿下は魔術師でしたか。でも、貴族学校でアタシは何て呼ばれていたか、ご存じでしょうか?」
「いや、何て呼ばれていたのかな?」
「魔術師殺しです」
クラウディア嬢が、どうだと言わんばかりに僕を見ている。
魔術師殺しとか、物騒な単語が混じってるけど、大丈夫だよね?
即死は避けるように、リゼにいつも言われているし……。
「剣聖様、木剣を二つ用意していただけますか」
「はい、準備できております。もとよりこの勝負、真剣の使用は禁止ですので」
ああ、良かった! 少し心配だったが、これで命の心配は不要だな。
後は作戦だが、魔術師殺しから察するに、クラウディア嬢はスピード特化型と予想する。
ゆっくり呪文を唱えようなら、唱え終わるうちに切って捨てられるのだろう。
まあ、これは問題ないかな。
僕の魔法は、無詠唱だからね。
いかに素早い彼女の動きを、捉えられるかが勝負だろうな。
「殿下、一瞬で仕留めてあげますよ。うふふふっ」
クラウディア嬢が、獲物を見るような目で僕を見ている。
先ほどのクールビューティーなイメージは、かけらもない。
もしかして、クラウディア嬢って戦闘狂なのでは?
今まで見せた彼女の言動や表情の変化が、戦闘狂だと思えばしっくりくる。
「ええと、クラウディア嬢。お手柔らかに、お願いしたいのだけど……」
「ごめんなさい、殿下。アタシいつも全力だから、手加減は苦手なんです。うふふふっ」
あああ、これダメなやつだ!
綿密な作戦を立てないと……。
僕は頭をフル回転させて、クラウディア嬢を打倒すべく奇策を必死に考えるのだった。




