第24話 慣れ
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父上と別れた後、僕とリゼは旧館の門前に停車している師匠の馬車に乗車した。
手綱を引く御者が、二頭の馬を誘導し城門へと進んで行く。
馬車は四人乗りで、僕とリゼは後部座席に案内された。
僕の左隣にリゼ、正面に師匠が座っている。
そして乗り降りするドアの外側には、リートベルク侯爵家の紋章が描かれていた。
しばらくして城門に到着すると、門番が馬車の中を確認しにくる。
これって、見つかるとマズイのでは!?
「師匠! 隠れた方が良いですか?」
「そのままで大丈夫ですよ」
師匠は爽やかに微笑むと、馬車のドアへ顔を近づける。
すると門番は、敬礼をして馬車を見送ったのだった。
ドアの紋章からも、魔術師団長が乗っていることが予想され、馬車の中から本人が顔を見せているのだ。
この状況で、中を確認させろと言える門番は、ファルケ帝国には存在しないだろう。
「ふう……、無事に城から出られましたね」
「そうですね。我が屋敷は、馬車で10分くらいなので、もう少々お待ちください」
師匠が微笑んで僕とリゼを見ている。
僕は、馬車の窓から帝城を眺めた。
城の周りは水堀になっていて、城門にたどり着くには、長い橋を渡る必要がある。
おそらく緊急時には、形を変えて渡れなくなるのだろう。
城壁が高くそびえ、僕とリゼが住んでいた迎賓館の旧館は見えなかった。
こんなにも堅牢な城に、僕とリゼは暮らしていたんだな。
転生前に第三皇子を選択して、本当に良かった。
おかげで5年間、リゼと一緒に能力上げに集中できたのだから。
そんなことを考えていると、師匠の屋敷に到着したようだ。
「殿下、足元に気をつけてください」
先に馬車から降りていた師匠が、僕に手を差し出してくれている。
なんて絵になる人だろう、僕も大人になったら師匠みたいな紳士になりたいものだ。
「師匠、ありがとうございます」
「どういたしまして」
僕は師匠に手を取られて、馬車から降りた。
僕もやってみたいな……。
馬車の中には、リゼが残されている。
たまたまドア側に僕がいたので先に降りてしまった。
もしかしたらレディーファーストで、リゼが先に降りるべきだったのだろうか?
これからは、そういった紳士的振る舞いについても、学ばないといけないな。
「リゼ、足元に気をつけてね」
僕は師匠の真似をして、リゼに手を差し出した。
これで僕も紳士に一歩近づける。
「ありがとうございます、お兄様!」
リゼが勢いよく僕の胸に飛び込んでくる。
「あれ?」
予想外の行動だったため、僕はリゼを抱きとめると、後ろに倒れそうになる。
すると師匠が僕の背中を、そっと支えてくれた。
「大丈夫ですか、殿下」
ああ、これはヤバイな。もし僕が女性だったら絶対に惚れてしまうやつだ。
紳士の道は、まだまだ遠いな……。
「ありがとうございます、師匠」
「いえいえ」
そしてこのイケメンスマイルである。
「リゼ、急に飛び込んできたら危ないよ」
「ごめんなさい、お兄様……」
リゼも反省しているようだ。
僕と一緒に5年間旧館で暮らしているうちに、大分お転婆になってしまった。
楽しくはあったけど、リゼも淑女としての再教育が必要なのかもしれない。
そんなことを考えていると、屋敷のドアが開いて執事やメイドが外に出てきた。
「「「お帰りなさいませ」」」
統率の取れた挨拶が庭中に響く。
さすが侯爵家の使用人たち、動きに無駄がない。
そして、僕はリゼと手を繋いで屋敷の中に入った。
「ようこそ、お越しくださいました。クリストハルト殿下、リゼット殿下」
気品溢れる一人の女性が、やや離れた場所で、奇麗な仕草で挨拶をしてくれた。
「殿下、こちらは妻のコルネリアでございます」
師匠が奥さんを紹介してくれている。
さすが師匠の奥さんだ。遠目で見ても、美しい人だと理解できる。
金髪のロングウェーブに碧眼、年を重ねてもスタイルの良さは健在だ。
そして、近づいてから改めて姿を見て、僕は衝撃を受ける。
そこには、カルラを超える巨乳美女がいた。
カルラのGカップを基準にすれば、ひとまわり大きいだろうか。
転生してから見たものに限定すれば、最高記録のHカップだ。
師匠が、カルラのGカップに反応しなかった理由が、今わかった。
慣れというのは、怖いな。
「初めまして、コルネリア侯爵夫人。クリストハルト・ブレイズ・ファルケです。突然の訪問、申し訳なく思います」
「いえいえ、歓迎いたしますわ、殿下」
「それと、こちらは妹のリゼットです」
「初めまして、リゼット・ブレイズ・ファルケです」
リゼが微笑みながら挨拶をした。
「まあまあ、なんて可愛らしい! アレクシスの妻、コルネリア・フォン・リートベルクにございます」
師匠の奥さんは、リゼを一目見て気に入ったようだ。
「殿下、朝食を食べ損ねて、お腹も空いているでしょう? 軽食を用意させますので、こちらへどうぞ」
師匠が、気をきかせてティールームへ案内してくれた。
お腹を空かせたリゼが、嬉しそうにしている。
ティールームに案内されて席に着こうとしたのだが、トイレに行きたくなってきた。
僕はリゼを師匠に託して、廊下に出るとトイレを目指す。
そして、聞いていた通りの場所にトイレを見つけ用を足すと、手を洗い急いで戻ろうとした。
しかし廊下の角を曲がったところで、何か弾力のあるものに跳ね返される。
「あっ、コルネリア侯爵夫人。すいません、急いで戻ろうとしていたら、ぶつかってしまって」
そこには、Hカップ美少女が立っていた。
ん? 急に20歳くらい若返ったような……。
でも、背丈も同じだし、金髪のロングウェーブに碧眼、胸のサイズもHカップ……やっぱりコルネリアさんだ。
どうやら僕は偶然にも、コルネリアさんのHカップを、堪能してしまったらしい。
あの弾力、初めての経験だった。
「ええと、コルネリアは母です。私は、娘のエルネスタと申します。もしかして、クリストハルト殿下でしょうか?」
「へ? 娘さん?」
「はい、父から緊急の要件だと伺いました。ティールームまで一緒に参りましょう」
出会頭とはいえ、Hカップの弾力を堪能してしまった。
それなのにエルネスタ嬢は、気に留めることもなく優しい。
これって、ラッキースケベというのでは!?
「あ、自己紹介がまだでしたね。ファルケ帝国第三皇子クリストハルト・ブレイズ・ファルケです」
「ご丁寧に、ありがとうございます、殿下。私は、リートベルク侯爵家長女エルネスタ・フォン・リートベルクと申します」
エルネスタ嬢が完璧なカーテシーを披露してくれた。
さすが師匠の娘さん、非の打ち所がない。
これは即、採用だ!
カルラのときみたいな失敗は、もうしない。
でも、すごい弾力だったな……。
あれが美少女のHカップか……。
「ええと、クリストハルト殿下?」
「へ? ああ、ゴメンゴメン。少し考え事をしていてね」
「それと殿下、先ほどは、すいませんでした。よく前を見ていなかったもので」
「いえいえ僕の方こそ、ご馳走様でした」
あっ! すいませんでしたって言おうとして、ご馳走様って言ってしまった……。
「ご馳走様?」
「あ、いや、その……」
先ほどまで美少女スマイルだったエルネスタ嬢が、左腕を横にして胸元を隠すと、赤面しながら僕を睨んでいる。
あああ、またやってしまった……今回も第一印象最悪なやつだこれ。




